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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
落ちてた落語家

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第100話「それぞれの帰路」

村への、帰路の、途中でのことだった。



「田中、ちょっと、ええか」



末広が、少し、改まった様子で、そう、切り出した。



「どうしたんですか」



「ワシ、ちょっと、寄りたいところが、あってな。ここらで、一旦、別れさせてもらうわ」




「寄りたいところ、ですか」




「せや。落語の、興行の、話が、あってな。次の、町で、ちょっと、顔、出しとかなあかんのや」




末広は、そう、説明した。もちろん——それは、表向きの、理由だった。





「そうですか。じゃあ、また、村にも、遊びに来てくださいね」




「おう、もちろんや。田中、ほんまに、世話に、なったな」




末広は、深く、頭を、下げた。




「色んな、種族に、紹介してもろて……ワシの、落語、ようやく、居場所が、できたわ。この恩は、忘れへんで」




「僕こそ、末広さんの、落語で、旅が、楽しくなりました」





「ほな、皆、達者でな」




末広は、竜崎、黒崎、桜庭にも、別れを、告げると——大きな、リュックを、背負い、一人、別の、道へと、去っていった。





「末広さん、行っちゃいましたね」




「面白い人だったな」




竜崎が、そう、呟いた。





こうして——残された、誠、竜崎、黒崎、桜庭の、四人は、大きな、リュックを、背負い、とぼとぼと、村への、道を、歩き続けた。




「あー、荷物、重い……」




「フッ……この、重さこそ、我が、闇の、修行……」




「黒崎くん、また、それ言ってる」




「早く、村に、着きたいな……」






——一方、末広は。




誠たちの、姿が、見えなくなった、瞬間——




すっ、と、その、大きな、リュックを、下ろした。




そして——リュックが、掻き消えた。




(忍者の、収納術……久しぶりに、使うたわ)




末広は——実は、忍者の、秘術で、荷物を、"どこか"、に、収納できる、術を、持っていた。しかし、旅の間は——正体を、隠すため、あえて、他の、皆と、同じように、大きな、リュックを、背負って、いたのだ。





「さて……身軽に、なったところで」




末広は、そう、呟くと——ふっ、と、姿を、掻き消した。




次の、瞬間には——彼の、姿は、険しい、山道の、遥か先に、あった。




忍者本来の、身のこなしで——木々の、間を、駆け抜け、岩壁を、跳躍し、常人では、通れないような、山道を、猛烈な、速度で、進んでいく。




(荷物が、なければ、こんなもんや)





数刻後——末広は、深い、山の、奥に、隠された、忍者の、里へと、たどり着いた。




「末広殿、お戻りで、ございましたか」




門番の、忍者が、そう、迎えた。



「頭領は、おられるか。至急、報告したいことが、ある」



「はっ、こちらへ」





末広は、里の、奥、頭領の、いる、館へと、通された。




「末広か。久しいな」




頭領——白髪の、老練な、忍者が、静かに、そう、告げた。



「お前の、"暗号落語"、風に、乗って、届いておったぞ」




「では、既に……」




「ああ。皇帝、レールガン、別世界、そして、神の、関与……重大な、内容だ」





頭領は、しばらく、末広を、見つめた後、続けた。




「末広。お前は、忍を、抜けて、落語家に、なったはず。なぜ、この、情報を、我らに」




「頭領」




末広は、静かに、答えた。



「ワシは、確かに、忍を、抜けました。せやけど……この、情報だけは、一人で、抱えきれる、ものやなかった」




「ほう」




「それに……ワシには、恩人が、おります。田中誠、いう、男です。この、情報が、いつか、あいつを、守る、力に、なるかもしれん。そう、思うたんです」





頭領は、しばらく、沈黙した後、静かに、頷いた。




「なるほどな。お前の、思い、しかと、受け取った」




「この、情報、どう、扱われますか」




「慎重に、扱う。皇帝の、動向、そして、その、神とやらの、正体……我らも、独自に、探りを、入れよう」





「頭領、一つ、お願いが、あります」




末広は、深く、頭を、下げた。



「もし、田中誠、あるいは、その、仲間たちに、危機が、迫った時は……どうか、力を、貸してやってください」




頭領は、少し、考えてから、答えた。



「お前が、そこまで、言う、男か。相分かった。その時が、来れば……我ら、忍の、一党、動こう」




「かたじけのう、ございます」





「して、末広。お前は、これから、どうする。里に、戻るか」




末広は、少し、笑って、首を、振った。



「いえ。ワシは、落語家です。これからも、各地を、回って、噺を、続けます」




「そうか」




「せやけど……頭領の、指示が、あれば、いつでも、"耳"、として、動きます。忍の、腕は、まだ、錆びついては、おりませんので」





頭領は、満足げに、頷いた。



「良かろう。ならば、しばし、待機せよ。次の、指示が、あるまで、な」



「はっ」




こうして、末広は——落語家として、各地を、巡りながら、忍者の、"耳"、としての、役目も、密かに、引き受けることになった。





——一方、誠たちは。




「ようやく、村が、見えてきたぞ!」




竜崎が、そう、声を、上げた。




「長かった……」




「フッ……我が、闇の、修行も、これにて、一段落だな」




「黒崎くん、荷物、重かっただけでしょ」





「田中さーん! おかえりなさーい!」




村の、入り口で、エリナが、手を、振って、出迎えた。




「エリナさん、ただいま帰りました」





その夜、誠は、久しぶりの、我が家で、祖父のノートに、こう書き加えた。


「長い旅から、ようやく、村に戻ってきた。末広さんは、途中で、落語の興行があると言って、別れた。竜崎、黒崎、桜庭と、大きなリュックを、背負って、なんとか、帰り着いた。色んな種族に、会えて、末広さんの、落語も、皆に、喜んでもらえて、いい旅だった。じいちゃん、こうして、無事に、帰ってこられたのが、一番だよ」



窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。



まだこの時の誠は知らない。末広が、忍者の、里で——"田中に、危機が、迫った時は、力を、貸してほしい"、と、頭領に、頼み込んでいたことを。


そして、その、備えが——いつか、来るべき、大きな、戦いにおいて——決定的な、意味を、持つことになることも——今はまだ、知る由もなかった。




【第一部・完】

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