第189話「眠れない、夜」
「繋がりで、勝つ」
⸻
その、方向性は——見えた。
⸻
だが——具体的に——どうすれば、いいのか。
⸻
その、答えが——見えないまま。
⸻
誠は——眠れない、夜を——過ごしていた。
⸻
⸻
「繋がりが……力に、なる……」
⸻
⸻
誠は——寝床で——天井を——見つめた。
⸻
⸻
「でも……どうやって? 心が、繋がってるだけじゃ……敵は……倒せない」
⸻
⸻
⸻
繋がりが——大切なのは——分かる。
⸻
⸻
だが——それを——どう——"敵を、倒す、力"、に——変えるのか。
⸻
⸻
そこが——見えなかった。
⸻
⸻
⸻
「今も……皆の、力を、繋いで、戦ってる。スライムの、レンズ。鬼族の、翼。虫人族の、偵察」
⸻
⸻
誠は——考えた。
⸻
⸻
「これも……"繋がり"、だ。でも……これじゃあ……敵には……追いつけない」
⸻
⸻
「もっと……何か……根本的に、違う……"繋がり"、の、使い方が……あるはずなんだ」
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——寝床を、出て——外に、出た。
⸻
⸻
夜空には——裂けた、空と——無数の、敵。
⸻
⸻
そして——二つの、月が——静かに——輝いていた。
⸻
⸻
⸻
「じいちゃん……。僕は……何を……見落としてるんだろう」
⸻
⸻
誠は——夜空に——語りかけた。
⸻
⸻
⸻
その時——背後から——声が、した。
⸻
⸻
「田中も……眠れんのか」
⸻
⸻
振り向くと——アルフレートが——立っていた。
⸻
⸻
「アルフレート様……」
⸻
⸻
⸻
アルフレートも——誠の、隣に——立ち——夜空を——見上げた。
⸻
⸻
「俺も……ずっと……考えている。"繋がりで、勝つ"、とは……どういうことか」
⸻
⸻
⸻
「アルフレート様でも……分からないんですか」
⸻
⸻
「ああ。俺は……ずっと……"個の、力"、で……戦ってきた、からな」
⸻
⸻
アルフレートは——静かに、続けた。
⸻
⸻
「勇者として……一人で……強敵を……倒してきた。"繋がり"、で、戦う……という、発想が……そもそも……俺には、なかった」
⸻
⸻
⸻
「そうなんですね……」
⸻
⸻
「だが……お前は、違う」
⸻
⸻
アルフレートは——誠を——見た。
⸻
⸻
「お前は……最初から……"繋がり"、で……生きてきた。だから……その、答えを、見つけられるのは……俺では、なく……お前、なのだ」
⸻
⸻
⸻
誠は——アルフレートの、言葉を——静かに、受け止めた。
⸻
⸻
「僕が……」
⸻
⸻
「そうだ。お前が……皆を、繋いできた。その、"繋がり"、を……どう、力に、するか。それは……お前にしか……見つけられない」
⸻
⸻
⸻
⸻
アルフレートは——ふと——空を、指さした。
⸻
⸻
「見ろ、田中。あの、二つの、月を」
⸻
⸻
「二つの……月?」
⸻
⸻
「この、世界には……月が……二つ、ある。だが……なぜ、二つ、あるのか……考えたことは、あるか」
⸻
⸻
⸻
誠は——首を、振った。
⸻
⸻
「いえ……。生まれた、時から……ずっと……二つ、あるのが……当たり前で……」
⸻
⸻
「俺も、だ。だが……最近……ふと、思うのだ」
⸻
⸻
アルフレートは——静かに、続けた。
⸻
⸻
「一つでは……ない。二つで……一組。それが……この、世界の……"当たり前"、なのだ、と」
⸻
⸻
⸻
「二つで……一組……」
⸻
⸻
誠は——その、言葉に——なぜか——引っかかりを、覚えた。
⸻
⸻
スライム族の——言い伝え。
⸻
⸻
「己の、身体と……"対に、なる"、鏡を、用意せよ」
⸻
⸻
二つで——一組。
⸻
⸻
⸻
「なんだか……不思議、ですね」
⸻
⸻
誠は——二つの、月を——見上げた。
⸻
⸻
「この、世界の……色々なところに……"二つで、一組"、とか……"繋がって、意味を、成す"、とか……そういう、ものが……隠れてる、気がします」
⸻
⸻
⸻
「かもしれんな」
⸻
⸻
アルフレートは——静かに、微笑んだ。
⸻
⸻
「答えは……案外……そういう……"当たり前"、の、中に……隠れているのかもしれん」
⸻
⸻
⸻
⸻
その、夜。
⸻
⸻
誠は——結局——答えを——見つけられなかった。
⸻
⸻
だが——心の、どこかで。
⸻
⸻
「繋がり」、と——「二つで、一組」、という、言葉が。
⸻
⸻
静かに——結びつこうと——していた。
⸻
⸻
⸻
その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「眠れない。"繋がりで、勝つ"、方向性は、見えた。でも……具体的に、どうすれば、いいのか、分からない。心が、繋がってるだけじゃ、敵は、倒せない。もっと、根本的に、違う、繋がりの、使い方が、あるはずなのに。外に、出たら……アルフレート様も、眠れなくて……。アルフレート様は、"俺は、個の力で、戦ってきた。繋がりで、戦う発想が、なかった。その答えを、見つけられるのは、繋がりで、生きてきた、お前だ"、って。それに……アルフレート様が、二つの月を、指して、"一つじゃない。二つで、一組。それが、この世界の、当たり前だ"、って。なんだか……引っかかった。スライム族の、言い伝え、"対に、なる、鏡"。二つで、一組。この世界には……"繋がって、意味を、成す"、ものが、隠れてる、気がする。答えは……"当たり前"、の中に、あるのかも。じいちゃん……もう少しで……何か、掴めそうなんだ」
⸻
窓の外——裂けた、空と——静かに、輝く、二つの、月。
⸻
まだこの時の誠は知らない。この、"二つで、一組"、という、世界の、当たり前が——実は……敵を、倒す、答えにも……そして……この、世界の、成り立ちにも……深く、関わっていることを。
そして——その、答えを、掴む日が……もう……すぐ、そこまで……来ていることも——今はまだ、知る由もなかった。




