表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
予兆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
127/447

第125話「一色の、深夜の政務」

——ここは、ガルディア帝国の、帝都。深夜の、宮殿。



皇帝・一色美奈子は——執務室で——一人、書類に、向かっていた。



だが——その、内容は——通常の、政務では、なかった。




机の上には——大量の——"レールガンの、設計図"、と——"配置図"、が——広げられていた。




「射程が……まだ、足りない」




一色は——設計図を、睨みながら——呟いた。




「あの、光が……本当に、"上"、から、来るなら……もっと、遠くまで……高く……届かせないと……」





彼女の、机の、傍らには——一枚の——古びた、手紙が、置かれていた。




田中誠から、届いた——あの、手紙だった。





「もし、一色さんが、何か、知っているなら……教えて、もらえませんか。僕、ちゃんと……受け止めますから」




一色は——その、一節を——じっと、見つめた。




「田中くん……」





返事は——まだ——書けずにいた。




いや——書けなかった、のだ。





「私が……知っていること、全部……書いたら……」




一色は——ため息を、ついた。




「田中くんは……きっと……とんでもない、覚悟を……背負うことに、なる」





一色は——誰よりも——早くから——"あの光"、の、存在に——気づいていた。




彼女の、開発した——レールガンの、観測技術が——北の空の、異変を——他の、誰よりも、精密に——捉えていたのだ。




そして——それが——尋常でない、脅威で、あることも。





「私に、できるのは……せめて……皆が、戦える、"武器"、を……用意しておくこと」




一色は——再び——設計図に、向かった。





彼女が——今——最も、恐れているのは。




自分の、作った、レールガンが——"あの光"、に——届かないかもしれない、という、こと、だった。




「射程……威力……数……。全部……足りないかもしれない」




一色は——唇を——噛んだ。




「でも……やるしか、ない。私が……この帝国の、力の、全てを、注いで……できる限りの、備えを……」






その時——ふと——聞き慣れた、声が、響いた。




「精が、出るなあ、皇帝はん」




「……神様」




一色は——顔を、上げた。




「また、麻雀ですか。今日は……本当に、それどころじゃ、ないんですけど」



「いや……今日は、麻雀は、ええわ」




神は——静かに、そう、言った。





「あんた……無理、しとらんか」



「無理……?」



「一人で……何もかも、背負い込んで……」




一色は——ふっと——自嘲気味に、笑った。




「それが……皇帝の、務めですから」




「私が……この、帝国を……いえ、この、世界を……守らないと……」





神は——しばらく——一色を、見つめた。




「皇帝はん。一つ、聞くけどな」



「なんですか」




「あんた……なんで……田中はんに……返事を、書かへんのや」





一色の、手が——止まった。




「……それは」




「気遣うとるんやろ。あいつを……怖がらせたく、ない、って」




一色は——静かに——頷いた。




「田中くんは……戦う力の、ない、優しい、人です。あんな、恐ろしい、真実を……知らせたく、なくて」





「そうか」




神は——静かに、続けた。




「でもな、皇帝はん。あんた……一つ、勘違いを、しとるで」



「勘違い?」




「田中はんは……あんたが、思うとるより……ずっと、"強い"、で」





一色は——はっと、した。




「あいつは……戦う力は、ない。でも……それを、補って、余りある……もっと、大きな、"力"、を、持っとる」




神は——静かに、続けた。




「あんたが……一人で、抱え込んどる、その、重荷……いっそ……あいつに……"繋がって"、みたら、どうや」





「繋がって……」




一色は——その、言葉を——繰り返した。




「あんたは……"一人で、守らな、あかん"、思うとる。でも……ほんまは……そうやない」




神は——優しく、そう、言った。




「田中はんと……皆と……繋がれば……あんたは……もう、一人やないんや」





一色は——手元の——田中の、手紙を——見つめた。




「一人じゃ……ない……」





「まあ……あとは……あんたの、決めることや」




神は——そう言い残すと——静かに——気配を、消していった。





一人、残された、一色は——長い間——田中の、手紙を——見つめていた。




そして——ゆっくりと——ペンを、取った。




「田中くん……」




一色は——静かに——返事を、書き始めた。





その夜——一色は——初めて——自分が、知っていること、全てを——誰かに、打ち明ける、決意を——固めたのだった。






——一方、その頃。村の、誠は。




その夜も——祖父のノートを、開いていた。




「一色さんからの、返事……まだ、来ないな」




誠は——少し——心配していた。




「でも……きっと……一色さんも……色々、考えてくれてるんだろうな」





その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「一色さんからの、返事が、まだ、来ない。忙しいのかな。それとも……やっぱり、僕を、気遣って、迷ってるのかな。北の空の、光は、今夜も、瞬いてる。少しずつ、増えてる、気がする。神様は、"繋がりが、お前の、一番の力"、だって、言った。だから……僕は、これからも、皆と、繋がっていこうと思う。一色さんとも……ちゃんと、繋がりたい。じいちゃん……早く、一色さんの、返事が、来るといいな」



窓の外——二つの月と——北の空の、増えゆく、光。



まだこの時の誠は知らない。今、まさに——遠く、離れた、帝都で——一色が——彼への、返事を——書き始めていることを。


そして——その、返事が——彼を——ついに——避けられない、"真実"、の、入り口へと——導くことになることも——今はまだ、知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ