第148話「龍族の、伝承」
各種族の——伝承を、集める。
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その、方針が——決まった。
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「藤原さん。龍族にも……何か、言い伝えは、ある?」
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誠が、尋ねると——藤原は——少し、考えた。
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「うーん……。うちは……卵から、孵ったばっかりやから……あんまり、詳しくは……」
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「でも……里の、長老たちなら……何か、知っとるかもしれへん」
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「連れて、来られるかな」
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「任せとき。ひとっ飛びで、行ってくるわ」
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藤原は——空へ、舞い上がり——しばらくして。
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一体の——古い、龍を——背に、乗せて——戻ってきた。
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「田中くん。これが……龍族の、一番の、長老や」
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その、龍は——鱗が、色褪せ——長い、年月を——感じさせる、姿を、していた。
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「……人間の、若者よ。お前が……京香が、世話に、なっておる、田中誠か」
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「はい。突然、すみません」
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誠は——長老に——事情を、説明した。
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各種族の、伝承を、集めていること。それが——敵に、抗う、鍵に、なるかもしれないこと。
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長老は——静かに——聞いていた。
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「なるほど……。我が、里にも……確かに……古き、言い伝えが、ある」
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「教えて、いただけますか」
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長老は——静かに——語り始めた。
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「"いつの日か……天が、裂け……災い、降る、時、来たらん"」
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「今、まさに……その、時、よな」
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一同が——息を、呑んだ。
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「そして……その、続きは……こうじゃ」
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長老は——静かに、続けた。
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「"その、災い……高き、天より、来たる"」
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「"されば……空を、駆ける、者……天と、地を……繋ぐべし"」
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「空を、駆ける、者が……天と、地を、繋ぐ……」
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誠は——その、言葉を——繰り返した。
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「空を、駆ける、者……って……」
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「我ら……龍族の、ことじゃろう」
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長老は——静かに、答えた。
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「空を、自在に……駆けることの、できる……我ら、龍族。その、我らが……"天と、地を、繋ぐ"、役割を……担う、と」
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「天と、地を、繋ぐ……」
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誠は——考え込んだ。
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「敵は……遥か、上空に、いる。地上の、力は……届かない」
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「でも……空を、駆ける、龍族が、いれば……地上の、力を……天へ……届けられる……?」
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その時——アルフレートが——口を、開いた。
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「田中。思い出せ。スライム族の、"鏡"、の、話を」
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「あ……」
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「スライムが、"鏡"、に、なって……敵の、光を、跳ね返す。だが……スライムは……空を、飛べん」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「もし……その、"鏡"、を……龍族が、空へ、運べば……」
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「敵の、近くまで……鏡を……持っていける……!」
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誠は——はっと、した。
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「そうか……! スライム族の、"鏡"、と……龍族の、"空を、駆ける、力"、を……組み合わせれば……!」
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一同に——興奮が——走った。
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「バラバラの、伝承が……繋がった!」
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「そういう、ことか……!」
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長老も——感嘆したように——頷いた。
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「なるほど……。伝承は……一つ、一つでは……意味を、成さぬ。だが……繋げれば……道が、見える」
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「これが……"天と、地を、繋ぐ"、の……真の、意味やも、しれぬ」
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誠は——胸が——高鳴った。
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「そうだ……! これだ……!」
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スライム族の——"鏡"。
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龍族の——"天と、地を、繋ぐ、力"。
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それらが——一つに——繋がった、時。
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反撃への——道が——見え始めた。
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「田中殿……いや、田中誠、よ」
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龍族の、長老が——静かに、言った。
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「京香から……聞いておる。お前は……様々な、種族を……繋いできた、男だ、と」
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「もしや……お前こそが……バラバラの、伝承を……一つに、繋ぐ……"その者"、なのやも、しれぬな」
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誠は——その、言葉に——静かに、頷いた。
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「僕に……できるか、分かりません。でも……皆の、力を、繋ぐことなら……やってみます」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日、藤原さんが、龍族の、長老を、連れてきてくれた。龍族にも、言い伝えが、あった。"天が裂け、災い降る。その災いは、高き天より、来たる。されば、空を駆ける者、天と地を、繋ぐべし"、って。空を駆ける者、っていうのは、龍族のこと。そして……アルフレート様が、閃いた。スライム族の、"鏡"、を……龍族が、空へ、運べば……敵の、近くまで、持っていける、って。スライムの鏡と、龍の力が……繋がった! バラバラの伝承が、一つに、なった瞬間だった。龍族の、長老が、"お前こそ、バラバラの伝承を、繋ぐ、その者かもしれん"、って。じいちゃん……皆の、力を、繋げれば……本当に、道が、見えてくる。これが……僕の、役割、なのかもしれない」
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窓の外——裂けた、空。
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まだこの時の誠は知らない。バラバラの、伝承を、繋いだ、先に——さらに、いくつもの、"ピース"、が……待っていることを。
そして——それらが、全て、繋がった、時……初めて……反撃が、形に、なることも——今はまだ、知る由もなかった。




