第137話「逃げ惑う、人々」
北が、全滅した——という、報せは。
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瞬く間に——各地へと——広がっていった。
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そして——恐怖に、駆られた、人々の——大規模な、"避難の、波"、が——始まった。
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北から、南へ。
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無数の、人々が——家財を、抱え——泣き叫ぶ、子供の、手を、引き——南を、目指して——逃げていく。
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「田中さん! 村に……避難民が、押し寄せてます!」
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エリナが——慌てて——駆け込んできた。
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誠が——外に、出ると——村の、入り口には。
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疲れ果てた——大勢の、避難民が——溢れかえっていた。
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「水を……水を、くれ……」
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「子供が……お腹を、すかせて……」
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「もう……歩けない……」
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その、光景を、見て——誠は——胸が——締め付けられた。
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「みんな、こっちへ! 休める、場所が、あります!」
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誠は——すぐに——動き始めた。
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「エリナさん、炊き出しの、準備を! 蓄えの、食料を、全部、出そう!」
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「はい!」
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「マーサさん、井戸の、水を! ゴラム爺さん、休める、場所の、割り振りを、お願いします!」
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誠の、的確な、指示で——村人たちが——次々と——避難民の、救護に——動き始めた。
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誠自身も——炊き出しの、鍋を、振るい——疲れた、人々に——温かい、食事を——配って、回った。
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「さあ、食べてください。温かい、うちに」
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「あ、ありがとう……ございます……」
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一杯の——温かい、スープ。
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それを——口に、した、避難民たちの、顔に——少しずつ——生気が——戻っていく。
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「美味しい……。生き返る……」
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「こんな、時に……温かい、ものが、食べられるなんて……」
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誠は——その、光景を、見て——ふと、思った。
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(そうか……。僕に、できるのは……これなんだ)
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(空の、脅威とは……戦えない。でも……逃げてきた、人々を……支えることは……できる)
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「田中さん」
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避難民の、一人——年老いた、女性が——誠の、手を、握った。
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「あんたのおかげで……久しぶりに……人心地が、つきました……。本当に……ありがとう……」
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「いえ……。困った時は……お互い様ですから」
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誠は——優しく、微笑んだ。
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だが——避難民の、数は——増える、一方だった。
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村の、蓄えだけでは——とても——足りそうに、なかった。
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「田中……このままでは……村の、食料が、尽きるぞ」
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アルフレートが——心配そうに、言った。
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「分かってます。でも……見捨てるわけには……」
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その時——誠の、脳裏に——ある、考えが——浮かんだ。
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「そうだ……。皆の、力を、借りよう」
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「皆の?」
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「鬼族の、皆さんは……力持ちだ。遠くの、村から……食料を、運んで、こられる」
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誠は——次々と、思いついた。
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「龍族の、藤原さんなら……空から……安全な、避難路を……偵察できる」
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「傭兵団の、竜崎は……避難民を……魔物や、危険から……守れる」
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アルフレートは——はっと、した。
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「そうか……。お前が、繋いだ、皆の、力を……"避難民を、救う"、ために……使うのか」
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「はい」
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誠は——力強く、頷いた。
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「僕、一人じゃ……こんなに、大勢は、救えない。でも……皆で、力を、合わせれば……」
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こうして——誠は——各地の、仲間たちに——呼びかけた。
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「みんなの、力を……貸してほしい。逃げてきた、人々を……救うために」
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その、呼びかけに——仲間たちは——次々と——応えた。
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鬼族が——遠方から——食料を、運び。
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龍族が——空から——安全な、道を、偵察し。
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傭兵団が——避難民を——守りながら、導く。
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そして——誠が——その、全てを——繋ぎ、まとめる。
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バラバラだった、力が——一つの、"目的"、のために——動き始めた。
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「すごい……」
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アルフレートは——その、光景を、見て——呟いた。
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「敵とは……まだ、戦っていない。だが……お前は、すでに……皆の、力を……一つに、し始めている」
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誠は——避難民の、救護に——奔走しながら——静かに、答えた。
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「これが……僕に、できる、"戦い方"、なんです」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「北から、大勢の、避難民が、逃げてきた。村に、押し寄せて……水も、食料も、足りない。僕は……炊き出しをして、休む場所を、用意して……できる限りのことを、した。温かいスープを、飲んだ人が、"生き返る"、って。ああ、そうか。僕に、できるのは、これなんだ、って、思った。空の脅威とは、戦えない。でも……逃げてきた人を、支えることは、できる。村の蓄えだけじゃ、足りないから……皆の、力を、借りた。鬼族が、食料を運んで、龍族が、道を偵察して、傭兵団が、人を守る。皆で、力を合わせたら……大勢を、救えた。じいちゃん……これが、僕の、戦い方だ。人を、支えて……皆を、繋ぐ。それが……僕に、できることなんだ」
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窓の外——裂けた、空。
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だが——村では——避難民たちが——温かい、灯りの下で——身を、休めていた。
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まだこの時の誠は知らない。この、"避難民を、皆で救う"、という、経験こそが——やがて——本格的な、戦いの中で——皆の、力を、繋げる……大切な、"予行演習"、に、なることを。
そして——彼が、確立し始めた、この、"戦い方"、こそが——最終的に——世界を、救う、鍵に、なることも——今はまだ、知る由もなかった。




