第247話「英雄と、モブと」
八百屋を——再開して。
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季節が——一つ、巡った。
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戦いの、傷跡も——少しずつ——癒え。
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世界は——穏やかな——日常を——取り戻していた。
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ある——よく晴れた、日の、夕暮れ。
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誠は——店の、片付けを——終えて。
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一人——店先の、椅子に——腰かけていた。
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「師匠! 今日の、売上、まとめました!」
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ルカが——帳簿を——持ってきた。
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「ありがとう、ルカ。もう、上がっていいよ」
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「はい! あ……師匠。今日……マーサ婆さんが……"勇者様に、よろしく"、って」
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「アルフレート様に? はは。すっかり……町の、人気者だな」
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そういえば——アルフレートは——今日も。
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町の——お年寄りの、畑仕事を——手伝いに、行っていた。
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「勇者様……最初は……変な、人だと……思ったけど」
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ルカは——笑った。
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「今は……すごく……優しい、人だって……皆、言ってます」
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「そうだな。アルフレート様は……本当に……変わったよ」
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誠は——微笑んだ。
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ルカが——帰った、後。
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誠は——一人——夕焼けの、空を——見上げた。
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一つの、月が——うっすらと——昇り始めていた。
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「じいちゃん……」
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誠は——静かに、呟いた。
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「僕……時々、思うんだ。あの、戦いは……本当に……あったんだろうかって」
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星喰い。焼かれた、世界。繋がりの、陣。
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四百年の、真実。神様と、よそ者の、物語。
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今の——この、穏やかな、日常からは。
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まるで——夢の、ように——遠く——感じられた。
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「でも……確かに……あったんだよな」
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誠は——ノートを——開いた。
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祖父から——受け継いだ——そして——戦いの、日々を——書き記した——ノート。
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そこには——確かに。
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たくさんの——出会いと、別れと——繋がりが——刻まれていた。
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「なあ、じいちゃん」
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誠は——空に、向かって——語りかけた。
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「じいちゃんは……いつも……言ってたよね。"地味な、ことを……丁寧に……飽きずに……続けろ"、って」
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「あの、時は……なんで、そんなこと……言うんだろうって……思ってた」
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「でも……今なら……分かる」
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誠は——静かに——微笑んだ。
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「地味な、ことを……丁寧に、続ける。困ってる、人が、いたら……手を、差し伸べる」
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「そういう……"当たり前"、のことが……」
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「いつのまにか……人を、繋いで……世界まで……繋いでた」
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「英雄は……世界を、救う」
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誠は——ノートを——閉じた。
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「でも……モブは……人の、暮らしを、救う」
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「そして……時々……その、モブが……一番、たくさんの……人を……幸せに、する」
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その時——店先に——影が——差した。
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「田中。何を……一人で……黄昏れているのだ」
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「アルフレート様。おかえりなさい。畑仕事、どうでした?」
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「うむ。マーサ殿の、畑の、収穫を……手伝ってきた。"ありがとう"、と……たくさん……言われたぞ」
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アルフレートは——嬉しそうに、言った。
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その、手には——お礼に、もらった、という——野菜が——抱えられていた。
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「良かったですね」
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「ああ。……なあ、田中」
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アルフレートは——ふと——空を——見上げた。
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「俺は……"勇者"、として……生まれた。世界を、救うのが……役目、だと……思っていた」
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「だが……今は……こうして……お前の、店を、手伝って……町の、人と……繋がって……」
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「そんな……何気ない、日々が……たまらなく……愛おしい」
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アルフレートは——晴れやかに——笑った。
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「お前が……教えて、くれたのだ、田中。"繋がり"、の……本当の……意味を」
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「いえ……。僕こそ……アルフレート様に……たくさん……助けられました」
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誠は——微笑んだ。
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夕焼けが——二人を——優しく——照らす。
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「さて……。そろそろ……エリナが……夕飯を……作って、待ってますよ」
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「おお! 今日の……献立は、なんだ!」
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「アルフレート様が……もらってきた、野菜で……何か……作ってもらいましょう」
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「それは……良い! 楽しみだ!」
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世界最強の、勇者と——戦えない、八百屋の、孫。
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英雄と——モブ。
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二人は——並んで——家路に、ついた。
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その、背中を——一つの、月が——優しく——見守っていた。
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星喰いを——倒した、英雄たちの——物語は——終わった。
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だが——モブの……八百屋の、孫の——日常は。
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これからも——ずっと——続いていく。
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地味な、ことを——丁寧に。
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飽きずに——続けながら。
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一つ、また一つと——人を——繋ぎながら。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「八百屋を、再開して……季節が、一つ、巡った。世界は、穏やかな、日常を、取り戻した。あの、戦いは……夢みたいに、遠く、感じる。でも……確かに、あったんだ。じいちゃんの、教え……"地味なことを、丁寧に、飽きずに、続けろ"。あの時は、分からなかった。でも、今は、分かる。地味なことを、続ける。困ってる人に、手を、差し伸べる。そういう、当たり前のことが……いつのまにか、人を、繋いで、世界まで、繋いでた。英雄は、世界を、救う。でも、モブは、人の、暮らしを、救う。そして、時々……その、モブが、一番、たくさんの、人を、幸せに、する。アルフレート様が、"何気ない、日々が、愛おしい。お前が、繋がりの、意味を、教えてくれた"、って。夕焼けの中、二人で、家路に、ついた。英雄たちの、物語は、終わった。でも……八百屋の、孫の、日常は……これからも、ずっと、続いていく。じいちゃん……僕、幸せだよ。ありがとう」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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そして——今の、誠は——知っている。
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この、当たり前の、日常こそが——世界で、一番……尊く、温かい……"宝物"、で、あることを。
そして——これからも……小さな、繋がりを……一つ、また一つと……紡いでいくことが——彼の……本当の……"力"、で、あることを。
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——最弱モブ商人の異世界大河ドラマ




