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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
勇者の里

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番外編・その八「勇者の、独り言」

その日——誠は——酒場で——遅い、昼食を——取っていた。



漬物と——パンと——温かい、スープ。



いつもの——ささやかな、平和。





だが——その、平和は。




酒場の、扉が——勢いよく——開いた、瞬間に——破られた。




——バァン!





「勇者様だ!」



「勇者様が、来たぞ!」




町中が——一斉に——拍手した。





現れたのは——アルフレート、だった。




彼は——真顔で——町人たちに——手を、振った。




そして——誰も、いない——虚空に、向かって——爽やかな、笑顔を——浮かべた。





「こんにちはー! 今日も……"配信"、を……始めて、いきます!」





町人たちは——「勇者様が、挨拶して、くれた!」と——大喜びで——拍手した。




だが——誠だけが——首を、傾げた。




「……配信?」





アルフレートは——相変わらず——誰も、いない、方向へ——笑顔を、向けて、続けた。




「今日は……"四天王"、を……倒しに、行きます!」





誠が——アルフレートを——よく、見ると。




彼の、頭上にだけ——見える、ものが——あった。





【LIVE】


視聴者 38,521人




「……え?」




誠は——固まった。





隣の——酒場の、主人に——尋ねた。




「あの……アルフレート様……今……誰に……話してるんですか?」





酒場の主人は——のんびりと、答えた。




「ああ、勇者様は……緊張すると……独り言が、増えるんだよ。可愛い、もんさ」




「違う違う! そういう、ことじゃ……!」





誠だけが——見えていた。




アルフレートの、頭上に——流れていく——"コメント欄"、が。





『初見です』


『草』


『今日も頑張れ』


『主人公、まだ気付いてない』





「コメントまで、ある!」




誠は——絶叫した。




「しかも……"主人公、まだ気付いてない"、って……僕の、ことか!?」





周りの、町人たちは——きょとん、とした。




「田中さん……何を、一人で……騒いでるんだい?」




「……いや、こっちの、セリフですよ、それ……!」






番外編・その九「高評価、お願いします」



魔物の、討伐を——終えた、後。



アルフレートは——優雅に——剣を、納めた。




そして——虚空に、向かって——にっこり、笑った。




「ここまで……見て、くれて……ありがとう、ございます!」





「……誰に?」




誠が、ツッコむと——アルフレートは——構わず、続けた。




「よかったら……"高評価"、と……"登録"、を……お願いします!」





そばに、いた——騎士団長が——首を、傾げた。




「勇者殿。"登録"、とは……何で、ありますか?」





アルフレートは——ぴたり、と——止まった。




「……。」





「勇者殿?」




「……分からん」




アルフレートは——真顔で、言った。





「え?」




「"登録"、が……何なのか……俺にも……分からん」




アルフレートは——困惑した、顔で、続けた。




「ただ……戦いが、終わると……なぜか……"高評価と、登録を、お願いします"、と……言わなければ、いけない、気が……するのだ」





「クセなのか!」




誠は——叫んだ。




「意味も、分からず……言ってたんですか!?」





「うむ……。言わないと……何か……"落ち着かない"、のだ……」




アルフレートは——真剣に——悩んでいた。




「この……"衝動"、は……一体……何なのだろうな……」





誠は——頭を、抱えた。




「アルフレート様の、その、"衝動"、の、方が……よっぽど、謎ですよ……」






番外編・その十「スポンサー」



別の、戦いの、前。



アルフレートは——真新しい——剣を——抜いた。




そして——また——虚空に、向かって——爽やかに、言った。




「今回は……こちらを……使わせて、いただきます!」





「……誰に、紹介してるんですか?」




誠が、尋ねたが——アルフレートは——構わず——剣を、掲げた。




「"ドラゴンスチール"、製! 軽くて……丈夫! 業物、です!」





その、様子を——見ていた、鍛冶屋の、おやじが——大喜び、した。




「おお! 勇者様! 宣伝……ありがとう、ございます! うちの、剣を……そんなに……!」





「……え?」




誠は——嫌な、予感が、した。




「まさか……本当に……"宣伝"、だったんですか……?」





その時——アルフレートの、頭上の——コメント欄が——流れた。




『案件、きた』


『提供:ドワーフ工房』


『勇者、しっかり、案件こなすの草』





「案件、配信じゃ、ねぇか!」




誠は——絶叫した。





「アルフレート様! あなた……ちゃっかり……スポンサーまで……付いてるんですか!?」




「すぽんさー……? なんだ、それは」





アルフレートは——本気で——分かっていなかった。




「俺は……ただ……良い、剣だと……思ったから……紹介した、だけだ」




「その……"提供"、とやらも……知らん」





「無自覚に……案件……こなしてる……!」




誠は——めまいが、した。






番外編・その十一「コメントに、反応する、勇者」



ある日——町娘が——アルフレートに——駆け寄ってきた。




「勇者様!」




だが——アルフレートは——彼女に、応える、前に。




急に——空を——見上げた。





「えっ……? "左を、見ろ"……?」





「コメント、読んでる!」




誠は——すかさず——ツッコんだ。




「今……頭上の、コメントを……読みましたよね!?」





アルフレートは——ゆっくり、と——左を——見た。




そこには——一匹の——スライムが——いた。





「本当だ! スライムが……いるぞ!」




アルフレートは——感心した。




「視聴者は……よく……見ているな……!」





「コメントが……攻略サイトみたいに、なってる!」




誠は——頭を、抱えた。




「視聴者に……敵の、位置……教えてもらってるじゃ、ないですか!」





その時——ぽかん、と、していた——町娘が——尋ねた。




「あの……勇者様? さっきから……誰と……話してるんですか……?」





アルフレートは——少し、考えて——答えた。




「えっと……"神様"、かな?」





「……まあ、間違っては……ないか」




誠は——ぽつり、と、呟いた。





天から——見守る、存在。




意味深な、断片だけを——漏らす、あの、神様。




確かに——"見えない、誰かが……上から、見ていて……時々、口を、挟む"、という、点では。




アルフレートの——"視聴者"、と——どこか——似ていた。





「……いや、待てよ」




誠は——ふと——真顔に、なった。




「もしかして……アルフレート様の、"視聴者"、って……本当に……"どこかの、誰か"、が……見てるんじゃ……」





考え始めると——少し——怖くなった。




誠は——慌てて——首を、振った。




「……いや、やめよう。考えたら……負けだ」






その、夜。




誠は——アルフレートに——こっそり——尋ねた。




「アルフレート様。その……"視聴者"、って……本当に……見えるんですか?」





「ああ。数字で……人数も……出ている。今は……四万人、ほどだな」




アルフレートは——当然のように、答えた。





「その、人たちは……アルフレート様の……何を……見てるんでしょうね」




「さあ……。だが……」




アルフレートは——静かに——微笑んだ。




「戦いが……辛い、時……"頑張れ"、と……コメントが、流れると……不思議と……力が、湧くのだ」




「見えない、誰かが……俺を……応援して、くれている。それだけで……一人じゃ、ない、と……思える」





誠は——はっと、した。




「……そうか。それも……一種の……"繋がり"、なのかも……しれませんね」





見える、ものが——違っても。




アルフレートも——また——"見えない、誰か"、と——繋がって、いた。




そして——その、繋がりに——支えられて、いた。





「アルフレート様」




誠は——微笑んだ。




「その……"視聴者"、さんたちにも……よろしく、伝えといて、ください」





「ああ。伝えて、おこう」




アルフレートは——虚空に、向かって——手を、振った。




「……だ、そうだ。田中が……よろしく、と」





その、瞬間——誠の、視界の、隅に。




一瞬だけ——アルフレートの、頭上の——コメント欄が——見えた、気が、した。





『主人公、いい奴』


『田中、頑張れ』


『二部完結、待ってます』





「……ん?」




誠は——目を、こすった。




だが——もう——そこには——何も——見えなかった。





「……気のせい、かな」




誠は——首を、傾げて——それ以上は——考えないことに、した。





窓の外——夜空に——二つの、月が——浮かんでいた。




まだこの時の誠は知らない。アルフレートの、"視聴者"、が——本当に……"どこか"、から……この、物語を……見守っているのかもしれないことを。


そして——その、"見えない、誰か"、との、繋がりもまた……いつか……大きな、力に、なるのかも——今はまだ、知る由もなかった。

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