第167話「レンズ、という発想」
敵の、目的は——依然、謎のまま。
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だが——反撃の、準備は——着実に、進めねばならなかった。
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「敵が……太陽光を、集めて……撃ってくる。なら……僕たちも……同じことを、する」
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誠は——スライムの、"鏡"、の、開発に——本腰を、入れた。
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「皆瀬さん。スライムの、皆さんが……太陽の光を……集める。それを……敵に……撃ち返す」
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「そのために……どんな、形に、なれば、いいか……一緒に、考えよう」
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皆瀬は——静かに、揺れた。
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「うん……。でも……"光を、集める"、って……どうやれば、いいのかな」
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その時——桜庭が——口を、開いた。
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「それなら……"レンズ"、の、原理が、使えるわ」
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「レンズ?」
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桜庭は——地面に——絵を、描き始めた。
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「太陽の光を……一点に、集めるには……二つの、方法が、あるの」
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「一つは……"凹面鏡"。凹んだ、鏡で……光を、反射させて、集める」
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「もう一つは……"レンズ"。透明な、材質を……通して……光を、屈折させて、集める」
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「透明な、材質を……通して……」
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誠は——はっと、した。
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「スライムの、皆さんの、身体は……透明だ……!」
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「そう!」
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桜庭は——目を、輝かせた。
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「スライム族の、身体は……透明で……光を、通す。だから……"レンズ"、に……なれるのよ!」
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「皆で、集まって……大きな、"レンズ"、の、形に、なれば……太陽の光を……一点に……集められる!」
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皆瀬は——驚いたように——揺れた。
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「私たちが……"レンズ"、に……?」
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「うん! 皆瀬さんたちの、透明な、身体は……そのために……あるのかもしれない!」
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誠は——興奮して、続けた。
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「"己の、身体と……対に、なる、鏡を、用意せよ"……あの、言い伝え」
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「もしかしたら……"鏡"、っていうのは……厳密には……"レンズ"、のこと、だったのかもしれない」
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「スライム族の、透明な、身体そのものが……光を、集める……"レンズ"、に、なる……!」
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一同に——興奮が——走った。
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「そうか……! だから……"己の、身体"、なんだ……!」
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「スライム族の、身体、そのものが……武器に、なる……!」
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長年——謎だった——スライム族の、言い伝え。
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「己の、身体と、対に、なる、鏡を、用意せよ」
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その、本当の、意味が——今——解き明かされた。
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スライム族が——自らの、透明な、身体で——巨大な、レンズと、なり——太陽の光を、集める。
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「よし……! これで……方向性が、見えた!」
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誠は——皆を、見渡した。
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「スライムの、皆さんが……集まって……大きな、"レンズ"、に、なる。太陽の光を……一点に、集めて……敵に、撃ち返す」
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「これが……僕たちの……反撃の、形だ!」
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だが——皆瀬は——不安げに、揺れた。
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「でも……そんな、大きくて……綺麗な、"レンズ"、の、形に……皆で、なれるかな。少しでも……歪んだら……光は、集まらない、でしょう?」
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「その通りだ」
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桜庭が——頷いた。
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「レンズは……ほんの、少しの、歪みでも……光が、ちゃんと、集まらなくなる。かなり……精密な、"形"、が……必要になるわ」
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「それは……練習あるのみ、だね」
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誠は——静かに、言った。
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「じいちゃんの、教えの、通り……地道に……丁寧に……。皆で、力を、合わせて……完璧な、"レンズ"、を……作り上げよう」
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反撃の、"形"、が——ついに——見えてきた。
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あとは——それを——実現するための——地道な、努力、だった。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「反撃の、準備を、進めた。桜庭さんが、教えてくれた。光を、一点に、集めるには、"凹面鏡"、か、"レンズ"、の、原理を、使う。レンズは……透明な材質を、通して、光を、屈折させて、集める。そこで、閃いた。スライム族の、身体は、透明だ。だから……"レンズ"、に、なれる。皆で、集まって、大きな、レンズの、形に、なれば……太陽の光を、集められる。そして……気づいた。あの、言い伝え、"己の、身体と、対に、なる、鏡を、用意せよ"。"鏡"、っていうのは、厳密には、"レンズ"、のこと、だったのかもしれない。スライム族の、透明な、身体そのものが……光を、集める、レンズに、なる。だから、"己の、身体"、なんだ。長年の、謎が……解けた。反撃の、形が、見えてきた。あとは……地道に、丁寧に、完璧な、レンズを、作り上げるだけ。じいちゃん……ついに、ここまで、来たよ」
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窓の外——裂けた、空。
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まだこの時の誠は知らない。スライム族が、巨大な、"レンズ"、に、なる、という、この、反撃が——本当に……敵に、通用するのかを。
そして——それが……敵、自身の、"仕組み"、を……そっくり、そのまま……逆に、利用する、ものであることも——今はまだ、知る由もなかった。




