第162話「射程の、壁」
スライムたちが——群れて、大きな鏡になる。
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その、試みが——始まった。
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だが——その前に——もう一つ——確かめておくべきことが、あった。
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「鏡を……敵の、近くまで、運ぶ。でも……どれくらいの、距離まで、近づけるのか」
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誠は——考えた。
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「敵は……高いところに、いる。龍族や、鬼族が……鏡を……どこまで、運べるのか。それが、分からないと……作戦が、立てられない」
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そこで——まず——距離の、検証が——行われた。
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藤原が——スライムを、乗せた——"担架"、を、掴み——空へ、上がっていく。
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「田中くーん! どこまで、上がったら、ええ?」
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「無理しない、範囲で! 光の柱に……撃たれない、高さまで!」
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藤原は——ぐんぐんと——上昇していった。
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だが——ある、高度で——止まった。
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「あかん……! ここが、限界や! これ以上、上がったら……光の柱の、射程に、入ってまう!」
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藤原が——鏡を、運べる、限界の、高度。
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そこから——敵までの、距離を——桜庭が、計算した。
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「うーん……。まだ、かなり……遠いわね」
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「遠い……?」
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「そう。藤原さんが、運べる、限界の、高さから……敵までは……まだ、相当な、距離が、あるの」
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桜庭は——難しい、顔を、した。
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「この、距離で……鏡が……敵の、光を……跳ね返せるのか。それが……問題ね」
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誠は——考え込んだ。
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「敵の、近くまで、運べれば……確実に、跳ね返せる。でも……近づきすぎると……光の柱に、撃たれる」
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「かといって……遠すぎると……跳ね返せるか、分からない」
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「まさに……"射程の、壁"、やな」
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藤原が——ため息を、ついた。
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だが——ここで——皆瀬が——ある、ことに、気づいた。
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「あのね、田中くん。私たちの、身体……光を、跳ね返す、だけじゃ、なくて……」
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「うん?」
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「光を……"集める"、ことも……できるかもしれないの」
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「光を……集める?」
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誠は——はっと、した。
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以前——皆瀬が、言った、言葉。
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「光を、反射する、身体を……たくさん、集めて……光を、一点に……集めたら……」
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「そうか……! 鏡が……曲面に、なれば……!」
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誠は——閃いた。
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「平らな、鏡は……光を、まっすぐ、跳ね返す。でも……鏡を……"曲げて"……凹んだ、形に、すれば……」
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「光を……一点に……集められる……!」
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桜庭が——目を、輝かせた。
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「そうよ! 凹面鏡の、原理! 光を、一点に、集めれば……跳ね返す、力が……ずっと、強くなる!」
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「遠くからでも……集めた、光なら……敵に……届くかもしれない!」
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一同に——興奮が——走った。
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「スライムが……群れて……"曲面の、鏡"、に、なる……!」
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「そうすれば……光を、集めて……強力な、反撃に……!」
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誠は——胸が——高鳴った。
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「これだ……! スライムの、皆さんが……集まって……"光を、集める、鏡"、に、なる!」
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「そうすれば……射程の、壁も……越えられるかもしれない!」
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だが——皆瀬は——少し——不安げに、揺れた。
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「でも……そんな、大きくて……複雑な、形に……皆で、なれるかな。やったこと、ないから……」
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「大丈夫」
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誠は——優しく、言った。
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「焦らず……少しずつ……練習していこう。じいちゃんも、言ってた。"地味なことを……丁寧に、続けろ"、って」
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「一つずつ……試していけば……きっと……できるようになる」
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「射程の、壁」、を——越えるための——新たな、挑戦が——始まろうとしていた。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「スライムの、鏡を、試す前に……距離を、検証した。藤原さんが、鏡を、運べる、限界の、高さから……敵までは、まだ、遠い。この距離で、跳ね返せるか……"射程の壁"、が、問題だ。でも……皆瀬さんが、気づいた。私たちの身体は、光を、跳ね返すだけじゃなくて、"集める"、こともできるかも、って。それで、僕は、閃いた。鏡を、曲げて、凹んだ形にすれば……光を、一点に、集められる。桜庭さんが、"凹面鏡の原理! 集めた光なら、遠くからでも、届くかも"、って。スライムが、群れて、"光を集める、大きな鏡"、に、なる。そうすれば、射程の壁を、越えられるかもしれない。皆瀬さんは、不安that がってたけど……焦らず、少しずつ、練習していけば、きっと、できる。じいちゃん……また、一歩、前進だ」
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窓の外——裂けた、空。
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まだこの時の誠は知らない。この、"光を、集める、鏡"、という、発想が——やがて……敵に、致命傷を、与える……大きな、武器に、なることを。
そして——それが……皮肉にも……敵、自身が、使っている、"仕組み"、と……同じ、原理で、あることも——今はまだ、知る由もなかった。




