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 手紙の内容をまとめると、元日には数えで十八を迎えるミドリへの縁談だった。


 お相手は、数えで二十歳になる青年。実家は愛媛の旧家で、父親は大阪で紡績工場を経営している。

 飛び級で帝国大学へ入学したインテリで、教授陣からの覚えもよろしく、末は博士になるだろう。

 藤村も東京で会ったことがあり、ガリ勉ではなく文武両道の紳士だと太鼓判を押している。

 ミドリの母にも同じ内容の手紙を出してあるので、近いうちに会うだけ会って欲しい。

 

「わたしがあんなことを言ったから、申し分ない相手を見つけてきたのね」


 ベッドサイドに腰かけ、ミドリは手紙をナイトテーブルに置き、同封されていた一葉の写真を見ていた。写真館で撮影したであろうお見合いショットには、詰襟を着た精悍な好青年が映っている。


「会った上で嫌なら断って構わないとは書いてあるけど、お断りする理由が見つからないわ。困っちゃったなぁ」


 そう呟くと、ミドリは写真を手紙の上に置いて立ち上がり、窓辺で重たいため息をついた。

 そして、しんしんと降る雪を見ながら、ミドリは、どうしたものかと悩みはじめた。


 と、そこへ、ギイッギイッと木が軋む音を立てながら、誰かが梯子を上ってきた。

 ミドリは、慌てて手紙を枕の下へ隠すと、降り口へと近寄った。


「えっ? お嬢様?」

「ミドリ。お父様が大変なの!」

「静かにしてください、お嬢様」

「あぁ、エリさんまで」


 梯子を上って姿を現したのは、シノを背負ったエリであった。

 上り切ったエリは、シノを屋根裏部屋に下ろし、ミドリに階下の状況を簡潔に説明した。


「思想犯を追っている特高が、藤村様に諜報容疑をかけてきたの。狙いは藤村様だけだけど、この姿のお嬢様を見たら、話が余計にこじれるだろうから、わたしが良いと言うまで、ここで預かっててちょうだい」

「わかりました」

「それでは、あとは任せます」


 それだけ言うと、エリは、スタスタと梯子を下りていった。


「お父様は、何も悪いことをしてないわよね?」

「もちろんです。きっと、何かの誤解でしょう」


 ミドリは、心配で怯えるシノの華奢な身体を正面から抱きしめ、あやすように、シノの小さな背中をトントンと軽く叩いた。


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