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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
予兆

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第133話「嫌な、静けさ」

丘で、"陣形"、を、目撃してから——数日後。



村は——奇妙な——"静けさ"、に——包まれていた。




あれほど——毎晩、増え続けていた——北の空の、光。




それが——ある夜を境に——ぴたり、と——増えるのを、止めたのだ。





「……光が、増えなくなった」




誠は——地図を、確認しながら——呟いた。




「昨日と……同じ、数だ」





一見——それは——良い、兆しのように——思えた。




だが——誠の、胸の、ざわめきは——むしろ——強くなっていた。




「嫌な……静けさだ」





北の空の——無数の、光は。




もはや——完璧に——整然と——並びきっていた。




一つの——巨大な——"陣形"、として。





「増えるのが、止まった、っていうことは……」




誠は——ぞくり、とした。




「"陣形"、が……完成した、っていうこと……?」






その、"静けさ"、は——空だけでは、なかった。




村の、周りの——森も。




不気味なほど——静まり返っていた。




「鳥も……虫も……鳴かない」





かつて——南へ、逃げていった、鳥たち。




そして——今は——虫の、音さえ——聞こえなかった。




まるで——世界中の、生き物が——息を、潜めて——"何か"、を——待っているかのように。





「田中さん……」




エリナが——不安げに——身を、寄せた。




「なんだか……とても、静かで……怖いです」



「うん……。僕も、だ」





誠は——静かに、続けた。




「これは……嵐の、前の……静けさだ」






その日——各地から——次々と——報せが、届いた。




藤原からの、手紙。




「田中くん。北の空の、光が……並びきった。里の、長老たちが……"来る。もう、すぐ、来る"、って……震えとる。うち……里の、皆を、守るために……戦う、覚悟を、決めた」





グランデルからの、使い。




「田中! ワシら、鬼族……いつでも、駆けつけられるよう……準備は、できとる! 何かあったら……すぐ、報せてくれ!」





皆瀬からの、伝言。




「田中くん……私たち、スライム族も……"その時"、を、待ってる。何が、あっても……あなたの、味方だから」





そして——アルフレートは——もはや——村を、離れなかった。




「田中。俺は……しばらく、村に、留まる」



「アルフレート様……」




「"その時"、が、来たら……真っ先に……お前の、そばに、いる。それが……フレンドの……務めだからな」





誠は——胸が——熱くなった。




皆が——それぞれの、場所で——"その時"、を——待っている。




そして——誠と——繋がっている。





「一人じゃ、ない」




誠は——静かに、呟いた。




「何が、来ても……僕は……一人じゃ、ない」






その、夜。




誠は——一人——北の空を——見上げた。




完璧に、並びきった——無数の、光。




不気味な——静けさ。





「……来るなら、来い」




誠は——静かに、そう、呟いた。




その、声には——恐れながらも——確かな、"覚悟"、が——こもっていた。




「僕は……皆と、一緒に……この、村を……この、世界を……守ってみせる」





その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「北の空の、光が……増えるのを、止めた。完璧に、並びきって……"陣形"、が、完成したんだと思う。一見、良い兆しみたいだけど……胸騒ぎは、強くなる、ばかりだ。嫌な、静けさ。鳥も、虫も、鳴かない。世界中が、息を潜めて、"何か"、を、待ってるみたいだ。嵐の、前の、静けさ。藤原さんも、グランデルさんも、皆瀬さんも……皆、戦う覚悟を、決めてる。アルフレート様は、村に、留まってくれてる。皆が……"その時"、を、待ちながら、僕と、繋がってる。だから……僕は、一人じゃない。じいちゃん……怖い。でも……来るなら、来い。僕は、皆と一緒に……この、世界を、守ってみせる」



窓の外——二つの月と——北の空に、完璧に、並びきった——無数の、光。



そして——不気味なほどの——静寂。



まだこの時の誠は知らない。この、"嫌な、静けさ"、が——嵐の、直前の——最後の、"猶予"、で、あったことを。


そして——その、静寂が——破られる、瞬間が——もう——目前に、迫っていることも——今はまだ、知る由もなかった。

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