第132話「空を、見上げる者」
忍者と、会ってから——数日。
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北の空の、光は——もはや——誰の目にも——明らかなほど——増えていた。
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夜になると——村人たちも——不安げに、空を——見上げるように、なった。
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「あの光……日に日に、増えてるよなぁ」
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「ああ……。なんだか、気味が悪い」
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「星が……こんなに、増えるもんかね」
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村中に——不穏な、空気が——漂い始めていた。
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そんな、ある日。
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誠は——村の、外れの、丘で——一人、空を、見上げている——人影に、気づいた。
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「……アルフレート様?」
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それは——アルフレートだった。
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腕を、組み——じっと——北の空を——見つめている。
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「アルフレート様。こんなところで、何を?」
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「……ああ、田中か」
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アルフレートは——空を、見上げたまま——静かに、答えた。
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「あの、光を……観察していた」
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誠も——アルフレートの、隣に、立ち——空を、見上げた。
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無数の——光の点。
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それは——もはや——北の空、一帯を——埋め尽くさんばかりに——広がっていた。
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「田中。あの、光を……よく、見てみろ」
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「はい」
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「以前は……バラバラに、瞬いていた。だが……今は……どうだ」
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誠は——目を、凝らした。
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そして——気づいた。
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「並んでる……」
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無数の、光が——今や——不気味なほど——"整然と"——並んでいた。
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まるで——何者かが——一つ一つを——正確な、位置に——配置しているかのように。
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「あれは……自然の、ものでは、ない」
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アルフレートは——静かに、断言した。
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「星なら……あんな、風には……並ばん。あれは……"何者かの、意志"、によって……配置されている」
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誠は——ぞくり、とした。
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以前——自分が、感じた——"意志"、という、直感。
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それが——アルフレートの、口からも——語られた。
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「意志……。じゃあ……あの光は……"何か"、が……意図的に……」
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「そう、考えるのが……自然だろう」
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アルフレートは——じっと——空を、見つめた。
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「問題は……何のために……あんな、風に……並べているのか、だ」
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「並べる……理由……」
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誠も——考えた。
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無数の、光を——整然と、並べる。
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それは——まるで——何かの——"準備"、のように、見えた。
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「アルフレート様……なんだか……あの、並び方……」
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「どうした」
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「まるで……"何かを、始める"、ための……"陣形"、みたいに、見えませんか」
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アルフレートは——はっと——したように、誠を、見た。
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「陣形……。確かに……そう、見えなくもない」
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「あれが……もし……"攻撃の、準備"、だとしたら……」
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二人の、間に——重い、沈黙が——流れた。
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「田中」
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「はい」
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「あの、"陣形"、が……完成した、時……」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「おそらく……"それ"、が……始まる」
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誠は——龍族の、長老の、言葉を——思い出した。
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「"あれが、満ちた時……災いが、始まる"……」
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「長老たちが、言ってた、"満ちる"、って……あの、陣形の、完成のこと、なのかもしれない」
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アルフレートは——深く——頷いた。
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「だとすれば……もう……時間は、ない」
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「あの、陣形は……見る間に……完成に、近づいている」
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誠は——北の空を——見上げた。
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整然と、並ぶ——無数の、光。
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その、"陣形"、が——今——刻一刻と——完成へと——向かっていた。
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「アルフレート様。急いで……皆に、伝えないと。もう……"その時"、が……すぐそこまで、来てるって」
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「ああ。準備を……急ごう」
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二人は——最後に、もう一度——北の空を——見上げた。
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そして——静かに——丘を、後にした。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日、丘で、アルフレート様と、北の空を、観察した。あの、光の点……以前は、バラバラだったのに、今は……不気味なほど、整然と、並んでる。アルフレート様は、"あれは、自然のものじゃない。何者かの、意志で、配置されている"、って。僕には……あの並び方が、まるで、"何かを始めるための、陣形"、みたいに、見えた。もし……あれが、"攻撃の準備"、だとしたら……。龍族の長老が言ってた、"満ちた時、災いが始まる"、って……あの、陣形の、完成のことかもしれない。そして……それは、見る間に、近づいてる。じいちゃん……もう、時間が、ない。急いで、皆に、伝えて……備えないと」
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窓の外——二つの月と——北の空に、整然と、並びゆく——無数の、光。
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まだこの時の誠は知らない。あの、"陣形"、が——何のために——組まれているのかを。
そして——それが——完成する日が——もう——目前に、迫っていることも——今はまだ、知る由もなかった。




