番外編・その四「勇者、犯罪者になる」
勇者アルフレートの——RPG的、常識と。
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この、世界の、現実の——ズレ。
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それは——時に——笑い話で、済まされたが。
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時に——深刻な、事態を——引き起こした。
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ある日——避難民の、集落を——訪れた、一行。
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家々を——見て、回っていると。
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アルフレートが——突然——ある、民家に——ずかずかと——上がり込んだ。
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「よし。まず……このタンスを、調べるか」
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アルフレートは——当たり前のように——他人の、タンスを——開け始めた。
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「ちょっ……! アルフレート様!」
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誠は——慌てて——止めた。
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「人の、家ですよ! 勝手に、タンスを、開けないでください!」
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アルフレートは——きょとん、とした。
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「何を、言っている。RPGの、常識だろう」
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「なんの、常識ですか!」
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「街の、民家の、タンスや、壺は……調べるものだ。中に……アイテムや……ゴールドが……入っている」
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「泥棒の、常識でしょう、それ!」
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誠は——絶叫した。
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だが——アルフレートは——聞いていなかった。
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タンスの、奥から——何かを——見つけたのだ。
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「お……! 見ろ、田中! "50G"、発見だ! やはり、あったぞ!」
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アルフレートは——嬉しそうに——民家の、住民の——虎の子の、50ゴールドを——掴んだ。
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その、瞬間。
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「泥棒ぉぉぉ! 警備兵ーーー! 警備兵ーーー!」
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家の、主が——絶叫した。
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「え……?」
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アルフレートは——固まった。
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「なぜ……騒ぐ? タンスの、金は……自由に……取って、いいはず……」
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「現実だからです!」
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誠は——アルフレートの、腕を——掴んで——引きずり出した。
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「他人の、家の、金を、盗んだら……普通に……犯罪です! 捕まりますよ!」
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集まってきた——警備兵に——囲まれ。
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世界最強の、勇者は。
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人生で——初めて——"犯罪者"、として——お縄に、なりかけた。
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「ま、待て! 誤解だ! 俺は……ただ……RPGの、セオリー通りに……」
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「そのセオリーが、犯罪なんですよ!」
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誠が——必死に——頭を、下げ——50ゴールドを、返し。
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なんとか——事なきを、得た。
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「……勉強に、なった」
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アルフレートは——しゅん、と、した。
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「タンスの、金は……取っては……いけない、のだな……」
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「当たり前です……」
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番外編・その五「勇者、結婚を理解できない」
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別の、日。
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村の、若者が——嬉しそうに——誠に——報告に、来た。
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「田中さん! 俺……来月……結婚するんです!」
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「おお! おめでとう!」
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それを——聞いた、アルフレートが——首を、傾げた。
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「けっこん……? ああ、"恋愛イベント"、の、ことか」
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「恋愛……イベント?」
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若者は——きょとん、とした。
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「いや……。恋愛イベント、っていうか……人生の、大事な……」
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「結婚、というのは……"エンディング"、では、ないのか?」
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アルフレートは——真剣に、尋ねた。
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「主人公と、ヒロインが……結ばれて……"めでたし、めでたし"、で……物語が……終わる……あれだろう?」
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「終わり、じゃ、ないですよ!」
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誠は——笑った。
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「結婚は……"始まり"、です。そこから……二人の……新しい、人生が……始まるんです」
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アルフレートは——衝撃を、受けた。
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「なに……!? エンディングの、後にも……人生が……続く、だと……!?」
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「続きますよ! 当たり前でしょう!」
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アルフレートは——愕然と——した。
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「では……"めでたし、めでたし"、の、後……主人公たちは……どうやって……暮らしていくのだ……?」
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「普通に、暮らすんですよ! 仕事して……子供、育てて……」
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「子供……! エンディングの、後に……!」
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アルフレートは——頭を、抱えた。
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「なんという……自由度の、高い……ゲームなのだ、この、世界は……!」
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「ゲームじゃ、ないですって!」
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誠は——ツッコんだ。
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その、夜。
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アルフレートは——ぽつり、と——誠に——尋ねた。
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「なあ、田中。お前も……エリナと……結婚、しているのだろう?」
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「はい」
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「では……お前の、物語は……とっくに……"エンディング"、を……迎えている、はずだ」
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「なのに……なぜ……こうして……戦い続けている?」
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誠は——静かに、微笑んだ。
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「アルフレート様。人生に……"エンディング"、は……ないんですよ」
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「結婚しても……その、後も……ずっと……続いていく。大変なことも……幸せなことも……全部……ひっくるめて」
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「それが……"生きる"、っていう、ことなんです」
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アルフレートは——静かに——聞いていた。
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「エンディングの、ない……物語……」
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「そうか……。だから……お前は……"平和な、日常を、守りたい"、と……言うのだな」
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「その、"続いていく、日常"、こそが……守るべき、ものだから……」
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「はい」
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誠は——頷いた。
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アルフレートは——静かに——夜空を——見上げた。
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「……この、ゲーム、いや……この、"世界"、は……本当に……奥が、深いな」
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番外編・その六「死体を、漁る、勇者」
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また、別の、日。
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道中——一体の、オークが——襲いかかってきた。
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アルフレートが——一撃で——オークを——倒す。
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「よし! "オークの、革 ×5"、ドロップだ!」
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アルフレートは——嬉しそうに——手を、掲げた。
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「……何、してるんですか?」
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誠が、尋ねると——アルフレートは——当然のように、答えた。
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「ドロップアイテムの、回収だ。オークは……革を、落とす」
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「その、革……どこから、出したんですか?」
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誠は——オークの、死体を——見た。
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倒れた——オークの、身体は——特に——何も——落として、いなかった。
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革も——何も——見当たらない。
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「どこから、って……オークが……ドロップ、した……」
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アルフレートは——手のひらの——"革"、を——示した。
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だが——誠の、目には。
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やはり——何も——見えなかった。
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「……アルフレート様。オークの、死体には……何も、ないですよ」
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誠は——ゆっくり、と、言った。
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「革なんて……どこにも……落ちてません」
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「え?」
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アルフレートは——固まった。
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「お前……その、革……どこから……出したんですか」
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誠は——じわり、と——嫌な、汗を——かき始めた。
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「僕には……見えました。アルフレート様が……"何も、ない、空間"、から……いきなり……手を、握って……」
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「そこに、"革が、ある"、みたいに……振る舞ってるのが……」
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「え……?」
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アルフレートも——じわり、と——不安に、なった。
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「では……この、俺の、手に、ある……革は……」
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誠は——本気で——恐怖した。
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「アルフレート様。それ……本当に……"ある"、んですか……?」
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「僕には……何も、ない、空間から……あなたが……見えない、革を……取り出したように……しか……見えなかった……」
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しん——と——静寂が——流れた。
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アルフレートは——自分の、手のひらを——見つめた。
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そこには——彼にとっては——確かに——"オークの、革 ×5"、が——あった。
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だが——誠には——何も——見えない。
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「……なあ、田中」
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「は、はい」
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「俺と、お前……。どちらが……"正しい、世界"、を……見ているのだ……?」
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誠は——ぞくり、と、した。
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答えられなかった。
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勇者には——見える、もの。
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主人公には——見えない、もの。
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同じ——世界に、いるはずなのに。
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二人が——見ている、"現実"、は。
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もしかしたら——根本から——違うのかもしれない。
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「……アルフレート様」
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誠は——ぎこちなく——笑った。
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「その、革……使い道が、あったら……使ってください……。僕には……見えませんけど……」
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「……ああ」
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アルフレートは——見えない、革を——そっと——無限収納に——しまった。
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二人の、間に。
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なんとも——言えない——薄ら寒い、空気が——流れた。
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その、夜——誠は——皆瀬に——こっそり——相談した。
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「皆瀬さん。アルフレート様……大丈夫かな。見えない、ものが……見えてるみたいで……」
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「うーん……」
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皆瀬は——揺れた。
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「でも……アルフレートさんの、"無限収納"、から……たまに……本当に、役立つ、道具が……出てくるよ?」
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「え?」
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「この前も……"見えない、ロープ"、で……崖から、落ちそうな、子供を……助けてた。ロープは……見えないけど……ちゃんと……子供は……助かったの」
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誠は——ぞっと、した。
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「じゃあ……アルフレート様の……見えてる、世界も……"本当"、なのかな……」
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「さあ……。どっちが、本当か……私にも……分からない」
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同じ、世界に、いて。
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違う——"現実"、を——見ている、二人。
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その、謎は——深まる、ばかり、だった。
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窓の外——焚き火の、向こうに——二つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。アルフレートが、"よそ者"、と、同じく……この、世界の、"外"、の……理を……持っているのかもしれないことを。
そして——その、"理の、違い"、が……いつか……大きな、意味を……持つのかも——今はまだ、分からなかった。




