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翌朝は、珍しく三人揃って寝坊した。
そのため、午前中いっぱいは、三人ともバタバタと朝の準備に追われ、午後に入ってからも、来客への対応に大忙しとなった。
そして、冬の太陽は、あっという間に山の向こうへと姿を隠し、子供が寝る時間も過ぎている。
「お嬢様を寝かしつけてきました」
「ご苦労様。そこにディナーの残りで賄いを作ってあげたから、食べたら、あなたも早く寝なさい」
「はい。いただきます」
ミドリは、エリが指差す先に、ザルを逆さにして被せてある料理が置いてあるのに気付き、隅に置いてある丸イスをそのテーブルの近くへ持って行き、そこへ座り、ザルをどけて食べ始める。
そこへ、今度はアオイがやってきた。
「秋の田の、かりほの庵の、苫をあらみ」
「わが衣手は、露にぬれつつ。いま、藤村様たちは何をなさってるの?」
「今のが、重大ヒントだったのに。西洋カルタだよ。ルールは、よく分かんなかったけど、盛り上がってるよ」
「麻雀や骨董にはまって身上を潰すよりマシかもしれないけど、程々にしてほしいわ。おかげで、睡眠不足になる」
エリは「これだから、高等遊民は!」とでも言いそうな勢いで、苛立たしげに言った。
アオイは、からかいたい半分、宥めたい半分で、いつもの漫談を始める。
「どうどう。ふたりは、夜の小腹を満たす軽食をご所望ざんす。レタスと鯨肉ベーコンのサンドイッチに、マスタード倍増の当たりを用意するも良し、片方の湯呑にだけ、ものすご~く苦く煎じたお茶を淹れるも良し。痛い目に遭わせたいなら、大口を開けて寝てる隙に、マントルピースと親知らずを絹糸で結び合わせまして、翌朝早々に火ばさみで真っ赤に燃える炭を顔に近付けるという手もござんすぞ?」
「くだらない悪戯を考えさせたら、右に出る者が居ないわね」
「さいざんしょ? お褒めに預かり、光栄でござんす」
「皮肉に決まってるでしょう。あんまり怒らせると、喉笛を噛み千切るわよ」
「ごちそうさま。――今夜が満月でなくて良かったですね、アオイさん」
食べ終わったミドリが、食器を持って立ち上がり、そのまま洗い桶に浸けながら口を挟む。
すると、アオイは口元に片手を当てながら欠伸をする。
「ファ~。本当だよ。危うく、辞世の句を詠む羽目になるところだった。僕も、もう寝ていい?」
「聞こえてたのね。あなたは駄目よ。温室へ行って、クレソンか何か摘んできてちょうだい」
「クレソンの旬は、春だって。野沢菜か小松菜を持ってくるよ」
そう言って、アオイは眠い目をこすりつつ、温室へ向かった。
そのあと、少しあいだを空けてから、ミドリもエリに挨拶をし、廊下へと向かった。




