第188話「それでも、足りぬ」
空中に、留まる——巨大な、レンズ。
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鬼族の、翼と——スライムの、霧の——連携。
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数々の——工夫と、努力によって。
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反撃の、効率は——これまでにない、ほど——上がっていた。
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「今日は……五十、倒せた!」
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「これまでで……最高だ!」
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皆の——士気も——高かった。
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誰もが——「これなら、いけるかもしれない」、と——思い始めていた。
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だが——その、期待は。
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藤原の、偵察報告によって——再び——打ち砕かれた。
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「田中くん……。信じたく、ないけど……」
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藤原は——沈痛な、面持ちで、言った。
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「それでも……敵の、数は……減ってへん」
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「そんな……! 五十も、倒してるのに……!」
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誠は——愕然と、した。
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「敵の、"補充"、は……うちらの、反撃を……常に……上回っとる」
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藤原は——悔しそうに、続けた。
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「うちらが……五十、倒せば……敵は……六十、補充してくる。うちらが……百、倒せるように、なっても……きっと……敵は……百十、補充してくる」
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一同に——重い、沈黙が——流れた。
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「どこまで……効率を、上げても……敵は……それを……上回ってくる……」
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誠は——立ち尽くした。
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どれだけ——工夫しても。
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どれだけ——努力しても。
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敵は——常に——こちらの——"一歩、先"、を——行く。
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「これは……もう……」
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桜庭が——静かに、言った。
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「"効率"、を、上げる、だけじゃ……絶対に……勝てない、ってこと、ね」
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「効率、じゃ……ダメ……」
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誠は——その、言葉を——繰り返した。
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「僕たちは……ずっと……"どうやって、たくさん、倒すか"、ばかり……考えてきた」
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「もっと、大きな、レンズ。もっと、速い、連携。もっと、効率的な、運搬」
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「でも……その、方向じゃ……敵には……勝てないんだ」
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「じゃあ……どうすれば……」
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グランデルが——呟いた。
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誰も——答えられなかった。
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「アルフレート様」
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誠は——アルフレートに——尋ねた。
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「僕たちは……何を……見落としてるんでしょうか」
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アルフレートは——長い、沈黙の、後——静かに、口を、開いた。
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「田中。以前……俺は、言ったな。"敵の、想定を、超える、別の、何かが、必要だ"、と」
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「はい」
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「それは……今も……変わらん。だが……一つ……分かったことが、ある」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「敵は……"数"、で……勝負している。ならば……俺たちが……"数"、で……対抗する、限り……勝てん」
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「数で……対抗する、限り……」
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誠は——考え込んだ。
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「じゃあ……数、以外の……"何か"、で……勝負しないと……」
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「そうだ」
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アルフレートは——頷いた。
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「敵に、できなくて……我々に、できること。敵が、持っていなくて……我々が、持っているもの」
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「それを……見つけ出し……それで……勝負するのだ」
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「敵が……持っていなくて……僕たちが、持っているもの……」
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誠は——考えを、巡らせた。
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敵は——数、無限。太陽の、エネルギー。金属の、身体。
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対して——僕たちは。
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「僕たちには……"心"、が、ある。"繋がり"、が、ある」
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誠は——ぽつり、と、言った。
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「あの、金属の、敵には……ない、もの……」
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その、言葉に——アルフレートは——静かに、微笑んだ。
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「そうかもしれん。その、"繋がり"、が……どう、力に、なるのか。それを……見つけ出せた、時……」
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「我々は……初めて……勝機を……掴めるのかもしれん」
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まだ——具体的な、答えは——見えない。
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だが——誠の、中で——一つの、確信が——芽生えつつあった。
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勝利の、鍵は——"力"、でも——"数"、でも、ない。
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自分たちが——ずっと——大切にしてきた——"繋がり"、の中に、ある、のだ、と。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「一日に、五十も、倒せるように、なった。皆、"これなら、いける"、って、思ってた。でも……藤原さんが、"それでも、敵の数は、減ってへん"、って。うちらが、五十、倒せば、敵は、六十、補充する。百、倒せるように、なっても、敵は、百十、補充する。どこまで、効率を、上げても、敵は、それを、上回ってくる。桜庭さんが、"効率を、上げるだけじゃ、絶対に、勝てない"、って。そうだ。僕たちは、ずっと、"どうやって、たくさん、倒すか"、ばかり、考えてきた。でも、その方向じゃ、勝てないんだ。アルフレート様が、"敵は、数で、勝負してる。数で、対抗する限り、勝てん。敵が、持ってなくて、我々が、持ってるもので、勝負しろ"、って。僕たちには……"心"、が、ある。"繋がり"、がある。あの、金属の、敵には、ないもの。勝利の鍵は……力でも、数でもなく……繋がりの、中に、あるんだ。じいちゃん……そんな、気が、してきたよ」
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窓の外——裂けた、空。
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まだこの時の誠は知らない。彼が、たどり着きかけた、"繋がりで、勝つ"、という、答えが——本当に……この、戦いの……"核心"、で、あることを。
そして——その、"繋がり"、を……最大限に、引き出す、鍵が……彼、自身の……"覚醒"、の、力で、あることも——今はまだ、知る由もなかった。




