第154話「傷を、癒す者」
食料問題が——落ち着いた、頃。
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だが——戦いが、続く、限り——絶えないものが——あった。
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"負傷者"、である。
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「田中さん! また、怪我人が……!」
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前線から——次々と——傷ついた、仲間が——運ばれてくる。
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「すぐ、手当てします! こっちへ!」
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誠は——出店を——即席の、"治療所"、に、変えた。
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祖父直伝の——薬草の、知識を、活かし——傷を、洗い、薬を、塗り、包帯を、巻く。
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「痛みますか? もう少しの、辛抱です」
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「田中殿の、手当ては……本当に……効くな……」
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誠の、薬草の、知識は——多くの、負傷者を——救っていた。
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だが——それでも——手が、足りなかった。
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「田中さん! こっちも!」
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「田中くん! 早く!」
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あちこちから——誠を、呼ぶ、声。
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誠は——一人で——駆け回った。
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だが——負傷者の、数に——追いつかなかった。
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「くっ……。僕一人じゃ……手が、足りない……」
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誠は——焦った。
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その時——ふと——気づいた。
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「そうだ……。一人で、抱え込まなくても……いいんだ」
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誠は——皆に——呼びかけた。
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「みんな! 手伝ってほしい! 薬草の、扱い方を……教えるから!」
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避難民たち。手の、空いた、仲間たち。
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誠は——彼らに——簡単な、手当ての、方法を——教えていった。
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「この、薬草を……こうやって、すり潰して……傷に、塗るんです」
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「包帯は……きつすぎず、緩すぎず……」
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すると——次々と——"手当てが、できる、人"、が——増えていった。
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「私にも……できました!」
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「これで……もっと、多くの人を……助けられる!」
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誠の、知識が——皆に——"分け与えられ"——広がっていく。
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一人の、力が——皆の、力へと——"繋がって"、いった。
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「田中」
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アルフレートが——その、様子を、見て——言った。
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「お前は……また……"繋いだ"、な」
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「え?」
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「自分の、知識を……皆に、分け与え……"癒す者"、を……増やした」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「お前一人の、力は……小さい。だが……お前が、知識を、繋げば……それは……何倍もの、力に、なる」
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誠は——はっと、した。
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「そうか……。僕、一人で……全部を、やろうと、してた。でも……知識を、分けて、繋げれば……もっと、多くの人を、救える」
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「これも……"繋がり"、なんだ」
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そんな、中——一人の、重傷者が——運ばれてきた。
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龍族の、若者だった。
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戦闘で——大きな、傷を——負っていた。
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「この子……助かるの……?」
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藤原が——心配そうに——見守る。
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誠は——必死に——手当てを、した。
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祖父から、受け継いだ——全ての、知識を、注いで。
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「大丈夫……。必ず、助ける……」
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長い——時間が、かかった。
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だが——やがて。
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龍族の、若者の、呼吸が——安定した。
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「……助かった。峠は、越えたよ」
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「田中くん……! ありがとう……!」
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藤原が——涙ぐんだ。
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「あんたが……いてくれて……ほんまに……良かった……」
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誠は——疲れ果てながらも——微笑んだ。
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「間に合って……良かった」
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戦えない、モブが——傷を、癒し——命を、繋ぐ。
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そして——その、知識を——皆に、分け与え——"癒す者"、を、増やしていく。
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その、営みが——静かに——この、戦いを、支えていた。
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「腹を、満たし……傷を、癒し……心を、支える」
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誠は——静かに、思った。
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「これが……戦えない、僕に、できる……"戦い"、なんだ」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「戦いが、続く限り、負傷者は、絶えない。僕は、出店を、治療所にして、祖父直伝の、薬草の知識で、手当てを、した。でも……一人じゃ、手が、足りなくて。だから、皆に、手当ての方法を、教えた。そうしたら……手当てができる人が、次々、増えた。アルフレート様が、"お前が、知識を、繋げば、それは、何倍もの、力になる。これも、繋がりだ"、って。そうか。一人で、全部やろうと、しなくても、知識を、分けて、繋げれば……もっと、多くの人を、救える。龍族の、若者も、なんとか、助けられた。藤原さんが、泣いて、喜んでくれた。腹を、満たし、傷を、癒し、心を、支える。これが、戦えない、僕に、できる、戦いなんだ。じいちゃん……じいちゃんの、教えが……たくさんの、命を……救ってるよ」
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窓の外——裂けた、空。
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まだこの時の誠は知らない。彼が、"癒す者"、を、増やし……知識を、繋げたことが——やがて、訪れる、総力戦で……無数の、命を……救うことに、なることを。
そして——それこそが……戦う力の、ない、彼が……最も、多くの、命を、繋ぐ……"戦い方"、であることも——今はまだ、知る由もなかった。




