第164話「一色の、焦り」
レールガンが——限界を——迎えた。
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その、現実は——誰よりも——一色を——苦しめていた。
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「私の……レールガンが……役に、立たない……」
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帝都の、執務室で——一色は——一人——うなだれていた。
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長年——彼女は——レールガンを——己の、全てとして——生きてきた。
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孤独な——皇帝の、座で。
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レールガン、一つが——彼女の——誇りであり——拠り所だった。
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「あれだけ……備えてきたのに……」
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一色は——設計図を——握りしめた。
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「この、日のために……ずっと……レールガンを、作り続けてきたのに……」
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「肝心な、時に……届かない……砲身が、砕ける……」
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焦りが——一色を——追い詰めていた。
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「もっと……もっと、良い、レールガンを……作らないと……」
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一色は——寝る間も、惜しんで——改良に——没頭した。
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新しい、素材。新しい、設計。射程を、伸ばし——砲身が、砕けない——強靭な、レールガン。
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だが——どれだけ——試みても。
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「駄目……。射程を、伸ばせば……砲身が、持たない。砲身を、強くすれば……重すぎて、動かせない……」
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一色は——次第に——憔悴していった。
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食事も、取らず。眠りもせず。
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ただ——レールガンの、改良にのみ——没頭し続けた。
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「私が……なんとか、しないと……。私の、レールガンが……皆を、救わないと……」
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その、思いが——一色を——さらに——追い詰めた。
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そんな、一色のもとに——ある日——誠が——訪ねてきた。
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「一色さん!」
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執務室に——踏み込んだ、誠は——一色の、姿を、見て——絶句した。
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やつれ果て——目の下に——濃い、隈を、作った——一色。
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「一色さん……! どうしたんですか、その、姿……!」
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「田中……くん……」
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一色は——虚ろな、目で——誠を、見た。
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「ごめん……なさい。私の、レールガンが……役に、立たなくて……」
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「もっと……良いのを、作らないと……皆を、救えないの……」
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誠は——はっと、した。
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一色は——たった一人で——全ての、責任を——背負い込んでいた。
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「レールガンで、皆を、救わなければ」、という——重圧に——押し潰されそうに、なっていた。
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「一色さん」
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誠は——静かに、しかし——はっきりと、言った。
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「あなたは……もう、十分……やってくれました」
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「でも……レールガンは……届かない……」
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「レールガンだけで……皆を、救おうと、しなくて、いいんです」
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誠は——優しく、続けた。
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「あなた、一人で……背負わなくて、いい。皆が……いるんですから」
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一色は——はっと、した。
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「一人で……背負わなくて……」
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「はい。レールガンが、届かないなら……スライムの、鏡が、ある。鏡が、足りないなら……龍族が、鬼族が、運ぶ」
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誠は——静かに、続けた。
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「一つの、力で、全部を、なんとか、しようと、するから……苦しくなる。でも……皆で、力を、合わせれば……足りない、ところを……補い合える」
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一色の、目に——涙が——滲んだ。
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「私……ずっと……一人で……レールガンだけで……」
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「もう……一人じゃ、ないんですよ」
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誠は——優しく、微笑んだ。
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「あなたの、レールガンは……確かに、道を、示してくれた。"敵に、届く"、って、証明してくれた。それは……無駄じゃ、ない」
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「あとは……皆で……その、続きを……考えれば、いい」
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一色は——静かに——涙を、拭った。
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「田中くん……。ありがとう……」
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「私……ずっと、一人で、頑張らなきゃ、って……思い込んでた……」
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「でも……そうじゃ、なかったのね」
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「はい。一緒に……頑張りましょう。皆で」
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誠は——手を——差し伸べた。
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一色は——その、手を——静かに、握った。
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「……うん。ありがとう、田中くん」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「一色さんを、訪ねたら……やつれ果てて、いた。レールガンが、役に立たない、って……一人で、全部の、責任を、背負い込んで……食事も、睡眠も、忘れて……改良に、没頭してた。"私の、レールガンが、皆を、救わないと"、って。だから、僕は、言った。"一人で、背負わなくて、いい。皆が、いる。一つの力で、全部を、なんとか、しようとするから、苦しくなる。皆で、力を合わせれば、補い合える"、って。一色さんは、泣いてた。"ずっと、一人で、頑張らなきゃ、って、思い込んでた"、って。でも……もう、一人じゃない。一色さんの、レールガンは、"敵に届く"、って、証明してくれた。それは、無駄じゃない。あとは……皆で、続きを、考える。じいちゃん……一色さんも、また一つ……"繋がり"、を、知ってくれた気が、するんだ」
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窓の外——裂けた、空。
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まだこの時の誠は知らない。一色が、この、"一人で、背負わない"、ことを、学んだ、ことが——やがて……彼女を……そして……この、戦いを……救うことに、なることを。
そして——彼女の、レールガンが……いつか……思いもよらぬ、形で……"答え"、に、繋がることも——今はまだ、知る由もなかった。




