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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
勇者の里

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番外編・その一「勇者のステータス画面」

決戦の——刻限が、迫る中。



つかの間の——休息。



誠は——アルフレートと——並んで——焚き火を、囲んでいた。




「アルフレート様。一つ……前から、気になってたんですけど」



「なんだ、田中」




「アルフレート様……時々……何もない、空間を……じーっと、見つめて……指で、つついたり、してますよね」





アルフレートは——きょとん、とした。




「ん? ああ……"ステータス画面"、を、見ているのだ」



「ステータス……画面?」




「そうだ。ほら、ここに……」




アルフレートは——虚空を——指さした。




「"アルフレート レベル3874.7 HP 89000/89000"……と、表示されている」





誠は——アルフレートの、指さす——虚空を——見た。




「……何も、ないですけど」




「見えないのか!?」




アルフレートは——驚愕した。





「見えないですよ。ていうか……レベルって、なんですか。HPって?」




「お前……自分の、レベルを……知らないのか!?」




アルフレートは——愕然と、した。





「じゃあ……お前の、ステータス画面を……見てみろ。目の前に……あるはずだ」




誠は——言われるがまま——目の前の、虚空を——じっと、見つめた。




そして——指で——つついてみた。





「……何も、出ません」




「なに!?」





アルフレートは——誠を——まじまじと——見た。




そして——ハッと——した。




「そういえば……お前の、頭上には……"名前"、も……出ていない……」




「名前?」





「この、世界の、者は……皆……頭上に……薄く、名前が、表示されているのだ。"村人A"、とか……"エリナ"、とか……」




アルフレートは——真剣な、顔で、続けた。




「だが……お前の、頭上には……最初から……何も、出ていなかった」





「え、僕……名前、出てないんですか!?」




誠は——自分の——頭上を——手で、探った。




もちろん——何も——触れなかった。





「妙だとは……思っていたのだ」




アルフレートは——腕を、組んだ。




「他の、村人は……皆……"NPC"、なのに……お前だけは……なぜか……"NPC"、と、違う……」




「NPC……?」






その、会話を——聞いていた、藤原が——口を、挟んだ。




「アルフレート。あんた……前から、思っとったんやけど……」




「なんだ、藤原」




「その……"ステータス画面"、やら……"NPC"、やら……あんた、だけしか……言わへんよな?」





アルフレートは——きょとん、とした。




「……そう、なのか?」




「そうや。うちらは……そんなもん……見えへんし……聞いたことも、あらへん」





グランデルも——頷いた。




「ワシも……"れべる"、やら……"えいちぴー"、やら……何のことか……さっぱりや」





アルフレートは——絶句した。




「まさか……見えているのは……俺、だけ……なのか……!?」





誠は——なんとも、言えない——顔を、した。




「アルフレート様……。もしかして……アルフレート様だけ……何か……違う……"仕組み"、で……この、世界に……いるのかも、しれませんね」





「違う……仕組み……」




アルフレートは——愕然と——虚空の、ステータス画面を——見つめた。




「では……この、"レベル3874.7"、は……一体……」





「まあ……細かいことは……気にしない、方が……いいんじゃ、ないですか」




誠は——苦笑した。




「見える、ものが……違っても……アルフレート様は……アルフレート様、ですから」





アルフレートは——しばらく——考え込んだ、後。




ぽつり、と——言った。




「……なあ、田中」



「はい?」




「お前……"経験値"、も……入らないのか?」




「けいけんち……?」





「……もう、いい」




アルフレートは——遠い、目を——した。






番外編・その二「ドロップアイテム」



別の、日。



星喰いの——雑魚を——一体、撃ち落とした、後。




アルフレートが——地面に——駆け寄り——何かを——拾い上げた。




「よし。"星喰いの、欠片"、を……ドロップした」





「ドロップ?」




誠が、尋ねると——アルフレートは——手のひらを——開いた。




「敵を、倒すと……時々……アイテムを……落とすのだ。ほら、これだ」





だが——アルフレートの、手のひらには。




誠の、目には——何も——見えなかった。




「……何も、ないですけど」




「またか!」





アルフレートは——頭を、抱えた。




「見えないのか! こんなに……はっきりと……"星喰いの、欠片 ×1"、と……光っているのに……!」





その時——皆瀬が——揺れた。




「あの……アルフレートさん。それ……本当に……何か、持ってます?」




「持っている! 確かに……この、手に……!」





皆瀬は——そっと——アルフレートの、手のひらに——触れてみた。




「……何も、ないです。空気、だけ」





アルフレートは——絶句した。




「そんな、馬鹿な……! では……俺が……いつも、集めていた……この、"アイテム"、の、数々は……」





「アルフレート様……。いつも……戦いの、後……嬉しそうに……空気を、拾って……"良い、ドロップだ"、って……言ってましたよね……」




誠は——気まずそうに、言った。




「僕たち……ずっと……"何を、拾ってるんだろう"、って……不思議に……思ってました……」





「うちら……あんたのこと……"見えへん、もん、拾って、喜ぶ、変な、勇者"、や、と……」




藤原が——正直に、言った。





「なっ……!」




アルフレートは——顔を——赤らめた。





「で、でも! 俺の、"無限収納"、には……ちゃんと……何万個もの……アイテムが……入っているのだぞ!」




「無限、収納……?」





アルフレートは——虚空に——手を、突っ込んだ。




そして——何やら——ごそごそと——探した。




「ほら! "エリクサー"、を……100個! これで……皆の、傷も……たちどころに……!」





アルフレートの、手が——虚空から——何も——持たずに——出てきた。




しん——と——沈黙が——流れた。





「……アルフレート様」




誠は——優しく、言った。




「傷は……僕の、薬草と……回復の、力で……治しますから……。大丈夫ですよ……」





「……そう、か」




アルフレートは——虚空から、出した——見えない、エリクサーを。




そっと——虚空に——戻した。





「……なあ、田中」



「はい」




「俺の、"無限収納"、の、アイテムは……誰かの、役に……立っているのだろうか……」




「……きっと……アルフレート様の、心の、支えには……なってますよ」






番外編・その三「NPCと、呼ばないで」



また、別の、日。



村の、子供たちが——アルフレートの、周りに——集まっていた。




「勇者さま! 遊ぼう!」



「ねえねえ、剣、見せて!」





アルフレートは——優しく——子供たちの、相手を、していた。




だが——ふと——呟いた。




「ふむ……。この、"村人"、たち……"NPC"、の、割には……よく、動く、な……」





それを——聞いた、エリナが——むっと、した。




「アルフレートさん。さっきから……気になってたんですけど」



「ん?」




「"NPC"、って……何ですか。私たちのこと……そう、呼んでますよね?」





アルフレートは——さらり、と、答えた。




「ああ。"ノン・プレイヤー・キャラクター"、の、略だ。つまり……この、世界に、最初から……"配置"、されている……住人の、ことだ」





「配置……!?」




エリナの——こめかみに——青筋が——浮かんだ。




「私たち……"配置"、されてる、って……言うんですか! ちゃんと……生きて……暮らして……ますけど!?」





「い、いや……そういう、意味では……」




アルフレートは——たじろいだ。





「大体! アルフレートさん! あなた……この前……村の、井戸端で……"このNPC、同じセリフしか、言わないな"、って……ぶつぶつ……言ってたでしょう!」




「そ、それは……」




「マーサさんが……"今日も、いい天気だねえ"、って……毎朝、言うのは……ただの……挨拶です! セリフの、使い回しじゃ……ありません!」





アルフレートは——完全に——たじろいだ。




「す、すまん……。俺の、目には……そう……見えていて……」





その、様子を——誠が——笑いながら——見ていた。




「アルフレート様。エリナは……NPCなんかじゃ、ありませんよ。ちゃんと……"生きてる"、僕の……大事な、妻です」





「わ、分かっている! 分かって、いるのだ!」




アルフレートは——必死に——弁明した。




「ただ……俺の、"目"、には……皆の、頭上に……"NPC"、と……表示されて……」




「……もう、その、"目"、閉じてください」




エリナが——ぴしゃり、と、言った。





「はい……」




世界最強の、勇者は——村娘に——完全に——言い負かされ——しゅん、と、した。






その、夜。




アルフレートは——一人——焚き火を——見つめていた。




「NPC……か」





そこへ——誠が——やってきた。




「アルフレート様。落ち込んでるんですか」



「いや……。少し……考えていた」





アルフレートは——静かに、言った。




「俺の、目には……皆が……"NPC"、と……映る。だが……皆は……"NPC"、なんかでは、ない」




「泣き、笑い……怒り……そして……この、世界を、守るために……命を、賭けて、戦っている」





アルフレートは——静かに、続けた。




「"NPC"、だの……"レベル"、だの……そんな、"表示"、は……何の、意味も……ないのだな」




「大事なのは……その、"表示"、の、向こうに、ある……本当の……"想い"、なのだ」





誠は——微笑んだ。




「そうですね。アルフレート様が……そう、気づけたなら……エリナも……許してくれますよ」





「……そうだと、いいが」




アルフレートは——苦笑した。




「しかし……不思議だ、田中。お前だけは……最初から……"NPC"、とも……"プレイヤー"、とも……表示されない」




「お前は……一体……この、世界に、とって……"何者"、なのだろうな」





誠は——きょとん、とした。




「さあ……。ただの……八百屋の、孫、ですけど……」




「……それも……そうだな」





二人は——顔を、見合わせて——静かに——笑った。





窓の外——ではなく——焚き火の、向こうに——二つの、月が——浮かんでいた。




まだこの時の二人は知らない。この、"表示の、違い"、が——実は……この、世界の……大きな、"秘密"、に……関わっているのかもしれないことを。


そして——それが……いつか……語られる、日が……来るのかも——今はまだ、分からなかった。

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