第225話「瀕死の、報せ」
刻限まで——あと、三日。
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"ガン"、の、完成の、目処は——立たない。
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焦りと、絶望が——皆を——包む中。
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さらなる——凶報が——届いた。
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「田中殿……! 大変です……!」
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一人の、伝令が——血相を、変えて——駆け込んできた。
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「東の……防衛戦線が……!」
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「東の、戦線が……どうしたんですか!」
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誠は——身を、乗り出した。
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「星喰いが……最後の、攻撃の、準備を、しながら……余った、力で……各地の、戦線に……攻撃を……」
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伝令は——息を、切らしながら、続けた。
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「東の、戦線が……その、攻撃で……壊滅、寸前です……!」
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「壊滅、寸前……!」
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「戦線を、守っていた……竜崎、殿の、部隊が……住民を、守るために……最後まで……踏みとどまり……」
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伝令の、声が——震えた。
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「竜崎、殿が……重傷を……負われました……! 今……瀕死の、状態、です……!」
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「竜崎が……!?」
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誠は——愕然と、した。
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すぐに——竜崎が——運ばれてきた。
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その、姿を、見て——誠は——言葉を、失った。
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竜崎の、身体は——ひどく——焼け、爛れていた。
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呼吸は——浅く——今にも——消え入りそう、だった。
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「竜崎……! しっかりしろ……!」
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誠は——駆け寄った。
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「田中……か……」
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竜崎は——薄く——目を、開けた。
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「すまん……。俺……住民を、守るのに……必死で……油断、しちまった……」
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「喋るな! 今……回復させる……!」
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誠は——竜崎の、身体に——手を、当てた。
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「竜崎……! "生きたい"、って……"また、戦いたい"、って……強く、念じろ……!」
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だが——
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「田中……。もう……いいんだ……」
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竜崎は——弱々しく——微笑んだ。
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「俺は……傭兵だ。戦いで、死ぬのは……覚悟の、上さ……」
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「何を、言ってるんだ! 諦めるな!」
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誠は——必死に——叫んだ。
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「竜崎! 君は……戦いが、終わったら……何が、したいって……言ってた!」
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竜崎は——ぼんやりと——誠を、見た。
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「戦いが……終わったら……?」
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「そうだ! 決行前夜……皆で、夢を、語っただろ! 君は……なんて、言ってた!」
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竜崎の、記憶が——蘇る。
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「そう……だな……。俺は……」
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竜崎の、目に——わずかに——光が——戻った。
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「部下を……疫病で、失った、時から……ずっと……傭兵として、戦ってきた……」
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「戦いが、終わったら……もう……誰も、失わない……平和な、場所で……のんびり……暮らしたい……」
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「そうだ! だから……諦めるな! その、夢を……叶えるんだ!」
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誠は——叫んだ。
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「まだ……戦える! まだ……守れる! 立ち上がれ、竜崎!」
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竜崎の、目に——生きようとする——強い、意志が——宿った。
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「そう……だな……。まだ……終われねえ……!」
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「俺は……まだ……皆と……生きるんだ……!」
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その、瞬間。
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——ゴォォォォォォォッ!!!
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誠の、手が——竜崎の、身体を——眩く、光らせた。
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竜崎の——焼け爛れた、身体が——みるみる——癒えていく。
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「治って……いく……!」
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やがて——竜崎は——完全に——回復し——立ち上がった。
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「はぁ……はぁ……。生き……返った……」
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「竜崎……! 良かった……!」
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誠は——安堵に——崩れ落ちそうに、なった。
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だが——この、出来事は。
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皆に——改めて——現実を——突きつけた。
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「田中くん……。竜崎さんは……助かった。でも……」
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桜庭が——静かに、言った。
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「あなたが……その場に、いなかったら……竜崎さんは……死んでた」
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「各地の、戦線で……今も……大勢の、仲間が……あなたの、力なしで……戦ってる……」
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誠は——はっと、した。
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「そうだ……。僕は……一人。全部の、戦線を……守れない……」
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刻限は——迫る。
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戦線は——各地で——崩れかけている。
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そして——"ガン"、は——完成しない。
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絶望的な——状況の中。
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誠は——決断を——迫られていた。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「竜崎が……瀕死の、報せが、届いた。東の戦線で、住民を、守るのに、必死で……重傷を、負って。運ばれてきた、竜崎は……焼け爛れて、今にも、消えそうだった。回復させようと、したけど……竜崎、"もう、いいんだ、傭兵だから"、って、諦めかけてた。だから、叫んだ。"戦いが、終わったら、何がしたいって、言ってた!"、って。竜崎、思い出した。"誰も、失わない、平和な場所で、のんびり、暮らしたい"、って。その、生きようとする、意志で……回復した! 良かった。でも……桜庭さんが、"あなたが、いなかったら、竜崎さんは、死んでた。各地で、今も、大勢が、あなたの力なしで、戦ってる"、って。そうだ。僕は、一人。全部の、戦線を、守れない。刻限は、迫る。戦線は、崩れかけてる。ガンは、完成しない。じいちゃん……僕は……どうすれば……」
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心の中に——二つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この、"一人では、全部を、守れない"、という、絶望こそが——彼を……前線の、中心へと……そして……"答え"、へと……導くことを。
そして——その、答えが……全ての、戦線を……一つに、繋ぐことで……見えてくることも——今はまだ、知る由もなかった。




