第166話「アルフレートの、疑問」
敵が——太陽光を、集めて——攻撃している。
⸻
その、推理は——皆に——衝撃を、与えた。
⸻
だが——アルフレートだけは——何か——別のことを——考え込んでいた。
⸻
「アルフレート様? どうしたんですか」
⸻
⸻
誠が、尋ねると——アルフレートは——静かに、口を、開いた。
⸻
⸻
「田中。一つ……妙なことが、ある」
⸻
「妙なこと?」
⸻
⸻
「敵は……太陽光を、集めて……攻撃している。それは……分かった。だが……」
⸻
⸻
アルフレートは——裂けた、空を——見上げた。
⸻
⸻
「なぜ……敵は……"急がない"、のだ」
⸻
⸻
⸻
「急がない……?」
⸻
⸻
誠は——首を、傾げた。
⸻
⸻
「考えてもみろ」
⸻
⸻
アルフレートは——静かに、続けた。
⸻
⸻
「敵は……数十万。エネルギーは……無限。その気に、なれば……この、世界を……もっと、早く……焼き尽くせるはずだ」
⸻
⸻
「なのに……敵は……北から、順番に……少しずつ……焼いている」
⸻
⸻
⸻
誠は——はっと、した。
⸻
⸻
「言われてみれば……。あれだけの、力が、あるなら……一気に……全部を……」
⸻
⸻
「そうだ。なのに……敵は……"時間"、を、かけている」
⸻
⸻
アルフレートは——腕を、組んだ。
⸻
⸻
「まるで……何か……"別の、準備"、を……しているかのように」
⸻
⸻
⸻
一同が——考え込んだ。
⸻
⸻
「別の、準備……」
⸻
⸻
桜庭が——呟いた。
⸻
⸻
「そういえば……藤原さんが、言ってたわね。敵が……少しずつ……"向き"、を……ある、一点に……揃えていってる、って」
⸻
⸻
⸻
「一点に……向きを、揃える……」
⸻
⸻
誠は——考え込んだ。
⸻
⸻
「太陽光を、集める、表面を……一点に……向けていってる……」
⸻
⸻
「それって……まさか……」
⸻
⸻
⸻
アルフレートが——静かに、言った。
⸻
⸻
「今の、攻撃は……あくまで……"小手調べ"、なのかもしれん」
⸻
⸻
「本当の、狙いは……別に、ある。そのために……敵は……"準備"、を、進めている」
⸻
⸻
⸻
誠は——ぞくり、とした。
⸻
⸻
「本当の……狙い……」
⸻
⸻
「それが、何なのかは……まだ、分からん。だが……」
⸻
⸻
アルフレートは——険しい、顔を、した。
⸻
⸻
「敵が……"準備"、を、完了する、前に……こちらの、反撃を……間に合わせねば、ならん」
⸻
⸻
⸻
「そうですね……。急がないと」
⸻
⸻
誠は——決意を、新たにした。
⸻
⸻
⸻
「それにしても……」
⸻
⸻
アルフレートは——ふと——別の、疑問を——口にした。
⸻
⸻
「敵は……なぜ……この、世界を……焼こうと、しているのだ」
⸻
⸻
「え?」
⸻
⸻
「意志を、持つ、以上……何か……"目的"、が、あるはずだ。だが……その、目的が……まるで……見えん」
⸻
⸻
⸻
誠も——考え込んだ。
⸻
⸻
「言われてみれば……。なんで、僕たちの、世界を……攻撃するんだろう」
⸻
⸻
「僕たち……敵に、何か、したのかな。恨まれる、ようなこと……」
⸻
⸻
⸻
「いや……」
⸻
⸻
アルフレートは——首を、振った。
⸻
⸻
「あれほどの、力を、持つ、"何か"、が……なぜ……こんな……辺境の、世界を、狙うのか」
⸻
⸻
「そこに……何か……大きな、"理由"、が、あるはずだ」
⸻
⸻
⸻
だが——その、答えは——誰にも——分からなかった。
⸻
⸻
「敵の、目的……。それが、分かれば……もっと……対処の、しようが、あるのに」
⸻
⸻
誠は——静かに、呟いた。
⸻
⸻
⸻
「田中。焦っても……仕方ない」
⸻
⸻
アルフレートは——静かに、言った。
⸻
⸻
「今は……できることを……一つずつ、だ。敵の、目的は……いずれ……明らかになる。それまでは……反撃の、準備を……着実に、進めよう」
⸻
⸻
「はい」
⸻
⸻
⸻
敵の、目的。本当の、狙い。
⸻
⸻
謎は——深まる、ばかり。
⸻
⸻
だが——誠たちは——今、できることを——着実に、進めるしか、なかった。
⸻
⸻
⸻
その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「アルフレート様が、妙なことに、気づいた。"敵は、なぜ、急がないのか"、って。数十万で、エネルギーは、無限なら……もっと、早く、世界を、焼き尽くせるはず。なのに、北から、順番に、少しずつ、焼いてる。まるで、何か、"別の準備"、をしてるみたいに。藤原さんが、言ってた、"敵が、向きを、一点に、揃えていってる"、のと……関係が、あるのかもしれない。今の攻撃は、"小手調べ"、で……本当の、狙いは、別にある、って。それに……アルフレート様は、こうも言った。"敵は、なぜ、この世界を、焼こうとしてるのか。目的が、見えん"、って。確かに……なんで、僕たちの、世界を、狙うんだろう。恨まれる、ようなこと、したのかな。分からない。じいちゃん……謎が、深まるばかりだ。でも……今は、できることを、一つずつ、進めるしか、ない」
⸻
窓の外——裂けた、空と——一点に、向きを、揃えていく、無数の、敵。
⸻
まだこの時の誠は知らない。敵が、進めている、"別の、準備"、が——一体、何であるのかを。
そして——敵が、この、世界を、狙う、"本当の、理由"、が……あまりにも……理不尽で……そして、哀しいもので、あることも——今はまだ、知る由もなかった。




