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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
覚醒

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第196話「殴れという、頼み」

決意の、朝から——反撃が——始まった。



誠は——皆を——一人ずつ——覚醒させていった。



「グランデルさん! 行きますよ! 全力で……!」



「おう! 来い、田中!」




誠と、グランデルが——がっしりと——組み合う。




全力で——意志を——ぶつけ合う。




——ゴォォォォォッ!





グランデルの——巨体が——さらに——一回り——大きくなった。




「わははは! 力が……みなぎる……! これは、ええわ!」





覚醒した、グランデルは——以前の——何倍もの——怪力を——手に、入れた。




「これなら……スライムを、もっと、速く……運べるで!」






次々と——仲間たちが——覚醒していく。




藤原は——龍の、姿が——さらに、大きく、強くなり——飛ぶ、速度が——上がった。




竜崎は——剣技が——冴え渡り。




森川は——虫人族を——束ねる、力が——増した。





「すごい……! 皆の、力が……どんどん、上がっていく……!」




誠は——手応えを——感じていた。






だが——ある、種族の、覚醒だけは——うまく、いかなかった。




鬼族の、若い、戦士——ゴルドだった。




「田中さん……。俺も……覚醒、させてくれ」




ゴルドは——誠に——頼んだ。





誠と、ゴルドは——組み合った。




「全力で……行くぞ、ゴルド!」



「おう!」




だが——




——シュン……





光が——弱々しく——灯り——すぐに——消えてしまった。




「あれ……? 覚醒、しない……?」





「なんで、だ……! 俺も……皆みたいに……強くなりたいのに……!」




ゴルドは——悔しそうに——歯を、噛んだ。





誠は——考えた。




「おかしいな……。グランデルさんは……覚醒できたのに……」





その時——皆瀬が——ぽつり、と、言った。




「田中くん……。ゴルドさん……"全力"、じゃ、なかったのかも」



「全力じゃ、なかった?」




「うん。なんとなく……感じたの。ゴルドさん……"遠慮"、してた、気が、する」





「遠慮……?」




誠は——ゴルドを、見た。




「ゴルド……。もしかして……僕に……気を、遣って……手加減、してた?」





ゴルドは——気まずそうに——目を、逸らした。




「その……。田中さんは……戦う力の、ない……普通の、人だから……。全力で、ぶつかったら……怪我、させちまうんじゃ、ないかって……」





誠は——はっと、した。




「そうか……。だから……覚醒、しなかったんだ」




「覚醒には……"全力で、向き合う"、ことが……必要なんだ。手加減してたら……発動しない」





「でも……田中さんを……怪我させたく、ないんだ」




ゴルドは——葛藤していた。





「ゴルド」




誠は——静かに、言った。




「気持ちは、嬉しい。でも……僕を、信じて……全力で、来てほしい」




「僕は……大丈夫。だって……僕たちには……"繋がり"、が、あるから」





「繋がり……?」




「うん。全力で、ぶつかっても……僕は、君を、信じてる。君も……僕を、信じてくれ」




誠は——静かに、続けた。




「"全力で、向き合う"、っていうのは……相手を……傷つけることじゃ、ない。相手を……"信じて"、全部を、ぶつけることなんだ」





ゴルドは——誠の、言葉を——静かに、聞いた。




「……分かった。田中さん……もう一度……頼む」




「うん! 今度は……全力で、来い、ゴルド!」





誠と、ゴルドは——再び——組み合った。




今度は——ゴルドも——遠慮なく——全力で——ぶつかってきた。




「うおおおお!」



「はあああ!」





二人の——意志が——真っ向から——ぶつかり合う。




そして——




——ゴォォォォォォォッ!!!





「覚醒、した……!」




ゴルドの、身体が——眩く、光り——力が——みなぎった。




「これだ……! これが……覚醒……!」





「やったな、ゴルド!」




誠は——微笑んだ。




「全力で……向き合ってくれて……ありがとう」





ゴルドは——照れくさそうに——頭を、掻いた。




「いや……。俺の、方こそ……田中さんを……信じきれてなくて……すまなかった」





こうして——誠は——学んだ。




覚醒には——ただ、力を、ぶつけるだけでは——足りない。




互いを——"信じて"——全力で、向き合う。




その、"信頼"、こそが——覚醒の——本当の、鍵なのだ、と。





その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「決意の朝から、皆を、覚醒させ始めた。グランデルさん、藤原さん、竜崎、森川……次々、強くなっていく。でも……鬼族の、若い戦士、ゴルドだけ……覚醒、しなかった。皆瀬さんが、"ゴルドさん、遠慮してた気がする"、って。ゴルドは、"田中さんは、戦う力の、ない、普通の人だから……全力で、ぶつかったら、怪我させちまう"、って、手加減してた。だから……覚醒しなかったんだ。僕は、言った。"僕を、信じて、全力で、来てほしい。全力で、向き合うっていうのは、相手を、傷つけることじゃなくて、相手を、信じて、全部を、ぶつけること"、って。もう一度、ゴルドが、遠慮なく、全力で、来たら……覚醒した! 覚醒には、ただ、力を、ぶつけるだけじゃ、足りない。互いを、信じて、全力で、向き合う。その、信頼こそが……覚醒の、本当の、鍵なんだ。じいちゃん……僕の、力は……"繋がり"、そのものなんだね」



窓の外——裂けた、空と——二つの、月。



まだこの時の誠は知らない。この、"信頼が、覚醒の、鍵"、という、発見が——やがて……皆の、心を、一つに、繋いだ、時……途方もない、力を、生み出すことを。


そして——それこそが……"繋がりで、勝つ"、という……この、戦いの……答えの、核心で、あることも——今はまだ、知る由もなかった。

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