第139話「天の、無数の光」
各地からの、報せを——受けて。
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誠は——一つの、決断を、した。
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「敵のことを……もっと、正確に、知る、必要が、ある」
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数万の、敵。だが——それが——本当に、数万なのか。どう、並んでいるのか。どんな、風に、動くのか。
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「藤原さん。空から……あの、"光"、を……近くで、偵察できないかな」
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藤原は——少し——躊躇った。
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「近くで、いうても……あの、光の、柱に、撃たれたら……いくら、うちでも……」
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「無理は……しないでほしい。でも……敵の、正体が、少しでも、分かれば……」
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「……分かった」
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藤原は——決意を、込めて、頷いた。
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「うちが……行ったる。ただし……危なくなったら、すぐ、戻るで」
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「うん。気をつけて」
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藤原は——空高く——舞い上がっていった。
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裂けた、空の——向こうへ。
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無数の、"光"、が、浮かぶ——その、間近へ。
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地上から——誠たちは——固唾を、呑んで——見守った。
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「藤原さん……無事で……」
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しばらくして——藤原が——急降下で——戻ってきた。
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その、表情は——蒼白だった。
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「藤原さん! 大丈夫!?」
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「はぁ……はぁ……。あかん……あれは……あかんわ……」
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藤原は——震えながら——語った。
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「近くで、見たら……はっきり、分かった。あの、"光"、の、正体……」
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「正体……!?」
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誠は——身を、乗り出した。
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「あれは……"星"、やない。生き物でも……ない」
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藤原は——静かに、続けた。
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「なんや……"金属の、塊"、みたいな……そんな……"物体"、やった」
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「金属の……塊……」
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「一つ、一つが……こう……つるっとした……見たこともない、材質で、できとって……」
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藤原は——記憶を、辿りながら、続けた。
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「その、"物体"、が……数え切れんほど……空一面に……びっしりと……浮かんどるんや」
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誠は——ぞくり、とした。
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「数は……本当に……数万も……?」
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「いや……」
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藤原は——首を、振った。
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「数万どころ……ちゃうかもしれん。近くで、見たら……もっと、奥にも……ずっと、ずっと……果てしなく……続いとった」
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一同に——重い、沈黙が——流れた。
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果てしなく——続く——無数の——金属の、物体。
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その、絶望的な——"数"。
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「それに……もう、一つ……気になったことが……」
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藤原は——声を、潜めた。
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「あの、物体……ただ、浮かんどるだけ、やない。うちが、近づいたら……いくつかが……こう……"うちの方を、向いた"、気が、したんや」
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「向いた……?」
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「まるで……こっちを……"見とる"、みたいに」
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誠は——ぞくり、とした。
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以前、感じた——"意志"、の、気配。
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それが——藤原の、証言で——さらに——現実味を、帯びた。
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「じゃあ……あれは……ただの、"仕掛け"、じゃなくて……」
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「分からへん。でも……なんや……"生きとる"、みたいな……そんな、不気味さが、あったんや」
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アルフレートは——藤原の、証言を——静かに、聞いていた。
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「金属の、物体が……果てしなく……そして……こちらを、認識している……か」
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アルフレートは——考え込んだ。
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「田中……。少なくとも……一つ、分かったことが、ある」
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「なんですか」
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「あれは……天災では、ない」
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誠は——はっと、した。
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「あれは……"何者かが、作った、もの"、だ。そして……"意志"、を、持って……この、世界を……攻撃している」
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アルフレートは——静かに、断言した。
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「つまり……あれは……"敵"、だ。倒すべき……明確な、"敵"、なのだ」
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「敵……」
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誠は——裂けた、空を——見上げた。
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果てしなく、続く——金属の、物体。
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それが——意志を、持った——"敵"、であるという——事実。
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「でも……アルフレート様。それが、分かっても……あんな、数を……どうやって……」
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「それは……これから、考える」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「だが……"敵"、である、以上……必ず……"弱点"、や……"倒す、方法"、が、あるはずだ」
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「それを……皆で……探すのだ」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「藤原さんに、無理を、言って……空の、"光"、を、近くで、偵察してもらった。分かったのは……あれは、星でも、生き物でもなく……"金属の、塊"、みたいな、物体だ、ってこと。つるっとした、見たこともない、材質で……果てしなく、空一面に、浮かんでる。数万どころじゃ、ないかもしれない。しかも……藤原さんが、近づいたら、いくつかが、"こっちを向いた"、って。まるで、見てるみたいに。アルフレート様は、"あれは、天災じゃない。何者かが作って、意志を持って、攻撃してる。つまり、倒すべき、敵だ"、って。敵、なら……必ず、弱点や、倒す方法が、あるはず。それを、皆で、探すんだ。じいちゃん……まだ、絶望的だけど……"敵"、だと、分かっただけでも……一歩、前進だ」
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窓の外——裂けた、空と——果てしなく、続く、金属の、物体。
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まだこの時の誠は知らない。あの、金属の、物体が——一体、何のために、作られ……何を、しようと、しているのかを。
そして——それが——ただ、"焼く"、だけでは、ない……もっと、恐ろしい、"目的"、を、秘めていることも——今はまだ、知る由もなかった。




