第180話「増える、光点」
「力任せでは……勝てないのかもしれない」
⸻
その、思いを——抱えたまま。
⸻
それでも——誠たちは——戦い続けるしか、なかった。
⸻
戦いを、やめれば——その、瞬間に——焼かれてしまうのだから。
⸻
⸻
だが——事態は——さらに——悪化していた。
⸻
⸻
「田中くん……。見て。空の……敵の、光……」
⸻
⸻
皆瀬が——不安げに、揺れた。
⸻
⸻
⸻
誠は——空を——見上げた。
⸻
⸻
そして——気づいた。
⸻
⸻
「光の点が……増えてる……?」
⸻
⸻
⸻
以前よりも——明らかに。
⸻
⸻
空に——浮かぶ——敵の、"光"、の、数が——増えていた。
⸻
⸻
「補充が……追加を、上回ってる……。少しずつ……敵が……増えてるんだ……」
⸻
⸻
⸻
桜庭が——難しい、顔で、言った。
⸻
⸻
「これまでは……敵の、数は……"維持"、されてた。でも……今は……"増加"、に、転じてる」
⸻
⸻
「私たちの、反撃を……上回る、速さで……敵が……増えていってるの」
⸻
⸻
⸻
誠は——ぞくり、とした。
⸻
⸻
「なんで……急に……増え始めたんだ」
⸻
⸻
⸻
「分からない。でも……」
⸻
⸻
桜庭は——空を——見上げた。
⸻
⸻
「敵が……"何か"、の……準備を、進めているのかも、しれない」
⸻
⸻
「その、"準備"、のために……敵の、数を……増やしている……?」
⸻
⸻
⸻
「準備……」
⸻
⸻
誠は——アルフレートの、言葉を——思い出した。
⸻
⸻
「今の、攻撃は……小手調べ。本当の、狙いは……別に、ある……」
⸻
⸻
⸻
「まさか……敵は……いよいよ……その、"本当の、狙い"、の、ために……動き始めてるのか……?」
⸻
⸻
誠は——戦慄した。
⸻
⸻
⸻
⸻
その、証拠のように。
⸻
⸻
藤原が——偵察から——戻ってきて——報告した。
⸻
⸻
「田中くん……。敵の、様子が……変わってきとる」
⸻
⸻
「変わってきてる?」
⸻
⸻
「うん。前は……バラバラに……攻撃してきてた。でも……今は……敵が……少しずつ……"向き"、を……揃えていってるんや」
⸻
⸻
⸻
「向きを……揃える……」
⸻
⸻
誠は——はっと、した。
⸻
⸻
以前も——藤原が——同じことを——言っていた。
⸻
⸻
だが——今回は——それが——さらに——進んでいるようだった。
⸻
⸻
⸻
「前より……はっきり……分かる。敵が……ある、"一点"、に……向かって……鏡の、面を……揃えていってるんや」
⸻
⸻
藤原は——深刻な、顔で、続けた。
⸻
⸻
「まるで……全部の、敵で……一つの……"大きな、何か"、を……作ろうと、してるみたいに」
⸻
⸻
⸻
一同に——緊張が——走った。
⸻
⸻
「全部の、敵で……一つの、大きな、何か……」
⸻
⸻
⸻
誠は——これまでの、断片を——繋ぎ合わせた。
⸻
⸻
敵は——太陽光を——集める。
⸻
⸻
無数の——鏡の、面を、持つ。
⸻
⸻
それを——一点に——揃えていく。
⸻
⸻
⸻
「まさか……」
⸻
⸻
誠は——ある、恐ろしい、可能性に——思い至った。
⸻
⸻
「敵が……全部の、鏡を……一点に、向けて……とてつもない……大きな、光を……集めようと、してる……?」
⸻
⸻
⸻
桜庭が——青ざめた。
⸻
⸻
「もし……そうなら……。私たちの、レンズなんて……比べ物に、ならない……規模の……光が……」
⸻
⸻
「そんなものを……撃たれたら……」
⸻
⸻
⸻
誠は——ぞっと、した。
⸻
⸻
「一体……何を……焼くつもりなんだ……」
⸻
⸻
⸻
だが——その、答えは——まだ——見えなかった。
⸻
⸻
敵が——何を、狙って——その、"大きな、光"、を——集めようと、しているのか。
⸻
⸻
⸻
「とにかく……敵が……その、準備を……完了する、前に……」
⸻
⸻
誠は——焦りを、感じた。
⸻
⸻
「何とか……しないと……」
⸻
⸻
「でも……どうやって……あの、無数の、敵を……」
⸻
⸻
⸻
増え続ける——敵。
⸻
⸻
進む——不気味な、"準備"。
⸻
⸻
そして——見えない——"本当の、狙い"。
⸻
⸻
絶望は——刻一刻と——深まっていった。
⸻
⸻
⸻
その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「空の、敵の、光の、点が……増えてる。今までは、数が、維持されてたのに……今は、増加に、転じてる。僕たちの、反撃を、上回る、速さで。桜庭さんは、"敵が、何かの、準備を、進めてるのかも"、って。それに……藤原さんが、"敵が、ある、一点に、向かって、鏡の面を、揃えていってる。全部の敵で、一つの、大きな、何かを、作ろうと、してるみたいに"、って。まさか……敵が、全部の、鏡を、一点に、向けて……とてつもない、大きな、光を、集めようと、してるのか。そんなものを、撃たれたら……。一体、何を、焼くつもりなんだ。まだ、分からない。でも……敵が、その準備を、完了する前に……何とか、しないと。でも……どうやって、あの、無数の、敵を……。じいちゃん……絶望が、深まっていく。時間が……ないんだ」
⸻
窓の外——裂けた、空と——増え続け、向きを、揃えていく、無数の、敵。
⸻
まだこの時の誠は知らない。敵が、集めようとしている、その、"大きな、光"、が——一体、何を……焼こうと、しているのかを。
そして——その、標的が……村でも、国でもなく……この……"星"、そのもので、あることも——今はまだ、知る由もなかった。




