第123話「グランデルの、鍛錬」
赤い月の、夜が、明けた——翌朝。
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決意した、通り——誠は——皆に、呼びかけるため——まず、鬼族の里へと、向かうことにした。
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グランデルの、里は——最近——手紙で、"鍛錬に、励んでいる"、と、聞いていた。
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その、様子も——気に、かかっていた。
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深い、森の、奥——鬼族の里。
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誠が、たどり着くと——そこには——驚くべき、光景が、広がっていた。
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「これは……」
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かつては——羽虫のように、小さかった——妖精たち。
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それが——今や——一体一体が——屈強な、筋肉を、纏った——巨躯の、"鬼"、へと——変貌していた。
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そして——その、鬼たちが——巨大な、岩を、担ぎ上げ——投げ、運び——ひたすら——鍛錬に、励んでいた。
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「よう、田中! 来たか!」
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その、中心で——ひときわ、大きな、グランデルが——豪快に、手を、振った。
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「グランデルさん……皆さん、すごい、ことに……」
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「わははは! どうや、ワシらの、鍛錬の、成果は!」
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グランデルは——誇らしげに——巨大な、岩を——軽々と、持ち上げてみせた。
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「なあ、田中。前に、手紙で、書いたやろ。里の、言い伝えが、気になって……鍛錬を、始めた、って」
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「はい」
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「あれから、皆で……ずっと、続けとってな。おかげで……この、たくましさや」
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誠は——鬼族たちの、鍛錬を——見渡した。
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重い、岩を、担ぐ。運ぶ。持ち上げる。
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その、光景を、見て——誠は——ふと——ある、考えが——浮かんだ。
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「グランデルさん……」
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「ん?」
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「もし……何か、"重いもの"、を……遠くまで、運ばなきゃ、いけない、ことが、あったら……鬼族の、皆さんの、力が……役に、立ちますね」
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グランデルは——きょとん、とした。
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「重いもん、を、運ぶ? まあ……ワシらの、得意技では、あるけどな」
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「なんで、そんなこと、聞くんや」
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「いえ……なんとなく」
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誠は——曖昧に——そう、答えた。
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まだ——自分でも——はっきりとは——分からなかった。
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だが——なぜか——鬼族の、"運ぶ力"、が——いつか——役に、立つような——そんな、予感が、した。
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誠は——グランデルに——最近の、出来事を——話した。
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赤い、月。北の空の、光。皆が、感じている、予兆。そして——皆で、備えよう、という、決意。
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グランデルは——真剣な、顔で——聞いていた。
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「……そうか。やっぱり……何か、来るんやな」
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「グランデルさんも……そう、感じてたんですか」
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「ああ。ワシらが、鍛錬を、始めたんも……その、"予感"、があったからや」
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グランデルは——静かに、頷いた。
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「意味は、分からん。でも……この、力が……いつか、田中や、皆の、役に、立つ、気が、してな」
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「グランデルさん……」
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「田中」
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グランデルは——誠の、肩に——大きな、手を、置いた。
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「もし……何か、来た時は……ワシら、鬼族……総出で、駆けつけたる」
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「この、鍛えた、力……全部……お前らのために、使うたる」
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誠は——胸が——熱くなった。
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「ありがとう、ございます、グランデルさん」
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「なあに、水臭いこと、言うな。ワシらは……"仲間"、やろ」
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グランデルは——豪快に、笑った。
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鬼族の里を、後にする、誠は——考えていた。
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鬼族の、"運ぶ力"。
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それが——なぜ——こんなに——心に、引っかかるのだろう。
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(重いものを……遠くへ……運ぶ)
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(何を……どこへ……?)
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答えは——まだ——見えなかった。
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だが——誠は——確信していた。
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皆の、持っている、力。龍の、翼。鬼の、腕。虫の、群れ。スライムの……"鏡"。
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それらが——いつか——一つに、繋がる、時が——来る。
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そんな、予感が——胸に——芽生えていた。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日、鬼族の里に、行った。皆、すっかり、たくましく、なっていて、驚いた。重い岩を、担いで、運んで……ひたすら、鍛錬してた。それを見て、僕は、ふと、思った。もし、何か、"重いもの"、を、遠くへ運ぶことが、あったら……鬼族の力が、役に立つ、って。なんで、そう思ったのか、自分でも、分からない。でも……皆の、持ってる、力が……いつか、一つに、繋がる、気がするんだ。龍の翼、鬼の腕、虫の群れ、スライムの"鏡"……。グランデルさんも、"何か来たら、総出で駆けつける"、って。じいちゃん……皆の力を、繋げられたら……すごいこと、できる気が、するんだ」
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窓の外——二つの月が——今夜は——いつも通りの、白さで——静かに、輝いていた。
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まだこの時の誠は知らない。彼が、感じ始めた、"皆の力を、繋げる"、という、予感が——やがて——この、世界を、救う、"作戦"、そのものに、なっていくことを。
そして——鬼族の、"運ぶ力"、が——その、作戦の、中で——欠かせない、役割を、担うことも——今はまだ、知る由もなかった。




