第194話「味方に、使えたら」
皆瀬を——覚醒させ——強化できた。
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その、事実は——大きな、可能性を——示していた。
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もし——この、力を——皆に、使えたら。
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スライムだけでなく——鬼族も、龍族も、虫人族も——皆が——覚醒し——強くなったら。
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「戦況は……大きく……変わるかもしれない」
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誠は——考えた。
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だが——その、ためには——皆を——"殴る"、必要が、ある。
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痛みを——伴う、覚醒。
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誠は——それが——どうしても——踏み切れなかった。
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そんな、誠の、様子を——見て。
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桜庭が——声を、かけた。
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「田中くん。悩んでる、みたいね」
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「桜庭さん……」
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「皆瀬さんから……聞いたわ。あなたの、力の、こと」
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桜庭は——静かに、続けた。
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「私……学者として……一つ、気に、なってることが、あるの」
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「なに?」
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「あなたの、力……本当に……"殴らないと"……発動しないの?」
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「え?」
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誠は——考えた。
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「アルフレート様は……相手が、"応戦"、した、時に……発動する、って……」
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「そう。"応戦"、よね。でも……"応戦"、って……必ずしも……"殴り合い"、だけ、かしら?」
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桜庭は——考えを、巡らせた。
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「皆瀬さんの、時……皆瀬さんは……"来て、田中くん!"、って……あなたに、向かって、きた、でしょう?」
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「うん」
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「それって……"殴られたから"、応戦した、というより……"あなたと、力を、ぶつけ合おう"、とした……その、"意志"、じゃ、ないかしら」
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誠は——はっと、した。
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「意志……!」
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「そう。前に……皆瀬さんが、言ってたでしょう? "生きたい、また戦いたい"、っていう、意志が……"応戦"、みたいに、なった、って」
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桜庭は——静かに、続けた。
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「もしかしたら……大事なのは……"殴る"、ことじゃ、なくて……"全力で、意志を、ぶつけ合う"、こと……なんじゃ、ないかしら」
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誠は——目を——見開いた。
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「そうか……! "殴る"、のは……全力で、意志を、ぶつけ合う……その、"きっかけ"、に、すぎない……!」
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「もし……別の、方法で……お互いの、意志を……全力で、ぶつけ合えれば……殴らなくても……覚醒、できるかもしれない……!」
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「試してみる、価値は、あると思うわ」
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桜庭は——微笑んだ。
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誠は——早速——試してみることに、した。
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竜崎が——協力を——申し出た。
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「俺で、やってみろ、田中。傭兵として……"気合い、勝負"、なら……慣れてる」
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誠と、竜崎は——向かい合った。
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「竜崎! 殴らない。でも……全力で……気持ちを……ぶつけるぞ!」
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「おう! 来い、田中!」
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誠は——竜崎の、両手を——がっしりと、握った。
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そして——全力で——押し合った。
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「うおおおお!」
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「はあああ!」
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二人の——意志が——手を通じて——ぶつかり合う。
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負けまいと——竜崎が——力を、込める。
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誠も——全力で——応える。
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その、瞬間。
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——ゴォォォォォォォッ!!!
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「おお……!?」
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竜崎の、身体が——眩く、光った。
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「これは……! 力が……湧いてくる……!」
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「発動、した……! 殴らなくても……!」
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誠は——歓喜した。
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「握手で……全力で……押し合うだけで……覚醒、できた……!」
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覚醒した、竜崎は——己の、身体を——確かめた。
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「すげえ……! 力が……前の、倍以上に……なってる……! これなら……もっと、戦える……!」
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「良かった……! これなら……仲間を、傷つけずに……覚醒、させられる……!」
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誠の、心から——重い、葛藤が——消えていった。
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「殴る、必要は……なかったんだ。大事なのは……"全力で、意志を、ぶつけ合う"、こと……"全力で、向き合う"、こと……!」
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その、発見は——誠の、力を——"優しさ"、を、保ったまま——使える、ものへと——変えたのだった。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「味方を、覚醒させる、力。でも……"殴る"、のが、嫌で、踏み切れなかった。そしたら……桜庭さんが、"本当に、殴らないと、発動しないの? 大事なのは、殴ることじゃ、なくて、全力で、意志を、ぶつけ合うこと、なんじゃ、ない?"、って。はっと、した。"殴る"、のは、意志を、ぶつけ合う、きっかけに、すぎない。竜崎と、試してみた。殴らないで……両手を、握って、全力で、押し合った。全力で、意志を、ぶつけ合ったら……竜崎が、覚醒した! 力が、倍以上に、なった。殴らなくても、覚醒、できたんだ! 大事なのは、"全力で、向き合う"、こと。仲間を、傷つけずに……覚醒、させられる。心から……重い、葛藤が、消えた。じいちゃん……僕の、力は……優しさを、保ったまま……使えるんだ。これで……皆を、強くできる」
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窓の外——裂けた、空と——二つの、月。
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まだこの時の誠は知らない。彼が、たどり着いた、この、"全力で、向き合えば、覚醒する"、という、力の、本質が——やがて……"皆と、心を、繋いで、覚醒させる"、という……総力戦の、切り札へと……昇華していくことを。
そして——それこそが……"繋がりで、勝つ"、という、答えの……核心で、あることも——今はまだ、知る由もなかった。




