声
「お嬢様、遅くなりましたが
お誕生日おめでとうございます」
屋根裏部屋へと訪ねてきたお父様の従僕の
レンがへにゃりと笑い、小さな小包を
手渡してきた。
その笑みがレンらしい優しさに溢れていて
思わず笑顔になった。
毎回、わたくしの誕生日を
祝ってくれるのはレンくらいだ。
「ありがとう、レン」
小包を開けると、
蝶を模った銀色のブローチが輝いていた。
「まぁ……」
『はじめて旦那様がお嬢様にと
お選びになったブローチ、
喜んでくださっているみたいで何よりだ』
「えっ??」
咄嗟に顔を上げるとレンがん?と首を傾げる。
「お父様がお選びに……?」
「え!? 僕、口に出してましたか?
……旦那様には秘密にしておくように
言われたのに、僕としたことが!」
その言葉に、目を見開く。
「ほ、本当にお父様が
このブローチを贈ってくださったの??」
わたくしの言葉に、レンは虚をつかれたように
瞳を揺らがせ、優しく頷いた。
「……ええ。旦那様がお嬢様のことを
想って自らお選びに」
「……そんな。まさか。
だ、だってお父様は1度も……」
「お嬢様……」
これは夢なんじゃないかしら。
頬をつねってもジンジンと痛むだけ。
「旦那様はお嬢様を愛したいと
仰っていましたよ」
「……え……?」
『旦那様は誰よりも奥様を想っていた。
だからこそ、憎しみが薄れてもなお
ソレイユお嬢様に近づけなかったんだ』
違和感にレンの口元を凝視する。
レンの唇は一切動いていない。
瞬きをしても同じだ。
なのに、レンとそっくりな声。
これは一体……?
辺りを見回してもわたくしと
レン以外に人はいない。
「お嬢様?」
「い、いえ、何でもないわ。
……お父様に、ありがとうと
伝えなくてはね」
そう言葉にしたら、あたたかいものが
胸に溢れて、泣いてしまいそうだった。




