第144話「一夜の、被害」
皆瀬に、会いに、行こう——そう、決めた——その夜。
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だが——その夜——予想外の、事態が——起きた。
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これまで——夜の間は——攻撃を——控えていた、敵。
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それが——初めて——夜に——大規模な、攻撃を——仕掛けてきたのだ。
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——ヒュゴォォォォォッ! ズドオオオン!
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深夜——突然の、轟音に——誠は——飛び起きた。
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「な……なんだ!」
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外に、出ると——夜空が——無数の、光の柱で——赤く、染まっていた。
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「夜襲だ……!」
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これまで——昼にしか——攻撃してこなかった、敵が。
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今——夜の、闇に、紛れて——一斉に——攻撃を——始めていた。
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「みんな! 避難を! 早く!」
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誠は——すぐに——動いた。
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だが——夜の、闇と——突然の、攻撃に——村は——大混乱に、陥った。
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「どこに、逃げれば……!」
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「子供が……子供が、いない!」
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「助けて……!」
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——ズドオオン! ズドオオン!
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光の柱が——次々と——村の、近くに——降り注ぐ。
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畑が。家が。次々と——焼かれていく。
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「田中! こっちだ!」
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アルフレートが——駆けつけた。
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そして——降り注ぐ、光の柱の、いくつかを——己の、身体で——受け止め、逸らした。
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「ぐっ……! 熱い……!」
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世界最強の、勇者ですら——その、光に——顔を、しかめた。
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「アルフレート様! 無理は……!」
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「案ずるな! 村人の、避難を、優先しろ!」
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誠は——闇の中を——駆け回り——人々を——安全な、場所へと——誘導した。
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「こっちです! 僕の、声の、方へ!」
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パニックの中でも——誠の、落ち着いた、声は——人々の——道しるべに、なった。
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竜崎の、傭兵団も——避難を、助けた。
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「守り竜団! 村人を、守れ! 一人も、死なせるな!」
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黒崎の、闇魔法が——せめてもの——闇の、盾を——作り出した。
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「闇よ……! 皆を、守れ……!」
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長い——長い、夜だった。
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そして——ようやく——夜が、明けた。
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攻撃が——止んだ。
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誠は——疲れ果てて——その場に——座り込んだ。
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「はぁ……はぁ……。終わった、のか……」
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だが——明けた、空の下に——広がっていたのは。
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無残に——焼け焦げた——村の、姿だった。
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畑は——焼かれ。
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いくつもの——家が——崩れ、焼け落ちていた。
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「ひどい……」
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誠は——言葉を——失った。
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「田中さん!」
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エリナが——駆け寄ってきた。
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「怪我人が……たくさん……!」
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誠は——はっと——我に、返った。
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「すぐ、手当てを! 薬湯を、用意して! 動ける、人は、手伝ってください!」
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誠は——疲れも、忘れ——怪我人の、手当てに——奔走した。
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祖父直伝の——薬草の、知識。
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それが——今——多くの、命を——救っていた。
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「田中さんの、おかげで……助かった……」
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「ありがとう……本当に……」
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だが——それでも。
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失われた、命も——あった。
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誠は——助けられなかった、人々を、前に——唇を、噛んだ。
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「くそっ……。もっと……もっと、早く……何か……できていれば……」
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「田中」
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アルフレートが——静かに、言った。
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「お前は……よく、やった。お前が、いなければ……もっと、多くの、命が……失われていた」
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「でも……!」
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「全てを、救うことは……できない。それが……戦争、なのだ」
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アルフレートの、言葉は——重かった。
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「だが……だからこそ……早く……敵を……止めねばならん」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「これ以上……犠牲を、出さぬ、ために」
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誠は——ぐっと——拳を、握った。
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「はい……。急がないと……」
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「皆瀬さんの……"鏡"、の、話……今すぐ、聞きに……行きます」
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一夜の、被害は——甚大だった。
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だが——それは——誠の、決意を——さらに——固くした。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「昨夜、敵が……初めて、夜襲を、仕掛けてきた。これまで、昼にしか、攻撃してこなかったのに。村は、大混乱で……畑も、家も、たくさん、焼かれた。皆で、必死に、避難させて、怪我人を、手当てして……。でも……助けられなかった命も、あった。悔しい。もっと、早く、何か、できていれば。アルフレート様は、"全てを救うことはできない。それが戦争だ。だからこそ、早く、敵を止めねば"、って。その通りだ。これ以上、犠牲を、出さないために……急がないと。じいちゃん……のんびり、してる、時間は、ない。明日……いや、今すぐ、皆瀬さんに、"鏡"、の話を、聞きに、行く。反撃の、糸口を……早く、見つけないと」
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窓の外——裂けた、空。
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そして——焼け焦げた——村の、跡。
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まだこの時の誠は知らない。敵が、夜襲を、始めたことが——事態が、新たな、"段階"、に、入った……印であることを。
そして——その、切迫が——皮肉にも——反撃の、糸口を、見つける……きっかけに、なることも——今はまだ、知る由もなかった。




