第178話「追いつかない」
誠の——"回復"、の、力。
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それは——確かに——スライムたちの、消耗を——大きく、和らげた。
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「田中くんが、いてくれるから……何度でも、戦える!」
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皆瀬たちは——焦げても——誠が、回復させれば——また、レンズに、なれた。
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反撃の、効率は——格段に——上がった。
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一日に——撃ち落とせる、敵の、数も——増えていった。
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「今日は……十、倒せた!」
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「昨日より……多いな!」
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皆の、士気も——上がっていった。
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誠の、回復の、力は——確かに——大きな、突破口だった。
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だが——ある日。
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藤原が——偵察から、戻り——深刻な、顔で、告げた。
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「田中くん……。あかん、かもしれへん」
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「え? どうしたの、藤原さん」
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「敵の、数……減ってへんのや」
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「え……?」
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誠は——愕然と、した。
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「でも……毎日……十以上、倒してるのに……」
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「それが……あかんのや」
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藤原は——悔しそうに、続けた。
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「うちらが……一つ、倒すたびに……敵は……後ろから……新しいのを……"補充"、してくる」
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「補充……!」
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「そうや。空の……ずっと、奥から……次々と……新しい、敵が……湧いてくる。うちらが、倒す、数より……補充される、数の、方が……多いんや」
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誠は——言葉を——失った。
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「じゃあ……いくら、倒しても……」
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「敵の、数は……減るどころか……むしろ……少しずつ……増えとる」
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一同に——重い、絶望が——広がった。
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「そんな……。あれだけ、頑張って……回復の、力も、見つけて……」
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「なのに……敵の、数は……増えてる……?」
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誠は——愕然と——立ち尽くした。
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回復の、力で——消耗は——抑えられた。
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反撃の、効率も——上がった。
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だが——それでも——敵の、"数"、には——全く——追いつかなかった。
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「これじゃあ……いつまで、経っても……終わらない……」
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誰かが——ぽつり、と、呟いた。
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その、言葉が——皆の、心に——重く——のしかかった。
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「田中」
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アルフレートが——静かに、言った。
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「これは……我々の、"やり方"、の……限界かもしれん」
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「限界……」
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「一つずつ……撃ち落とす。それでは……補充の、速度に……追いつけん」
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アルフレートは——険しい、顔を、した。
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「もっと……"一度に、大量に"、倒せる……方法が……必要だ」
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「一度に、大量に……」
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誠は——考え込んだ。
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「今は……一つの、レンズで……一つの、敵を、狙ってる。でも……もし……もっと、大きな、レンズで……もっと、強い、光を……」
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「一度に……複数の、敵を……巻き込めれば……」
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桜庭が——後を、続けた。
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「でも……それには……今の……何倍もの、規模の、レンズが……必要になるわ」
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「何倍もの……規模……」
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誠は——スライムたちを——見た。
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今でも——大勢の、スライムが——一つの、レンズに、なっている。
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それを——さらに、何倍にも——大きくする。
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「もっと……たくさんの、スライムを……集めないと……」
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「田中くん」
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皆瀬が——静かに、言った。
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「私たちの、仲間……まだ、たくさん、いるの。各地の、湿地に……散らばって、暮らしてる」
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「その、皆に……呼びかければ……もっと、大きな、レンズに……なれるかもしれない」
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「本当!?」
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誠は——希望を——見出した。
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「じゃあ……各地の、スライムに……協力を、呼びかけよう! もっと、大きな、レンズを……作るために!」
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だが——同時に——誠は——思った。
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(でも……それでも……追いつくのか)
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(敵は……無限に、補充されてくる)
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(一体……どこまで……大きくすれば……)
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「僕の、回復の、力で……スライムの、消耗は、抑えられた。反撃の、効率も、上がって、一日に、十以上、倒せるように、なった。でも……藤原さんが、偵察から、戻って、言った。"敵の数が、減ってへん"、って。僕たちが、一つ、倒すたびに……敵は、後ろから、新しいのを、補充してくる。倒す数より、補充される数の方が、多い。だから、敵は、減るどころか……増えてる。愕然と、した。回復の力を、見つけて、効率も、上がったのに……敵の数には、全然、追いつかない。アルフレート様が、"一つずつ、撃ち落とすやり方の、限界だ。一度に、大量に、倒せる方法が、必要だ"、って。もっと、大きな、レンズを、作る。皆瀬さんが、"各地に、散らばってる、スライムに、呼びかければ、もっと、大きくなれる"、って。希望は、ある。でも……それでも、追いつくのか。敵は、無限に、補充されてくる。じいちゃん……どこまで、やれば、いいんだ」
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窓の外——裂けた、空と——変わらず、果てしなく、浮かぶ、無数の、敵。
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まだこの時の誠は知らない。敵が、"無限に、補充される"、その、仕組みの、裏に——敵の、本当の、目的が……隠されていることを。
そして——"数の、壁"、を、越える、本当の、答えが……力任せの、大きさ、ではなく……別の、ところに、あることも——今はまだ、知る由もなかった。




