第二十話:神域の共鳴と、深淵の戦艦
神々に認められた天導家と、それに応えるべく全力を出す天界の神々。
神殿のドックでは、かつてない規模のプロジェクトが進行していた。
「いいか、職人神ども! 軟弱な造りは許さんぞ!」
ポセイドンが咆哮し、自身の三叉槍から生み出した聖なる水を、戦艦の装甲を鍛えるための冷却水として提供している。
「ゼルの重力を動力源とし、私の潮流で次元の隙間を滑る。これこそが、邪神の領域へ至る唯一の脚、次元軍船『アーク』だ!」
一方、神殿の奥義の間では、アテナがリアとジン、そしてスイに「神格化」へ至るための深層意識の調整を行っていた。
「あなたたちの力は、今のままでも十分に神に匹敵します。ですが、邪神の王が座す深淵では、既存の理が通用しません。己のDNAに眠る『原初の記憶』を解放する準備を整えておきなさい」
準備が進む中、ゼルと色葉は、戦艦の甲板となる予定の場所で夜空を見上げていた。
「……ねえ、ゼル。神様たちが、あんなに一生懸命手伝ってくれるなんて、不思議だね」
色葉が、少し照れくさそうに笑う。
「……ああ。あいつらも、守りたいもののために必死なんだろうよ。……神様ってのは退屈な連中だと思ってたが、意外と熱いところもあるみたいだな」
ゼルは自分の手を見つめる。神格化を使わずとも、仲間や神々の想いを受け取るたびに、『感情の終着点』が熱を帯び、出力が上がっていくのを感じていた。
「……色葉。俺は、お前とみんなを必ず連れて帰る。邪神の王だろうが何だろうが、俺たちの居場所を邪魔する奴は、全員この手で叩き潰す」
「……うん。私も、私の幻獣たちも、ずっとゼルの隣にいるよ」
その平穏を切り裂くように、天界の空に巨大な「口」のような亀裂が開いた。
そこから溢れ出したのは、これまでの先兵とは格の違う、どす黒いプレッシャー。
「……ククク。神々と馴れ合うか、理外の王よ。反吐が出る」
現れたのは、邪神の王の側近、「虚無の奏者・オルフェ」。
彼が持つ「絶望の竪琴」が奏でる音色は、聞く者の精神を腐食させ、周囲の美しい景色を地獄のような光景へと塗り替えていく。
「……チッ、挨拶もなしに土足で上がり込みやがって。……アルテミス、みんなを呼べ!」
ゼルが刀の柄に手をかける。
「はい、ゼル様! ……準備はできています!」
アルテミスの招集に応じ、スイ、ジン、リアが即座に武器を構え、ゼルの左右に並び立った。
「行くぞ、お前ら! 船が完成する前に、この掃除を終わらせるぞ!!」
ゼルの足元から**『黒き雪の舞う日にて』**が広がり、オルフェが奏でる絶望の旋律を、空間ごと重力でねじ伏せにかかる。
邪神との本格的な攻防戦の幕開けである。




