第243話「勇者の、これから」
仲間たちが——去り。
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前線の、拠点にも——静けさが——戻ってきた。
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だが——一人。
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まだ——旅立たない——者が、いた。
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アルフレート、だった。
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「アルフレート様は……帰らないんですか。勇者の、里へ」
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誠が、尋ねると——アルフレートは——静かに、笑った。
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「うむ……。それが……少し……悩んでいてな」
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「悩んでる?」
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「ああ。星喰いは……倒れた。俺の……"勇者"、としての……役目も……終わった」
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アルフレートは——空を——見上げた。
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「では……これから……俺は……何を、すべきなのか。それが……分からんのだ」
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かつての——アルフレート。
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勇者の、里の——落ちこぼれ。
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生活能力は——皆無で。
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一人では——何も——できなかった。
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「アルフレート様……。よかったら……しばらく……僕たちと……一緒に、暮らしませんか」
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誠は——提案した。
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「一緒に?」
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「はい。僕……戦いが、終わったら……八百屋を……再開しようと、思ってるんです」
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誠は——微笑んだ。
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「アルフレート様も……よかったら……手伝って、ください。野菜を、売ったり……畑を、耕したり」
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「八百屋の……手伝い……!」
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アルフレートは——目を、輝かせた。
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「それは……"新しい、クエスト"、だな!」
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「クエストじゃ、ないですけど……まあ、いいです」
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だが——アルフレートは——ふと——真剣な、顔に、なった。
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「田中。一つ……気に、なることが、ある」
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「なんですか」
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「俺は……なぜ……"RPGの、世界"、が……見えるのだろうな」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「ステータス、画面。ドロップ、アイテム。皆が……"NPC"、に、見える……あの、感覚」
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「あれは……一体……何なのだ」
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誠は——考えた。
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そういえば——番外編でも——散々——アルフレートの——RPG的な、世界認識には——振り回されてきた。
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「もしかして……アルフレート様も……」
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誠は——ふと——思い当たった。
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「よそ者、みたいに……この、世界の……"外"、と……何か……関係が……あるのかも、しれませんね」
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「よそ者と……?」
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「はい。よそ者は……別世界から、来た。だから……この、世界の、"理"、とは……違う、ものを……持ってました」
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誠は——静かに、続けた。
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「アルフレート様が……RPGの、世界を、見てるのも……もしかしたら……この、世界とは……違う、"どこか"、と……繋がってるのかも……」
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アルフレートは——しばらく——考え込んだ。
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そして——ふっ、と——笑った。
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「まあ……いい。今更……そんなことを……気に、しても……仕方あるまい」
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「俺は……この、世界で……生きてきた。皆と……繋がって……戦ってきた」
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アルフレートは——晴れやかに、言った。
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「それが……"RPG"、だろうが……"現実"、だろうが……関係、ない」
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「大事なのは……"表示"、の、向こうに、ある……本当の……"想い"、なのだからな」
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誠は——微笑んだ。
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「アルフレート様……。すっかり……そういうこと……言うように、なりましたね」
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「ふっ。お前たちと……過ごすうちに……学んだのだ」
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「では……田中。改めて……よろしく、頼む」
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アルフレートは——手を——差し出した。
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「八百屋の……手伝い……いや、"仲間"、として」
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「はい! こちらこそ……よろしく、お願いします!」
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誠は——その、手を——握った。
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世界最強の、勇者と——戦えない、八百屋の、孫。
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奇妙な——けれど——確かな——"繋がり"、が。
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これからも——続いていく。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「仲間が、去って……でも、アルフレート様だけ、まだ、旅立たない。"勇者の、役目は、終わった。これから、何を、すべきか、分からん"、って。だから、誘った。"八百屋を、再開するから、手伝って、ください"、って。アルフレート様、"新しい、クエストだな!"、って、目を、輝かせてた。それから……"なぜ、RPGの世界が、見えるのか"、って、気にしてた。僕は、"よそ者みたいに、この世界の、外と、関係が、あるのかも"、って。でも、アルフレート様、"今更、気にしても、仕方ない。RPGだろうが、現実だろうが、関係ない。大事なのは、表示の向こうの、本当の、想いだ"、って。すっかり、そういうこと、言うように、なった。そして……"八百屋の、手伝い、いや、仲間として、よろしく、頼む"、って。世界最強の、勇者が……八百屋の、仲間に。じいちゃん……面白い、ことに、なったよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。世界最強の、勇者が……八百屋の、店先で……野菜を、売る、日々が——思いのほか……賑やかで……楽しい、ものに、なることを。
そして——その、何気ない、日常の、中にこそ……本当の……"幸せ"、が、あることも——もう……知り始めていた。




