第140話「なす術もなく」
敵の、正体が——"金属の、物体"、であり——意志を、持つ、"敵"、である、と——分かった。
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だが——それが、分かったところで——手も足も——出なかった。
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その日も——空からは——時折——光の柱が——降り注いだ。
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——ヒュゴォォォッ! ズドオオン!
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村の、近くの——畑が——一つ、また一つと——焼かれていく。
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「くそっ……! また、やられた!」
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竜崎が——歯を、食いしばった。
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守り竜団を、率いて——駆けつけた、彼も——なす術が、なかった。
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「剣が……届かない。あんな、上空、じゃ……」
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アルフレートも——同じ、だった。
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世界最強の、勇者ですら——遥か、上空の——敵には——手が、届かない。
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「くっ……。俺の、剣も……あそこまでは……届かん」
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黒崎の——闇魔法も。
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「闇よ……! 天を、覆え……!」
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黒崎が——強大な、闇魔法を——放った。
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だが——その、闇も——上空の、敵には——届かず——虚しく、霧散した。
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「馬鹿な……! 俺の、闇が……届かぬ、だと……!」
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グランデルの——怪力も。
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「せいっ!」
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巨大な、岩を——投げ上げても。
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その、岩は——敵に、届く、遥か、手前で——落ちてきた。
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「くそっ……! 高すぎるわ……!」
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誰も——あの、敵には——手が、届かなかった。
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反撃の——手段が——何一つ——なかった。
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「これは……」
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アルフレートが——歯噛みした。
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「一方的な……蹂躙だ」
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敵は——遥か、上空から——安全に——地上を——焼いていく。
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対して——こちらは——手も、足も——出ない。
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これほど——絶望的な、状況を——アルフレートですら——経験したことが、なかった。
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「田中……」
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アルフレートは——静かに、言った。
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「このままでは……我々は……ただ、焼かれるのを……待つしか、ない」
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誠は——拳を、握りしめた。
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目の前で——畑が、焼かれ——人々が——脅えている。
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なのに——何も——できない。
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その——無力感。
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「何か……何か、方法が……あるはずだ」
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誠は——必死に——考えた。
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「あの、敵に……届く、方法……」
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その時——誠の、脳裏に——ある、記憶が——蘇った。
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行商人の、噂。
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「帝国が……レールガンを……"空"、に、向けて、据えている……」
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「そうだ……! レールガンだ!」
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誠は——はっと、した。
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「アルフレート様! 一色さんの、レールガンなら……あの、上空の、敵に……届くかもしれない!」
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アルフレートは——はっと、した。
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「レールガン……あの、帝国の、兵器か!」
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「はい! 一色さんは……ずっと前から……レールガンを、空に、向けて……備えていました!」
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「まさか……この、事態を、予期して……!」
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誠は——確信した。
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一色は——知っていた。
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そして——この、"空からの、敵"、に、備えて——レールガンを——用意していたのだ。
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「一色さんに……連絡を、取らないと!」
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誠が——そう、言った、その時。
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「田中殿!」
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一人の——帝国の、伝令が——駆け込んできた。
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「皇帝陛下、より……火急の、御用にて……!」
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伝令は——一通の、手紙を——差し出した。
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「一色さんから……!」
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誠は——急いで——手紙を、開いた。
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「田中くん。返事が、遅れて、ごめんなさい。もう……気づいていると、思う。"それ"、が、来た」
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「私は……ずっと、これに、備えて、レールガンを、用意してきた。でも……一つ、不安が、ある」
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「私の、レールガンが……本当に、あの、敵に……届くのか、どうか」
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「今から……試してみる。もし……成功したら……それが……反撃の、始まりに、なる」
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「田中くん……力を、貸して。皆と、一緒に……この、世界を……守りたいの」
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誠は——手紙を、握りしめた。
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「一色さん……」
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ついに——一色が——動き始めた。
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そして——反撃への——最初の、一手が——放たれようとしていた。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日は、本当に、絶望的だった。空から、光の柱が、降ってきて……畑が、焼かれるのを……ただ、見てることしか、できなかった。アルフレート様の、剣も、黒崎の、闇魔法も、グランデルさんの、怪力も……誰の、力も、あの、上空の、敵には……届かない。一方的な、蹂躙だ。でも……僕は、思い出した。一色さんの、レールガン。あれなら、上空に、届くかもしれない、って。そうしたら……一色さんから、手紙が、来た。"レールガンを試す。それが、反撃の始まりになる。力を貸して"、って。ついに、一色さんが、動く。じいちゃん……なす術もなく、焼かれるだけの、日々に……初めて、"反撃"、の、希望が、見えた気がする」
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窓の外——裂けた、空と——降り注ぐ、破壊の、光。
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まだこの時の誠は知らない。一色の、レールガンが——あの、敵に……届くのか、どうかを。
そして——その、結果が——反撃の、行方を——大きく、左右することになることも——今はまだ、知る由もなかった。




