第246話「八百屋、再開」
数日後——誠は。
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荒れた——店を——建て直し。
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ついに——八百屋を——再開した。
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「田中青果店」
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古びた——けれど——誠にとっては——世界で、一番——大切な、店。
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その、看板を——再び——掲げた。
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「よし……! 今日から……また……営業、開始だ!」
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誠は——気合いを、入れた。
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店先には——ルカが——一生懸命、育てた、野菜と。
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誠が——戦いの、合間にも——手入れを、続けていた——薬草や。
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そして——エリナが——漬けた——漬物が——並んだ。
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「いらっしゃいませー!」
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ルカの——元気な、声が——響く。
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そして——店先には。
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もう一人——見慣れない——大男が、いた。
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「いらっしゃい……ませ」
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アルフレート、だった。
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世界最強の、勇者が——エプロンを、着けて。
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ぎこちなく——接客を、していた。
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「アルフレート様……。もっと……笑顔で、ですよ」
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誠が——アドバイスすると。
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アルフレートは——真剣な、顔で——ぎこちない、笑顔を——作った。
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「い、いらっしゃいませ……! 本日の……"オススメ、クエスト"、は……この、トマトです……!」
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「クエストじゃ、ないです。"オススメ"、でいいです」
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「む……。難しいな、接客とは……」
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その、光景に——町の、人々は——大笑い、した。
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「はは! 世界を、救った、勇者様が……八百屋の、店番かい!」
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「面白い、店に、なったなあ!」
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だが——アルフレートは——意外にも。
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少しずつ——接客に——慣れていった。
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「そこの、ご婦人! この、キュウリは……"レベルの、高い"……いや……"新鮮な"、キュウリ、です!」
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「あら、勇者様。じゃあ……それ、もらおうかしら」
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「毎度……ありがとう、ございます!」
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アルフレートは——嬉しそうに——野菜を、包んだ。
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「アルフレート様。楽しそうですね」
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誠が——声を、かけると。
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アルフレートは——照れくさそうに——笑った。
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「うむ……。不思議な、ものだな」
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「星喰いを……倒した、時よりも……」
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「こうして……人に……野菜を、売って……"ありがとう"、と……言われる、方が……」
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「なんだか……心が……温かく、なる」
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誠は——微笑んだ。
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「それが……"人の、暮らし"、を……支える、ってことです」
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「英雄は……世界を、救う。でも……モブは……人の、暮らしを、救う」
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「僕の……じいちゃんが……教えて、くれたことです」
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「人の……暮らしを……救う……」
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アルフレートは——静かに——その、言葉を——噛みしめた。
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「田中。俺は……ずっと……"勇者"、として……世界を、救うことばかり……考えていた」
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「だが……今……分かった、気が、する」
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アルフレートは——晴れやかに、言った。
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「一人の……"ありがとう"、を……積み重ねる、ことも……世界を、救うことと……同じくらい……尊いのだな」
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「はい」
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誠は——大きく、頷いた。
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賑やかな——八百屋の、店先。
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野菜を、売る、誠。
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元気に、接客する、ルカ。
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ぎこちなく、頑張る、アルフレート。
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漬物を、並べる、エリナ。
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そして——それを——買いに来る——町の、人々。
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そこには——誠が——ずっと——守りたかった。
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温かい——"日常"、が——あった。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「八百屋を、再開した。"田中青果店"。店先に、ルカが、育てた、野菜、僕の、薬草、エリナの、漬物が、並んだ。そして……アルフレート様が、エプロン、着けて……接客! "本日の、オススメ、クエストは"、って……クエストじゃ、ないです、って。町の、人、大笑い。でも……アルフレート様、少しずつ、慣れてきた。"毎度、ありがとう、ございます!"、って。"星喰いを、倒した、時よりも……人に、野菜を、売って、ありがとう、って、言われる、方が、心が、温かくなる"、って。僕、言った。"英雄は、世界を、救う。でも、モブは、人の、暮らしを、救う。じいちゃんが、教えてくれたこと"、って。アルフレート様、"一人の、ありがとうを、積み重ねることも、世界を、救うことと、同じくらい、尊いのだな"、って。賑やかな、店先。僕が、ずっと、守りたかった、日常が、ここに、あった。じいちゃん……これが……僕の、幸せだよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この、小さな、八百屋から、始まる……ささやかな、"繋がり"、が——これからも……たくさんの、人を……幸せに、していくことを。
そして——世界を、救った、力も……元は……この、店先の……"ありがとう"、から……始まっていたことも——今は……静かに……微笑みながら……感じていた。




