第239話「約束」
勝利の——歓喜が——世界中に——広がる中。
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誠は——ふと——我に、返った。
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「そうだ……! 皆瀬さん……! スライムの、みんな……!」
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星喰いの、光を——受け止めるために。
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盾と、なって——焼け、蒸発していった——スライムたち。
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「みんな……! 大丈夫……!?」
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誠は——慌てて——繋がりを——探った。
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だが——スライムたちの、気配は——ひどく——弱々しかった。
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「田中……くん……」
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かろうじて——皆瀬の、声が——届いた。
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「皆瀬さん……! 今、行く……!」
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誠は——皆瀬たちの、もとへ——駆けつけた。
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そこには——焼け、爛れ——今にも——消えそうな——スライムたちが、いた。
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「みんな……! よく……守ってくれた……! 今……回復させる……!」
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誠は——スライムたちに——手を、当てた。
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「みんな……! "生きたい"、って……! "また、皆と、一緒にいたい"、って……強く、念じて……!」
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「うん……。生きたい……。田中くんや……皆と……もっと……一緒に……」
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皆瀬の——声が——応えた。
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——ゴォォォォォォォォォッ!!!
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誠の、手が——スライムたちを——眩く、光らせた。
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焼け、爛れた——スライムたちの、身体が。
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みるみる——癒えていく。
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「治って……いく……!」
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「良かった……! みんな……無事だ……!」
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やがて——スライムたちは——完全に——回復した。
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「田中くん……。ありがとう……」
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皆瀬が——元気に——揺れた。
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「信じてた、通り……回復させて、くれたね」
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「当たり前だよ……! 皆瀬さんたちが……守ってくれたから……勝てたんだ……!」
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誠は——涙ぐんだ。
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「ありがとう……。本当に……ありがとう……」
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その時。
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空から——柔らかな、光が——降りてきた。
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「これは……」
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誠が——見上げると。
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そこに——あの、神様が——立っていた。
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「神様……!」
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「よお、田中はん」
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神様は——いつもの——飄々とした、様子で——だが——どこか——晴れやかな、顔で——微笑んだ。
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「やってくれたなあ。星喰いを……倒しよった」
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「神様のおかげです……! 月の力を……貸してくれて……!」
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「なんの。ワイは……ちょこっと……手伝った、だけや」
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神様は——静かに、続けた。
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「本当に……凄いのは……お前や、田中はん。お前が……皆を、繋いだから……ワイまで……繋がることが、できた」
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「神様。一つ……聞いても、いいですか」
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誠は——静かに、尋ねた。
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「よそ者は……あなたの……親友、だったんですよね」
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神様の——表情が——わずかに——揺れた。
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「……ああ。石碑で……見たんやな」
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「はい」
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「四百年前……ワイと、あいつは……"必ず、また、会おう"、って……約束、して……別れた」
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神様の、声が——遠く——寂しげだった。
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「でも……あいつは……ワイが……月に、なる、前に……逝ってしもうた」
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「結局……約束は……果たせへんかった」
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誠は——胸が——締め付けられた。
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「でもな、田中はん」
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神様は——ふと——微笑んだ。
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「さっき……お前が……ワイを……"繋がりの、一部や"、って……繋いでくれた、時」
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「ワイは……感じたんや。あいつの……想いを」
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「よそ者の……想い?」
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「ああ。あいつが……各種族に、託した……"抗う、術"。それが……お前らの、手で……一つに、繋がった、時……」
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「あいつの……魂が……その、繋がりの、中に……確かに……おったんや」
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神様の——目に——涙が——滲んだ。
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「四百年……。ワイは……ずっと……一人やった。でも……さっき……ようやく……あいつと……"再会"、できた」
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「お前の……繋がりの……中で」
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誠は——静かに——涙を、流した。
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「神様……。じゃあ……約束は……」
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「ああ。果たせた」
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神様は——晴れやかに——微笑んだ。
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「四百年越しの……約束が……お前のおかげで……ようやく……果たせたんや」
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「ありがとうな、田中はん」
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神様は——空を——見上げた。
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二つの、月が——昼の、空にも——うっすらと——輝いていた。
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「さて……と。ワイの……役目も……そろそろ、終わりや」
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「え?」
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「星喰いは……もう、おらん。ワイが……月に、なって……見守る、必要も……なくなった」
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神様は——静かに、微笑んだ。
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「ワイは……そろそろ……あいつの……もとへ……行こうと、思う」
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その日、誠は、後に、祖父のノートに、こう書き加えることになる。
「勝利の後……盾に、なって、焼けた、皆瀬さんたちを、回復させた。皆瀬さん、"信じてた通り、回復させて、くれたね"、って。みんな、無事で、良かった。そしたら……神様が、降りてきた。晴れやかな、顔で。"本当に、凄いのは、お前や。お前が、皆を、繋いだから、ワイまで、繋がれた"、って。神様に、よそ者との、こと、聞いた。"四百年前、必ず、また、会おう、って、約束して、別れた。でも、あいつは、ワイが、月に、なる前に、逝った。約束は、果たせへんかった"、って。でも……"さっき、お前が、ワイを、繋いでくれた時、あいつの、想いを、感じた。各種族に、託した、術が、一つに、繋がった時、あいつの、魂が、その中に、おった。四百年、一人やった、でも、ようやく、あいつと、再会できた。お前の、繋がりの、中で"、って。神様の、目に、涙。約束は、果たせた、って。じいちゃん……神様が……そろそろ、あいつの、もとへ、行く、って……」
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心の中に——二つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。神様が、"逝く"、という、その、言葉の……本当の、意味を。
そして——別れは……いつも……少しだけ……切ないことも——静かに……感じ始めていた。




