第244話「見える、世界」
アルフレートが——八百屋の、手伝いに——加わることが——決まった、頃。
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皆瀬も——誠のもとを——訪ねてきた。
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「田中くん。私……そろそろ……仲間の、ところへ……戻ろうと、思うの」
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皆瀬——霧霊スライム族の、集合意識。
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かつて——目が、見えず——音で、世界を、認識していた——彼女。
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誠が——身体を、与えたことで。
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仲間たちと——繋がり——この、戦いを——共に、戦った。
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「皆瀬さん……。寂しく、なりますね」
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「ふふ。でも……そんなに……遠くじゃ、ないよ」
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皆瀬は——優しく——揺れた。
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「スライムは……世界中に……いるもの。だから……いつでも……繋がれる」
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「そうですね」
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誠は——微笑んだ。
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「ねえ、田中くん」
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皆瀬が——ふと——言った。
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「私……あなたに……身体を、もらって……世界を……"見る"、ことが……できるように、なった」
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「うん」
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「最初は……ただ……形が、見えるだけ、だった。でも……今は……違うの」
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皆瀬は——静かに、続けた。
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「人の、笑顔。涙。優しさ。想い。そういう……"目に、見えない、もの"、まで……見える、ように、なった」
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「それは……あなたと……出会えた、から。皆と……繋がれた、から」
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皆瀬の、声は——温かかった。
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「本当に……ありがとう、田中くん」
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誠は——ふと——アルフレートのことを——思い出した。
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「皆瀬さん。不思議、ですね」
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「何が?」
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「皆瀬さんは……目が、見えなくても……大事なものを……ちゃんと……見てた」
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「でも……アルフレート様は……"RPGの、世界"、が……見えすぎて……大事なものを……見失ってた」
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皆瀬は——ふふ、と——笑った。
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「そうね。"見える"、ことと……"分かる"、ことは……違うのかもね」
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「見える、ことと……分かる、こと……」
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誠は——その、言葉を——噛みしめた。
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「アルフレート様は……たくさんの、ものが……見えてた。ステータスも……ドロップも……」
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「でも……一番、大事な……"人の、想い"、は……最初……見えて、なかった」
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「うん。でも……今は……」
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皆瀬は——優しく、言った。
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「アルフレートさんも……ちゃんと……"分かる"、ように、なったよ。あなたたちと……繋がって」
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誠は——静かに——頷いた。
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「見えなくても……分かる、人が、いる。皆瀬さん、みたいに」
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「見えても……分からない、人が、いる。最初の……アルフレート様、みたいに」
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「大事なのは……"見る"、ことじゃ、なくて……"心で、感じる"、こと……なのかも、しれませんね」
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「うん。そう、思う」
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皆瀬は——優しく——揺れた。
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「田中くん。私……行くね」
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「はい。皆瀬さん……。本当に……ありがとう」
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「困った、ことが……あったら……いつでも、呼んで。スライムの、繋がりで……すぐ、駆けつけるから」
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「はい!」
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皆瀬は——ゆっくりと——大地に、溶け込み。
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世界中の——スライムの、繋がりの、中へと——帰っていった。
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だが——その、気配は。
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消えた、わけでは——なかった。
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いつでも——繋がれる。
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そんな——温かい——余韻を——残して。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「皆瀬さんも……仲間の、ところへ、帰る、って。でも、"スライムは、世界中に、いるから、いつでも、繋がれる"、って。皆瀬さんが、"あなたに、身体を、もらって……最初は、形が、見えるだけ、だった。でも、今は、人の、笑顔、涙、優しさ、想い……目に、見えないものまで、見えるように、なった。あなたと、出会えたから、皆と、繋がれたから"、って。僕、思った。皆瀬さんは、目が、見えなくても、大事なものを、見てた。アルフレート様は、RPGの世界が、見えすぎて、見失ってた。皆瀬さんが、"見える、ことと、分かる、ことは、違う"、って。見えなくても、分かる人が、いる。見えても、分からない人が、いる。大事なのは、見る、ことじゃ、なくて、心で、感じる、こと。皆瀬さんは、大地に、溶けて、帰っていった。でも、気配は、消えてない。いつでも、繋がれる。じいちゃん……繋がりって……本当に……不思議で、温かい、ものだね」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。皆瀬が、遺した、この、言葉——"見えなくても、分かる。心で、感じる"、こそが——彼が……これから、生きていく、日常の……大切な……指針に、なることを。
そして——目に、見えない、"繋がり"、こそが……何より……確かな、ものであることも——静かに……胸に……刻んでいた。




