表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
なんだ、ガンって

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
246/447

第240話「神様の、旅立ち」

「あいつの……もとへ……行こうと、思う」



神様の——その、言葉に。



誠は——胸が——ざわついた。



「神様……。"行く"、って……どこへ……」





神様は——静かに——微笑んだ。




「ワイは……もともと……"天の、住人"、や。星喰いを、見守るために……月に、なって……この、世界に……留まっとった」




「でも……その、役目は……終わった」





「じゃあ……月は……」




「ああ。ワイが……月で、あり続ける、必要も……なくなった」




神様は——空の——二つの、月を——見上げた。





「ワイは……あいつと……"必ず、また、会おう"、って……約束した。四百年……その、約束を……果たせへんかった」




「でも……お前が……繋いでくれた。あいつの、魂と……ワイを」





神様は——静かに、続けた。




「せやから……今度は……ワイの、方から……あいつに……会いに、行く、番や」





「会いに……行く……」




誠は——ようやく——理解した。




神様が——"逝く"、という——その、意味を。





「神様は……いなくなっちゃうんですか……?」




誠の、声が——震えた。





「まあ……そう、なるなあ」




神様は——飄々と——言った。




「でも……そんな……悲しい、顔、すんなや、田中はん」






「だって……神様……」




誠は——目を、伏せた。




「神様は……いつも……変なこと、ばっかり、言って……肝心なことは……教えてくれなくて……」




「でも……いつも……そばで……見守って、くれてました」





「田中はん……」





「僕……神様のこと……好きでした。だから……いなくなるのは……寂しいです」





神様は——少し——驚いた、ように——目を、見開いた。




そして——ふっ、と——優しく——笑った。




「……ありがとうな、田中はん」






「なあ、田中はん。最後に……一つだけ……教えたる」




神様は——静かに、言った。




「ワイが……なんで……お前を……この、世界に……"呼んだ"、か……分かるか?」





「え……? 僕を……呼んだ……?」




誠は——驚いた。




「僕が……この、世界に、来たのは……偶然じゃ……なかったんですか?」





「偶然な、わけ、ないやろ」




神様は——悪戯っぽく——笑った。




「ワイが……呼んだんや。星喰いに……抗える……"誰か"、を」





「でも……なんで……僕、だったんですか。僕は……ただの……八百屋の、孫で……戦う力も……特別な、才能も……ないのに……」





「それや」




神様は——静かに、言った。




「ワイが……いろんな、世界を……見て、回って……星喰いに……抗える、"力"、を……探しとった、時」




「一番、強い、戦士でも……一番、賢い、賢者でも……なかった」





神様は——誠を——まっすぐ、見た。




「ワイが……見つけたんは……八百屋の、店先で……困っとる、人を……放っておけへん……お前、やった」





「人と、人を……繋ぐ。困っとる、人が、おったら……手を、差し伸べる。そういう……"当たり前"、のことを……当たり前に……できる、お前が」




「星喰いに……抗える……唯一の……"力"、やと……ワイは……思うたんや」





誠は——胸が——熱くなった。




「神様……」





「そして……ワイの、目に……狂いは……なかった」




神様は——晴れやかに——微笑んだ。




「お前は……戦わずに……世界を、救うた。繋がりで……皆を、幸せに、した」




「あいつが……四百年前に……願った……"皆で、力を、合わせる"、ことを……お前が……果たした」





「ほんまに……ありがとうな、田中はん」






神様の——身体が。




少しずつ——光の、粒に——なって——空へと——昇り始めた。





「神様……!」




「泣くな、泣くな。ワイは……これから……あいつに……会いに、行くんや。嬉しい……門出、やで」





神様は——最後に——誠に——笑いかけた。




「田中はん。これからも……その……"繋がり"、を……大事に、な」




「それが……お前の……一番の……"力"、なんやから」





「はい……! 神様……! ありがとう、ございました……!」




誠は——涙を、流しながら——精一杯——笑った。




「よそ者さんに……! よろしく……! 二人で……仲良く……!」





「おう。伝えとくわ」






そして——神様の、身体は。




完全に——光の、粒と、なって。




空へと——昇っていった。





同時に——空の——二つの、月の、片方が。




ゆっくりと——薄れ——消えていった。





四百年——神様が——親友の、ために——捧げ続けた——月。




その、役目を——終えて。





空には——再び——一つの、月だけが——残った。





その日、誠は、後に、祖父のノートに、こう書き加えることになる。


「神様が……旅立った。"あいつに、会いに、行く番や"、って。神様は……いなくなる。寂しい、って、言ったら……"好きでした、って……ありがとうな"、って。最後に、教えてくれた。僕が、この世界に、来たのは……偶然じゃ、なくて……神様が、呼んだんだ、って。星喰いに、抗える、"誰か"、を。一番、強い、戦士でも、賢者でも、なくて……"八百屋の、店先で、困ってる人を、放っておけない、お前だった"、って。"人と人を、繋ぐ、当たり前のことを、当たり前に、できる、お前が、星喰いに、抗える、唯一の、力だ"、って。そして……"ワイの、目に、狂いは、なかった。お前は、戦わずに、世界を、救うた"、って。神様の、身体が、光の粒に、なって……空へ。二つの月の、片方が、消えて……空には、また、一つの月だけ。神様……よそ者さんと、二人で、仲良く。ありがとう、ございました。じいちゃん……また、一つ……大事な、出会いと、別れが、あったよ」



心の中に——今は——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。神様が、去り……二つだった、月が……一つに、戻った、この、世界で——これから……本当の……"日常"、が……始まることを。


そして——守り抜いた、その、日常こそが……最も……尊い、ものであることも——今は……静かに……噛みしめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ