第157話「整然と、並ぶ光」
空から、敵を、見てきた——誠。
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その、報告を、受けて——桜庭が——動き始めた。
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「田中くん。藤原さんと、虫人族の、偵察情報……全部、まとめてみたの」
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桜庭は——大きな、地図を——広げた。
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そこには——敵の、配置が——精密に——記されていた。
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「これを、見て。敵の、配置……ただ、規則的なだけじゃ、ないの」
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桜庭は——地図を——指し示した。
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「よく、見ると……いくつかの、"層"、に……分かれてるのよ」
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「層……?」
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誠は——地図を——覗き込んだ。
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「一番、下の、層……地上に、近い、ところに、いる、敵は……"光の柱"、を、撃ってくる、やつ」
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桜庭は——説明を、続けた。
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「でも……その、上の、層……もっと、高いところに、いる、敵は……攻撃してこない」
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「攻撃してこない?」
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「そう。ただ……浮かんでるだけ。何も、してこないの」
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桜庭は——首を、傾げた。
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「なぜ……上の、層の、敵は……攻撃しないのかしら」
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一同が——考え込んだ。
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「もしかしたら……役割が……違う、のかもしれない」
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誠が——呟いた。
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「下の、層は……"攻撃"、担当。上の、層は……別の、"何か"、の……担当」
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「別の、何か……」
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桜庭が——考え込んだ。
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「上の、層の、敵は……確か……藤原さんが、言ってた、"鏡みたいに、光を、反射してた"、やつよね」
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「あ……」
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誠は——はっと、した。
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下の、層——攻撃してくる、敵。
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上の、層——反射する、表面を、持ち、攻撃してこない、敵。
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「役割が……分かれてる……」
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「田中」
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アルフレートが——静かに、言った。
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「敵に……"役割分担"、が、ある、ということは……」
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「はい」
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「あれは……ますます……ただの、"仕掛け"、では、ない。明確な、"意志"、と……"目的"、を、持って……組織されている」
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誠は——ぞくり、とした。
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敵は——ただ——闇雲に——攻撃しているのでは、ない。
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役割を——分担し。層を——なし。何か、大きな——"目的"、のために——組織されている。
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「その、"目的"、が……分かれば……」
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誠は——考え込んだ。
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「敵の、"弱点"、も……見えてくる、かもしれない」
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「上の、層の、敵が……"反射する、表面"、を、持っている。そして……攻撃してこない」
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桜庭が——考えを、巡らせた。
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「反射する、表面……。光を、反射する……。それが……何かの……"準備"、だとしたら……」
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その時——皆瀬が——ぽつり、と、言った。
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「あの……。私たちの、身体も……光を、反射、するでしょう?」
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「うん」
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「もし……私たちの、身体を……たくさん、集めて……光を、一点に……集めたら……どうなるのかな」
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誠は——はっと、した。
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「光を……一点に……集める……?」
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「うん。なんとなく……そんな、気が、して」
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その、言葉が——誠の、頭の中で——何か、を——刺激した。
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光を、反射する、表面。それを、たくさん、集めて……光を、一点に……。
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「まさか……敵は……」
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だが——その、考えは——まだ——確信には——至らなかった。
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「いや……まだ、分からない。でも……」
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誠は——皆瀬の、言葉を——胸に、刻んだ。
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「皆瀬さんの、その、考え……何か、大事な、"ヒント"、な、気が、する」
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まだ——謎は——解けない。
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だが——確実に——敵の、"正体"、へと——近づいていた。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「桜庭さんが、偵察情報を、まとめてくれた。敵の配置は、いくつかの、"層"、に、分かれてた。下の層は、光の柱を、撃ってくる、攻撃担当。でも、上の層は、攻撃してこなくて……ただ、浮かんでるだけ。しかも、上の層は、"鏡みたいに、光を反射する"、やつ。役割が、分かれてるんだ。アルフレート様が、"役割分担が、あるってことは、明確な意志と目的を持って、組織されてる"、って。そして……皆瀬さんが、"光を反射する身体を、たくさん集めて、光を一点に、集めたら、どうなるのかな"、って。なんだか……その言葉が、頭から、離れない。敵は……光を、一点に、集めて……何かを、しようとしてるのかもしれない。じいちゃん……まだ、確信は、ないけど……敵の、正体に……近づいてる気が、するんだ」
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窓の外——裂けた、空。
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そこに——層を、なして、並ぶ——無数の、敵。
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まだこの時の誠は知らない。上の、層の、敵が持つ、"反射する、表面"、が——何のために、あるのかを。
そして——皆瀬の、何気ない、言葉が……敵の、恐ろしい、目的に……あと、一歩まで……迫っていたことも——今はまだ、知る由もなかった。




