第152話「誠の、出店」
予行演習が——続く、日々。
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だが——誠には——もう一つ——気に、なることが、あった。
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「みんな……ちゃんと、食べてるかな」
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連日の——訓練と、戦闘。
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仲間たちは——疲弊し——避難民たちは——不安に、脅えている。
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「そうだ……。僕に、できることが……もう一つ、あった」
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誠は——思い立った。
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「戦いの、拠点に……"店"、を……出そう」
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こうして——誠は——前線の、拠点に——小さな、"出店"、を、構えた。
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そこで——温かい、食事を、作り。傷の、手当てを、し。薬湯を、配る。
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祖父直伝の——料理と、薬草の、知識を——存分に、活かして。
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「さあ、皆さん! 温かい、ご飯が、ありますよ! 食べて、力を、つけてください!」
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誠の、出店には——訓練を、終えた、仲間たちが——次々と、訪れた。
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「田中くーん! 腹、減ったわ!」
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藤原が——龍の、姿から——人の、姿に、戻って、やってきた。
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「藤原さん、お疲れ様。はい、どうぞ。特製の、握り飯です」
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「うわ、美味しそう! いただきまーす!」
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グランデルも——竜崎も——黒崎も——皆瀬も。
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訓練で、疲れた、身体を——誠の、料理で——癒していった。
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「はぁ……。田中の、飯を、食うと……ほっと、するわ」
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グランデルが——しみじみと、言った。
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「戦いばっかりで……気が、張り詰めとったけど……」
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「こういう、温かいもんが……一番の、薬や、な」
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誠は——その、言葉に——微笑んだ。
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「たくさん、食べて、休んでください。それが……明日の、力に、なりますから」
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避難民たちにも——誠は——食事を、配った。
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「大丈夫ですよ。ちゃんと……皆さんの、分も、あります」
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不安に、脅えていた、避難民たちも——誠の、温かい、料理と、言葉に——少しずつ——落ち着きを、取り戻していった。
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「田中さん……。こんな、時に……温かい、ご飯が、食べられるなんて……」
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年老いた、避難民が——涙ぐんだ。
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「生きてる、実感が……湧いてきました……」
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「そうです。生きて、食べて……また、明日を……迎える。それが……何より、大事、なんです」
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誠は——優しく、そう、言った。
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その、光景を——アルフレートが——見ていた。
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「田中……」
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「アルフレート様。お腹、空いてませんか。どうぞ」
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アルフレートは——差し出された、握り飯を——受け取った。
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「……お前は、本当に、変わった、男だな」
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「え?」
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「この、絶望的な、戦いの中で……お前は……"店"、を、出す」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「剣を、振るうでもなく……魔法を、使うでもなく……ただ……皆に、飯を、食わせ……傷を、癒し……安らぎを、与える」
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「僕には……それしか……できませんから」
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誠は——照れくさそうに、言った。
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「いや……」
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アルフレートは——握り飯を、頬張り——静かに、言った。
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「それが……どれほど……皆の、"支え"、に、なっているか……お前は……分かっていない」
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アルフレートは——戦場を、見渡した。
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誠の、出店に、集う——仲間たち。
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そこには——束の間の、"笑顔"、が——あった。
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「戦いには……"武力"、が、必要だ。だが……それだけでは……人は、折れる」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「心を……支える、ものが……なければ、な」
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「お前の、出店は……皆の、"心"、を……支えている。それは……剣や、魔法と……同じくらい……いや、それ以上に……大切な、"力"、なのだ」
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誠は——アルフレートの、言葉に——胸が——熱くなった。
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「ありがとう、ございます、アルフレート様」
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「これからも……僕に、できることを……続けます」
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こうして——誠の、出店は——前線の、"心の、拠り所"、と、なっていった。
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戦えない、モブが——それでも——皆を、支える。
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その、姿は——静かに——けれど、確かに——皆の、心を——繋いでいた。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「前線に、"出店"、を、構えた。温かいご飯を、作って、傷を、手当てして、薬湯を、配る。皆、訓練や、戦闘で、疲れてるから。グランデルさんが、"田中の飯を、食うと、ほっとする。温かいもんが、一番の薬や"、って。避難民の、おじいさんは、"生きてる実感が、湧いてきた"、って、涙ぐんでた。アルフレート様は、"お前の、出店は、皆の、心を、支えてる。剣や魔法と、同じくらい……いや、それ以上に、大切な力だ"、って。僕には……戦うことは、できない。でも……皆に、飯を、食わせて、傷を、癒して、安らぎを、与えることなら、できる。それが……皆の、心の、支えに、なるなら……嬉しい。じいちゃん……これが、僕の、戦い方だ。ずっと……続けるよ」
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窓の外——裂けた、空。
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だが——前線の、出店には——温かい、灯りが——灯っていた。
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まだこの時の誠は知らない。この、"出店"、で……皆の、心を、支えたことが——やがて、訪れる、過酷な、決戦の中で——皆が、折れずに、戦い抜く……大きな、力に、なることを。
そして——それこそが……戦う力の、ない、彼にしか……できない……何より、大切な、"戦い"、であることも——今はまだ、知る由もなかった。




