第241話「戦いの、後で」
神様が——旅立ち。
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二つだった、月が——一つに——戻った。
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世界は——ようやく——静けさを——取り戻した。
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裂けていた、空は——元の、青空へ。
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焼け、爛れていた、大地にも——少しずつ——緑が——戻り始めた。
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星喰いとの、戦いが、終わって——数日が——過ぎた。
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各地では——復興が——始まっていた。
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焼かれた、村を——建て直し。
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荒れた、畑を——耕し直す。
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人々は——失ったものを——嘆きながらも。
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それでも——前を、向いて——歩き出していた。
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誠は——復興を、手伝いながら——各地を——回っていた。
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「田中さん! ありがとう! あんたたちのおかげで……わしら……助かったよ!」
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「田中さん! 今度……新しい、畑で……野菜が、採れたら……真っ先に、届けるからね!」
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行く先々で——人々が——誠に——感謝を、告げた。
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「いえ……。僕は……ただ……皆を、繋いだ、だけです」
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誠は——照れくさそうに——笑った。
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「本当に、頑張ったのは……戦ってくれた……皆です」
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だが——人々は——知っていた。
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戦えない、モブが——世界の、中心に、立ち。
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皆を、繋いで——世界を、救った、ことを。
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「田中さんこそ……本当の……"英雄"、だよ」
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一人の、老人が——そう、言った。
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「英雄……。いえ、僕は……」
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誠は——首を、振った。
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「僕は……英雄なんかじゃ……ありません。ただの……八百屋の、孫、です」
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「はは。そうかい」
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老人は——温かく——笑った。
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「なら……その……八百屋の、孫が……世界を、救ったんだな」
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その夜——仲間たちが——誠のもとに——集まった。
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戦いの、後の——ささやかな——祝いの、席。
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「いやー! 終わったなあ!」
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グランデルが——豪快に——酒を、飲んだ。
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「決戦前夜に……言うた、通り……こうして……田中の、飯を、肴に……浴びるほど、飲めるとは!」
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「グランデルさん……飲みすぎですよ」
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誠は——苦笑した。
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「ええやん! 祝いの、席や!」
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藤原も——楽しげに——笑った。
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「うちも……約束、果たしたで。のんびり……空、飛んできたわ。誰も、乗せんと……ただ、気持ちよくな」
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「良かったですね、藤原さん」
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竜崎は——静かに——酒を——傾けていた。
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「俺は……この、戦いで……もう……誰も、失わずに、済んだ」
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「部下を……疫病で、失った、あの日から……ずっと……願ってた、ことだ」
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竜崎は——静かに——微笑んだ。
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「田中。ありがとう。お前が……皆を、繋いでくれた、から……俺は……もう、誰も……失わずに、済んだ」
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賑やかな——祝いの、席。
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誠は——その、光景を、見て——胸が——温かくなった。
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「みんな……楽しそうだ」
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誠は——静かに、思った。
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「こういう……何気ない、時間を……守りたかったんだ」
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「戦いじゃ、なくて……ただ……皆で……笑い合える……こんな、日常を」
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「そして……今……その、日常が……戻ってきた」
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その、時——エリナが——そっと——誠の、隣に——座った。
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「あなた。良い、顔、してるわ」
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「そう?」
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「ええ。肩の、荷が……下りた、みたいな……」
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「うん……。そうかも、しれないな」
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誠は——微笑んだ。
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「ずっと……"世界を、守らなきゃ"、って……気を、張ってたから」
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「でも……今は……ただ……皆と……この、時間を……楽しめる」
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エリナは——優しく——微笑んだ。
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「よく……頑張ったわね、あなた」
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「うん……。ありがとう、エリナ」
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「神様が、旅立って……月が、一つに、戻って……世界は、静けさを、取り戻した。焼けた、大地にも、緑が、戻り始めてる。各地で、復興が、始まった。人々は、失ったものを、嘆きながらも……前を、向いて、歩き出してる。行く先々で、感謝された。"田中さんこそ、本当の、英雄だ"、って。僕は、英雄なんかじゃ、ない。ただの、八百屋の、孫だ。夜、皆で、祝いの、席。グランデルさんは、約束通り、浴びるほど、酒を。藤原さんは、のんびり、空を、飛んだ、って。竜崎は、"この戦いで、もう、誰も、失わずに、済んだ。お前が、繋いでくれたから"、って。皆、楽しそう。こういう、何気ない、時間を、守りたかったんだ。その、日常が……戻ってきた。エリナが、"よく、頑張ったわね"、って。じいちゃん……守れたよ。この、世界も……この、日常も」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この、"平和な、日常"、こそが——彼が……本当に……守りたかった、ものであり……そして……これからも……守り続けていく、ものであることを。
そして——英雄たちの、物語が、終わっても……モブの、日常は……ずっと……続いていくことも——静かに……感じ始めていた。




