番外編「ラスボスを、倒した、時——勇者は、何を、していたか」
決戦から——しばらく、経った——ある日。
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建て直したばかりの——八百屋の、店先で。
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ふと——ルカが——尋ねた。
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「——そういえば——勇者様。銅像に——なった、話は——もう——聞いたんですけど」
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「——その——"前"、です」
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「——星喰いを、倒した——決戦の、時」
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「——勇者様は……何を、してたんですか?」
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その、問いに。
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アルフレートは——ぴたり、と——動きを、止めた。
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「……」
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「勇者様?」
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「……その、話は……せんでも、ええだろう」
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アルフレートが——珍しく——目を、逸らした。
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「え? なんか……あったんですか?」
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ルカの、目が——好奇心で——輝いた。
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その時——通りがかった、藤原が——にやり、と——笑った。
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「あー……その、話なあ」
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「藤原さん! 知ってるんですか!?」
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「知っとるで。うちら……皆……知っとる」
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藤原は——楽しげに——語り始めた。
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——時は、決戦、当日。
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星喰いの——最後の、攻撃が——迫る中。
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繋がりの、陣の——配置に、ついた、皆。
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だが——アルフレートには——特に——決まった、役割が——なかった。
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なぜなら——繋がりの、陣は。
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誠が——皆を、繋ぎ。
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皆瀬が——照準を、感じ取り。
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一色が——技術を、統括し。
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桜庭が——計算する。
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そして——各種族が——レールガンを、支える。
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……アルフレートの——"個人の、戦闘力"、が。
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出る、幕は——なかったのだ。
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「アルフレート様。あなたには……一番、大事な、役目が、あります」
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決戦の、直前——誠は、そう、言った。
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「なんだ! 何でも……言ってくれ!」
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「僕を……守ってください」
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「お前を?」
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「はい。僕は……繋がりの、陣の……中心です。もし……僕が、倒れたら……全部……終わりです」
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誠は——真剣に、続けた。
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「だから……アルフレート様は……僕の、そばで……何が、あっても……僕を……守り抜いて、ください」
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「……なるほど! つまり……"最重要、拠点、防衛、クエスト"、だな!」
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アルフレートは——燃えた。
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「任せろ! この、俺が……お前を……何が、あっても……守り抜く!」
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そして——決戦が——始まった。
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繋がりの、陣が——火を、噴き。
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星喰いの、光と——せめぎ合う。
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誠は——目を、閉じ——渾身の、力で——皆を、繋ぐ。
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その、傍らで。
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アルフレートは——剣を、構え——誠の、周囲を——警戒していた。
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「来るなら……来い……! 一匹たりとも……田中には……近づけさせん……!」
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だが——
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決戦は——空の、上で——繰り広げられていた。
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繋がりの、陣の、光と——星喰いの、光の——激突。
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地上の——誠の、周りには。
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敵は——一匹も——来なかった。
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「…………」
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アルフレートは——剣を、構えたまま。
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じっと——待っていた。
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来ない。
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敵が——来ない。
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「…………まだ、か」
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上空では——世界の、命運を、賭けた——壮絶な、戦い。
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地上では——剣を、構えたまま——ひたすら——待つ、勇者。
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そして——ついに。
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——ドオオオオオオン!!!
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繋がりの、陣が——星喰いの、本体を——貫いた。
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「やった……! 勝った……!」
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歓喜が——世界中に——広がる。
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その、間——ずっと。
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アルフレートは——剣を、構えたまま。
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誠の、そばで——直立不動で——立っていた。
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「……終わった……のか?」
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アルフレートは——ぽつり、と——呟いた。
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「結局……俺の、ところには……一匹も……来なかった、な……」
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「——という、わけや」
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藤原が——語り、終えた。
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「世界最強の、勇者は……ラスボスを、倒した、時……」
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「ずーっと……田中くんの、隣で……剣、構えて……立っとっただけ、なんや」
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「ぶはっ!」
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ルカが——噴き出した。
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「勇者様! 何も……してないじゃ、ないですか!」
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「何も、してない、わけでは、ない!」
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アルフレートは——顔を、赤らめて——反論した。
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「俺は……田中を……守っていたのだ! 立派な……役目だ!」
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「でも……敵、一匹も……来なかったんですよね?」
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「……結果的には、な」
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その時——誠が——店の、奥から——出てきた。
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「何の、話、してるんですか?」
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「あ、師匠! 聞いてください! 決戦の時……勇者様、何も……」
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「こら、ルカ」
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誠は——ルカを——優しく——たしなめた。
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そして——アルフレートを——見て——微笑んだ。
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「アルフレート様は……ちゃんと……大事な、役目を……果たしてくれましたよ」
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「田中……」
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「あのね、ルカ」
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誠は——静かに、言った。
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「僕……あの、時……目を、閉じて……全部の、意識を……繋がりに……集中してた」
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「無防備、だったんだ。もし……敵が……一匹でも……来てたら……僕は……気づかずに……やられてた」
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「でも……僕は……安心して……繋がりに……集中、できた」
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誠は——アルフレートを——見た。
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「なぜなら……アルフレート様が……そばに、いて……守って、くれてたから」
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「敵が……来なかった、のは……」
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「アルフレート様の……"守り"、が……あまりにも……固かったから……敵も……近づけなかったのかも……しれませんよ」
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アルフレートは——ぱあっ、と——顔を、輝かせた。
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「そう……! そう、なのだ! 俺の……"威圧感"、で……敵は……近づけなかったのだ!」
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「ええ〜? ほんとかなあ」
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ルカは——半信半疑、だった。
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「でもな、ルカ」
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誠は——優しく、微笑んだ。
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「"何も、起こらないように、守る"、って……実は……一番、難しくて……一番、大事な、ことなんだ」
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「派手に……戦って……敵を、倒すのも……すごい。でも……」
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「誰かが……安心して……力を、出せるように……黙って……そばで……守り続ける」
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「それって……すごく……"格好いい"、ことだと……僕は、思うよ」
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ルカは——アルフレートを——見上げた。
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「……そっか。勇者様……格好、良かったんですね」
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「うむ! 分かれば、良い!」
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アルフレートは——満足げに——胸を、張った。
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だが——ふと——アルフレートは。
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少し——照れくさそうに——付け加えた。
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「……まあ、正直……」
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「敵が……一匹も、来なくて……ちょっとだけ……"暇"、だったのは……事実だがな」
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「勇者様ぁ!」
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ルカが——ツッコんだ。
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一同は——顔を、見合わせて——笑った。
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世界を——救った、決戦。
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その、栄光の、影で。
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世界最強の、勇者は——ただ、ひたすら。
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戦えない、モブの、隣で——彼を——守り続けていた。
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一匹の、敵も——来ないまま。
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けれど——最後まで——その、場を——離れずに。
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それは——きっと。
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どんな——派手な、活躍よりも。
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"繋がり"、を——守るために——大切な——役目、だったのだ。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「ルカが、"決戦の時、勇者様は、何を、してたの?"、って。実は……アルフレート様、ずーっと、僕の隣で、剣、構えて、立ってただけ。敵、一匹も、来なくて。ルカ、大笑い。でも……僕は、言った。あの時、僕は、目を、閉じて、繋がりに、集中してて、無防備だった。敵が、一匹でも、来てたら、やられてた。でも、安心して、集中できたのは……アルフレート様が、守ってくれてたから。"何も、起こらないように、守る"、って、一番、難しくて、大事なこと。誰かが、安心して、力を、出せるように、黙って、そばで、守り続ける。それって、すごく、格好いい。ルカも、納得してた。でも……アルフレート様、最後に、"敵が、来なくて、ちょっと、暇だった"、って、言って……総ツッコミ。皆で、笑った。じいちゃん……派手じゃ、なくても……誰かを、守る、役目って、尊いよね」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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そして——今の、誠は——知っている。
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世界を、救った、あの、瞬間——一番、目立たない、場所で。
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黙って——自分を、守り続けてくれた、勇者が、いたことを。
そして——その、"目立たない、優しさ"、こそが——モブの、自分には——誰よりも……よく、分かる、ことも。




