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「ねぇ、ミドリちゃん。僕のこと、何歳くらいだと思ってる?」
アオイは、ニコニコと無邪気な笑みを浮かべつつ、自分の方を指差してミドリに訊ねる。
「そうねぇ。二十歳そこそこじゃないかしら?」
「フフッ。やっぱり、そう見えるんだ」
「違うんですか? 三十? 四十?」
ミドリが大台を口にすると、アオイは、全然違うという風に首を横に振り、正解を答える。
「これでも、ミドリちゃんより、十倍は歳を取ってます」
「ええっ! そんなおじいさんには、とても見えないわ」
予想を上回る答えに、ミドリが驚いて目を丸くすると、アオイは、愛想半分に軽く笑ってから、少し沈んだ口調で言う。
「そこが、エルフの特徴でもあり、僕の悩みの種でもあるんだけどさ。エルフって、人間と比べると、ものすごーく長生きなんだ。だから、僕たちエルフ側から見れば、人間は、あっという間に年老いてしまう儚い生き物に見えるし……」
「逆に人間側から見れば、エルフは全然老けることのない、凄い生き物に見えるのね?」
「そういうこと。ただ、ミドリちゃんは、普通の人たちと違って、僕にしてもお嬢様にしても平気で受け止められるから良いんだけど」
アオイは、そこで一旦区切り、視線をミドリの顔から、自分の顔が映っているティーカップの液面へと落とす。
「残念ながら、ごくごく平凡な人間は、変った生き物に出合ったとき、理解しようと努力するよりも、気味悪がることの方が自然なんだ。だから、ここに来るまで、僕は数ヶ月から数年おきに、誰も知らない土地へと住まいを転々としてたんだ」
「そう……」
愁いを帯びたアオイの様子を見て、ミドリも沈痛な面持ちをする。が、アオイは、すぐに気持ちを切り替え、いつもの陽気さを取り戻す。
「でも、放浪してる時に、運良く先代の旦那様に拾われてね。生まれたばかりだった藤村様の面倒を見る代わりに、ここに住んで良いって言われたんだ。この鍵を貰ったのも、その時だよ」
アオイが、首元に片手を入れてチェーンを引き出しながら言うと、ミドリは、ホッと安堵した。
「居場所が見つかって良かったですね」
「うん。住む場所があるって、素晴らしいことだよ。安心安全、安穏安泰さ。――もう一杯、いかが?」
ミドリのカップが空になったのに気付き、アオイは自分のグッと紅茶を飲み干してカップを空にし、ポットを持ち上げて訊ねた。
「いただきます」
そう言いながら、ミドリはソーサーを持ち、自分のカップをアオイのカップに近付ける。アオイは、軽くポットを揺らして残量を確かめると、再び二つのカップに均等になるように淹れ始めた。
ふたりは、そのあと、エリが走って呼びに来るまで、優雅に談笑を続けた。




