第126話「誰も、教えてくれない」
一色への、返事を——待つ、日々。
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その間も——誠は——皆と、繋がろうと——動き続けていた。
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だが——一つ——もどかしいことが、あった。
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誰も——"核心"、を——教えてくれないのだ。
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「藤原さん、龍族の、長老たちは……あの光が、何なのか……本当に、教えてくれないの?」
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手紙で、尋ねても——藤原の、返事は——同じだった。
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「うちも、何度も、聞いたんや。でも……"お前は、まだ、知らんでええ"、の、一点張りでな。ほんまに、教えてくれへん」
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皆瀬に、聞いても——同じ。
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「田中くん……ごめんね。私たちも……"鏡"、が、何なのか……本当に、分からないの」
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末広は——まだ——忍者の里から、戻らない。
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グランデルも——"予感"、で、鍛えているだけで——核心は、知らない。
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「みんな……何かを、感じてる。備えてる。でも……"それが、何なのか"、は……誰も、はっきりとは、知らない」
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誠は——考え込んだ。
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「知ってそうなのは……神様と……一色さんだけ」
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「でも……神様は、"立場"、があって、教えられない。一色さんは……返事を、くれない」
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もどかしさが——募った。
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何かが——来る。それは——確かだ。
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だが——それが——"何"、なのか。どう、"備えれば"、いいのか。
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肝心なことが——何一つ——分からない。
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「田中さん、また、難しい顔してますよ」
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エリナが——心配そうに、声を、かけた。
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「うん……。皆、何かを、感じてるのに……誰も、"正体"、を、知らないんだ。それが……もどかしくて」
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「でも……田中さん」
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エリナは——静かに、言った。
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「"正体"、が、分からなくても……田中さんは、もう……たくさんのことを、してるじゃないですか」
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「え?」
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「皆と、繋がって……一人一人の、力を、知って……いざという時に、備えて」
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エリナは——優しく、微笑んだ。
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「"何が来るか"、分からなくても……"皆で、立ち向かう"、準備は……ちゃんと、できてます」
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誠は——はっと、した。
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「そう……だね」
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考えてみれば——確かに——そうだった。
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敵の、正体は——分からない。
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だが——誠は——龍族と、鬼族と、スライム族と、虫人族と、傭兵団と……多くの、仲間たちと——繋がっていた。
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そして——皆——「何か、来たら、力を、貸す」、と——約束してくれていた。
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「正体が、分からなくても……できることは、ある、か」
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誠は——少し——気持ちが、軽くなった。
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「ありがとう、エリナさん。なんだか……焦って、ばかりだったな」
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その日の、夕方。
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アルフレートが——店に、やってきた。
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「アルフレート様。ちょうど、良かった。少し、相談が」
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誠は——アルフレートに——今の、もどかしさを、話した。
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アルフレートは——静かに、聞いていた。
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「田中。俺も……"あの光"、が、何なのかは……知らん」
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「アルフレート様も、ですか」
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「ああ。俺の、ステータスの、警告も……相変わらず、"上空"、"接近"、としか、読めん」
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アルフレートは——続けた。
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「だが……田中。一つ、確かなことが、ある」
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「なんですか」
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「敵の、正体を、知らずとも……戦える、備えは……できる」
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「備え……」
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「そうだ。お前が、繋いだ、仲間たち。それぞれの、力。それを……いつでも、"一つに、できる"、ようにしておく」
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アルフレートは——静かに、続けた。
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「敵が、何であろうと……皆が、一丸となれる、体制が、あれば……対応できる」
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誠は——深く、頷いた。
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「そう、ですね。敵の、正体を、待つより……こっちの、"繋がり"、を……強くしておこう」
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「それでいい」
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アルフレートは——静かに、微笑んだ。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「もどかしい。皆、何かを、感じてるのに……誰も、その"正体"を、知らない。知ってそうなのは、神様と、一色さんだけ。でも、神様は、立場があって、教えられない。一色さんは、返事をくれない。焦ってた僕に、エリナさんが、言ってくれた。"正体が分からなくても、皆で立ち向かう準備は、できてる"、って。アルフレート様も、"敵の正体を待つより、こっちの繋がりを、強くしておけ"、って。そうだ。僕にできるのは……皆を、繋いで、いつでも一つになれるように、しておくこと。じいちゃん……敵が、何であっても……皆で、一緒なら……きっと、大丈夫だ」
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窓の外——二つの月と——北の空の、増えゆく、光。
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まだこの時の誠は知らない。彼が、"敵の正体を、待たずに、繋がりを強くする"、と、決めた、その、選択こそが——後に——この、世界を、救う、決定的な、差に、なることを。
そして——彼が、待ち望む、一色からの、返事が——もう、間もなく——届くことも——今はまだ、知る由もなかった。




