第146話「口を開いた、皆瀬」
高原の——仲間たちの、集まり。
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その、中心で——誠は——皆に、向かって——切り出した。
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「みんな……。一つ、聞きたいことが、あるんだ」
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誠は——皆瀬の、方を——見た。
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「皆瀬さん。前に……"鏡"、っていう、言葉を……口にしてたよね」
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皆瀬の、揺れが——ぴたり、と——止まった。
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「……うん」
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「あの、"鏡"、について……もう一度……詳しく、教えてくれないかな」
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誠は——真剣に、続けた。
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「敵は……"光"、で、攻撃してくる。もしかしたら……その、"鏡"、が……反撃の、鍵に、なるかもしれないんだ」
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皆瀬は——しばらく——迷っていた。
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だが——やがて——静かに——口を、開いた。
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「……分かった。私が、知ってること……全部、話す」
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皆瀬は——語り始めた。
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「私たち、霧霊スライム族には……ずっと、昔から……"身体記憶"、って、呼ばれる……言い伝えが、あるの」
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「身体記憶……」
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「うん。私たちの……集合意識の、奥深くに……刻まれた……古い、古い、言い伝え」
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皆瀬は——静かに、続けた。
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「その、言い伝えは……こう、告げてるの。"いつの日か……天より、災いが、降る"、って」
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一同が——息を、呑んだ。
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「今の……この、状況の、ことだ……」
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「そして……その、続きが……こうなの」
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皆瀬は——記憶を、辿るように、続けた。
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「"その、災いを、退けるには……己の、身体と……対に、なる、鏡を……用意せよ"」
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「己の、身体と……対に、なる、鏡……」
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誠は——その、言葉を——繰り返した。
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「どういう……意味なんだろう」
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皆瀬も——首を、振った。
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「それが……ずっと、分からなかったの。私たちは……目が、見えないでしょう? だから……"鏡"、って、いうものが……そもそも……よく、分からなくて」
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その時——桜庭が——口を、開いた。
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「ねえ、皆瀬さん。一つ、確認したいんだけど」
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「なに?」
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「"己の、身体と、対に、なる"、って……どういう、こと? あなたたちの、身体が……何か、関係してるの?」
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皆瀬は——少し——考えた。
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「私たちの、身体は……ほら……こういう、"透明"、な……水みたいな……」
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皆瀬は——自分の、透き通った、身体を——揺らした。
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その、瞬間——誠は——はっと、した。
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「透明な……身体……」
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誠の、脳裏に——ある、光景が——浮かんだ。
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「水面が……光を……跳ね返す……」
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「まさか……!」
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誠は——身を、乗り出した。
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「皆瀬さん! スライムの、皆さんの、身体って……"光"、を……跳ね返せたり……しませんか!」
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皆瀬は——きょとん、とした。
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「光を……跳ね返す?」
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「はい! 透明で……つるつるした、身体なら……もしかしたら……鏡みたいに……光を……」
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「やった、こと、ないから……分からないけど……」
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皆瀬は——少し——考えた。
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「でも……確かに……私たちの、身体は……光を……よく、通すし……跳ね返す、ことも……できるかも……」
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一同に——ざわめきが——走った。
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「田中……それは……」
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アルフレートが——身を、乗り出した。
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「敵は……"光"、で、攻撃してくる。もし……スライム族の、身体で……その、光を……跳ね返せるなら……」
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「敵の、攻撃を……敵に……返せる、かもしれない……!」
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誠は——確信した。
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「これが……"鏡を、用意せよ"、の……意味……!」
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「スライム族の、皆さんが……その、"鏡"、に……なる、っていうこと……!」
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皆瀬は——驚いたように——揺れた。
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「私たちが……鏡に……?」
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「うん! 皆瀬さん……試してみる、価値は、あると思う!」
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長年——謎だった——スライム族の、言い伝え。
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その、意味が——今——少しずつ——解き明かされようと、していた。
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「みんな……! 一つ、光明が、見えてきた!」
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誠は——皆を、見渡した。
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「スライム族の、身体で……敵の、光を……跳ね返す。これが……できれば……反撃の、糸口に、なる!」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日、皆瀬さんが……ついに、"鏡"、の、言い伝えを、詳しく、話してくれた。スライム族に、伝わる、"身体記憶"。"天より、災いが、降る。それを、退けるには、己の身体と、対になる、鏡を、用意せよ"、って。ずっと、意味が、分からなかったらしい。でも……皆瀬さんが、自分の、透明な、身体を、揺らした時……僕は、閃いた。透明で、つるつるの、身体なら……光を、跳ね返せるんじゃないか、って。スライム族の、皆さんが……"鏡"、そのものに、なる。敵の、光の、攻撃を……跳ね返す。これが、"鏡を、用意せよ"、の、意味かもしれない。じいちゃん……長年の、謎が……少しずつ、解けてきた。反撃の、糸口が……見えてきたんだ」
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窓の外——裂けた、空。
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だが——その、闇の中に——今——一筋の、"光明"、が——差し込んでいた。
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まだこの時の誠は知らない。スライム族が、"鏡"、に、なる、という、この、発見が——本当に……敵に、通用するのかを。
そして——その、"鏡"、が——単なる、反射だけでは、ない……もっと、大きな、可能性を……秘めていることも——今はまだ、知る由もなかった。




