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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
予兆

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第112話「末広の、帰らぬ日」

皆瀬のもとを、訪ねてから——数日。



誠は——今度は——末広に、会いたいと、思っていた。



各地を、渡り歩く、末広なら——北の、光のことも、帝国の、動きのことも——何か、知っているかもしれない。



それに——あの、飄々とした、落語家と、話せば——少しは、気が、晴れるかもしれない。





「そういえば……末広さん、最近、村に、来てないな」




末広は——いつもなら——ふらり、と、村に、立ち寄っては——新作の、噺を、聞かせていく。




だが——ここ、しばらく——その、姿を、見ていなかった。





「エリナさん。末広さん、最近、来ましたっけ」



「いえ……そういえば、しばらく、お見かけしませんね」




「どこかで、興行、してるのかな」





誠は——末広が、よく、立ち寄る——近隣の、町を——訪ねてみることにした。





町の、寄席の、主人に——尋ねてみると。




「ああ、駄々丸師匠なら……しばらく、前に、来ましたよ」



「本当ですか。今、どこに?」




主人は——首を、傾げた。




「それが……妙でしてね」



「妙?」




「いつもなら……何日か、逗留して、たっぷり、噺を、聞かせてくれるんですがね」




主人は——続けた。




「あの時は……一席だけ、やると……そそくさと、"急ぎの、用が、できた"、って……どこかへ、行っちまいましてね」




「急ぎの、用……」





「なんだか……いつもの、飄々とした、様子と、違って……妙に、思い詰めた、顔を、してましたよ」




主人は——そう、言った。




「"どこへ行くんです"、って、聞いても……"ちょっと、里の方へ、な"、とだけ」




「里……」





誠は——考え込んだ。




末広の、"里"、といえば——忍者の、里。




かつて——末広が——諜報に、疲れて、抜けた、あの、場所。




「なんで……忍者の里に……」






町からの、帰り道。




誠は——ずっと——考え続けていた。




末広が——思い詰めた、顔で——急ぎの用で——忍者の里へ、向かった。




「もしかして……末広さんも……何か、知ってるのか」





そういえば——と——誠は——思い出した。




以前——妖精族の里で、別れる時。末広は——妙に、真剣な、顔で——こう、言った。




「何かあったら……ワシが、飛んでくるさかい。安心せぇ」




あの、言葉の、意味を——あの時は——深く、考えなかった。




だが——今——思い返すと。




(末広さんも……何か、来ることを……知ってたのかもしれない)






村に、戻った、誠は——エリナに——町での、ことを、話した。




「末広さん……思い詰めた、顔で……忍者の里に、行ったらしいんだ」



「忍者の里に……。何か、あったんでしょうか」




「分からない。でも……」




誠は——静かに、続けた。




「なんだか……皆が……それぞれの、"里"、や、"場所"、で……何かのために、動き始めてる、気がするんだ」





龍族は——里で、備えている。




スライム族は——伝承が、ざわついている。




帝国は——レールガンを、空に、向けている。




そして——末広は——思い詰めた、顔で——忍者の里へ。




「僕の、周りの、みんなが……僕の、知らないところで……何かに、備えてる」





「田中さん……」




エリナは——心配そうに——誠を、見た。




「僕だけが……取り残されてる、みたいだ」




誠は——少し——寂しそうに、そう、呟いた。




「でも……それも……皆が、僕を、気遣ってくれてる、からなんだろうな」






その夜——誠は——一色からの、返事を——まだ、待っていた。




だが——手紙は——なかなか、届かなかった。




「一色さんも……返事を、どう、書こうか……迷ってるのかな」





窓の外——二つの月が——輝いている。




その、北の、空を——誠は——じっと、見つめた。





その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「末広さんを、探しに、町まで、行った。でも……末広さんは、思い詰めた、顔で……忍者の里に、行ってしまったらしい。"急ぎの用"、だと。皆……それぞれの、場所で、何かに、備え始めてる。龍族も、スライム族も、帝国も、末広さんも。僕の、周りの、みんなが……僕の、知らないところで、動いてる。なんだか……僕だけ、取り残されてる、みたいで……少し、寂しい。でも……それも、みんなの、優しさなんだろうな。一色さんからの、返事は……まだ、来ない。じいちゃん……早く、何かが、分かるといいんだけど」



窓の外、二つの月が——静かに、輝いていた。



まだこの時の誠は知らない。末広が——なぜ、忍者の里へ、急いだのかを。


そして——その、忍者の里で——今——古い、言い伝えと、末広の、もたらした、"何か"、を巡って——静かに、事態が、動き始めていることも——今はまだ、知る由もなかった。

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