第120話「宮田の、地図」
森川を、訪ねた——数日後。
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誠は——鉱物の、専門家である、同級生——宮田を、訪ねた。
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宮田は——各地の、鉱山を、巡り——地質や、鉱脈を、調べる——地道な、仕事を、続けていた。
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「よう、田中。久しぶりだな」
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宮田は——山積みの、資料に、埋もれながら——顔を、上げた。
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「宮田、忙しそうだね」
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「まあな。各地の、鉱脈の、地図を……まとめてるところだ」
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誠は——最近の、出来事と——桜庭の、仮説を——宮田に、話した。
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宮田は——腕を、組んで——じっと、聞いていた。
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「……なるほどな」
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宮田は——ふと——机の上の、地図を、見た。
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「実はな、田中。俺も……最近、妙なことに、気づいてたんだ」
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「妙なこと?」
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宮田は——一枚の、大きな、地図を——広げた。
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そこには——各地の、鉱山や、鉱脈が——細かく、記されていた。
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「この、地図を、見てくれ」
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宮田は——北の、地域を——指し示した。
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「最近……北の、鉱山で……妙な、"揺れ"、が……記録されてるんだ」
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「揺れ……地震?」
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「いや、地震とは、違う」
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宮田は——首を、振った。
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「地震なら……地の底から、揺れる。だが……この、揺れは……」
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宮田は——地図を、じっと、見つめた。
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「まるで……"上"、から……何かが、地面を、叩いてるみたいな……そんな、揺れ方なんだ」
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誠の、胸が——ざわり、と、した。
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「上から……」
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「ああ。しかも……その、揺れが、記録され始めた、時期が……」
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宮田は——別の、記録を——取り出した。
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「北の、山が、光った、っていう、噂の、時期と……ぴったり、重なるんだ」
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誠は——息を、呑んだ。
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北の、光。上から、地面を、叩くような、揺れ。
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やはり——それらは——繋がっていた。
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「宮田……それって……」
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「ああ。俺にも……何が、起きてるのかは……分からん」
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宮田は——難しい、顔で、続けた。
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「だが……北の、大地で……何か、"異常なこと"、が……起きているのは……確かだ」
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「それも……"空から"、な」
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宮田は——地図を——誠に、見せた。
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「この、揺れが……記録された、場所を……線で、結ぶと……」
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北の、大地に——いくつもの、点が——散らばっている。
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「まるで……何かが……北の、あちこちに……落ちてきてる、みたいなんだ」
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「落ちてきてる……」
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誠は——その、地図を——じっと、見つめた。
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「宮田。この、地図……借りても、いいかな」
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「ああ、構わんぞ。写しなら、いくらでも、ある」
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「ありがとう。皆と……共有しておきたいんだ。何が、起きても、いいように」
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宮田は——少し——感心したように、頷いた。
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「お前……変わったな、田中」
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「え?」
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「前は……もっと、こう……一人で、抱え込む、タイプだった。でも、今は……"皆と、共有する"、って……自然に、言えてる」
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誠は——照れくさそうに——頭を、掻いた。
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「最近……そういうのが……大事だって、気づいたんだ」
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「一人じゃ……できないことも……皆と、繋がれば……できるかもしれない、って」
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宮田は——静かに、微笑んだ。
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「いいな、それ。……俺も、そう思うよ」
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「じゃあ、宮田。もし……何か、来た時は……お前の、鉱物の、知識も……力を、貸してくれ」
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「もちろんだ。任せとけ」
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宮田のもとを、後にする、誠は——手に——北の、地図を、握りしめていた。
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北の、大地に、散らばる——"何かが、落ちてきた"、跡。
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「本当に……何かが……空から……」
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誠は——北の、空を——見上げた。
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もう——それが——ただの、気のせいや、噂では、ないことを——確信していた。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日、宮田に、会ってきた。宮田も、妙なことに、気づいてた。北の、鉱山で……"上から、地面を、叩くような"、揺れが、記録されてるって。しかも、北の山が、光った時期と、ぴったり重なる。揺れの、あった場所を、線で結ぶと……まるで、何かが、北の、あちこちに、落ちてきてるみたいだ、って。もう……間違いない。何かが……空から、北の大地に……落ちてきてる。それが、何なのかは、まだ、分からない。でも……宮田も、"力を貸す"、って言ってくれた。皆で、地図を、共有して、備えよう。じいちゃん……僕は、もう、目を、逸らさない」
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窓の外、二つの月が——静かに、輝いていた。
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まだこの時の誠は知らない。北の、大地に、落ちてきた、その、"何か"、が——一体、何であるのかを。
そして——それが——やがて——空を、覆い尽くす、脅威の——最初の、"一部"、に、過ぎないことも——今はまだ、知る由もなかった。




