表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異形のお嬢様と新米メイド  作者: 若松ユウ
■アオイ篇
PR
28/60

025

「雑談するために温室を使うなら、鍵を取り上げてもらいますよ?」

「悪かったって。そう、カリカリするなよ。――ゴホッゴホッ」


 重たい円筒形の本体からホースとノズルが伸びている形の電気掃除機を持ち運びながら、屋敷じゅうの絨毯のゴミを吸い取ったあと、ふたりは水場へ移動し、本体に内蔵されている漏斗型の布フィルターを外して埃を捨て、水洗いしている。


「だいたい、僕が鍵を持ってなかったら、誰も温室に入れないじゃないか。それに、何だかんだ言っても、仕事はこなしてるだろう?」

「まぁ、そうね。雑だけど、要領は悪くないわ」

「褒めるんなら、口角を上げてほしいなぁ。無理矢理言わせてるみたいじゃないか」

「その通りよ。ご名答」


 文句を言うアオイを、エリは適当にあしらい、話題を変える。


「今日は、わりに良い卵と牛肉が手に入ったから、すき焼きかライスカレーにでもしようと思うんだけど」

「オッ、良いね! ハイカラじゃないか。ここのところ野菜中心だったから、育ち盛りに悪いなぁと思ってたんだ。体力がつけば、人化の術の習得も早まる」

「そうだと良いんだけど」

「でも、欲を言えばカルシュームも摂りたいなぁ。すぐにイライラする、誰かさんのためにも」

「悪いけど、牛乳は無いのよ。海から遠いから、新鮮な魚介類も手に入りにくいし」

「高地だからな。その代わり、空気は美味しいし、水は澄み切ってる。夏は、涼しく快適」

「冬は寒くて凍えるし、雪で閉じ込められるし、雪下ろしが大変だけどね」

「二つ良いことは無いものだな。――こんなもので、良いか」

 

 会話を区切ると、アオイはフィルターを盥から出して掲げ、陽に透かせる。そして、それを石造りの水場の縁に置くと、盥を傾け、黒々と汚れた水を捨てる。

 

「二つ良いことは無いものね。要領が良くて、くだらない悪戯をしないなら、手が掛からないんだけど」


 そう言って、エリも盥の水を捨て、縁に置いたフィルターをピンチで洗濯紐に留める。


「あっ、ついでにコレもお願い」

「自分でやりなさいよ、もぅ」


 アオイがフィルターとピンチを差し出すと、エリは苦言を呈しつつ、受け取って同じように洗濯紐に留める。


「石炭を食べる鉄の馬。汽笛一声、新橋を~」

「しようのないことを言わないで。あとは、あれを倉庫に戻しといてちょうだいね。わたしは、お嬢様とミドリさんの様子を見てくるから」

「待ってよ、エリちゃん。か弱い僕に、ひとりで、あれを倉庫まで持ってけって言うの?」


 水場のそばの石畳の上に置いてある二台の掃除機を指差し、アオイは不満の声を上げる。


「働かざる者、食うべからずよ。少しは、そのゴボウみたいな腕を鍛えなさい」

「そんな~」


 格言を持ち出し、エリは有無を言わさぬ調子で話をまとめ、エプロンの端で両手の水滴を拭き取りつつ、その場をあとにした。


「よいしょ、っとっとっと、うわっ、重たい。これは、一台ずつじゃないと無理だな」


 アオイは、両手で二台同時に持ち上げようとしたが、すぐに石畳に上に下ろし、にわかに額に汗を噴き出しつつ、一台を両手で持って運び始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ