第五十一話 例外なし例外あり
「……まだ全容はわかりませんが」
AIは、いっとき置いてさらにつづけた。
「日本列島だけでなく、東南アジアの一部、台湾、上海などの中国沿岸部、オーストラリア、朝鮮半島にまで被害が拡大している模様ですから、その媒介物はローカルなものではなく、ほぼ人類共通のものでなくてはなりません。ここが大事なところです」
「人類共通のもの」
「例外なく、その地域にいた者たちが即死してしまうような、何かです。いいですか? 調べたところでは、各国からの大使館、領事館、観光客まで被害に遭っているのです。その意味を考えてください」
AIはそこで一拍置いた。
「そうなんだ……」
知らなかったとアンジュは首を振った。
「魔国関係者も?」
「はい」
いくら魔国でも、同胞を巻き込むだろうか?
ヨーラシア魔国の仕業と断定したものの、にわかに自信がなくなってきた。
何かするつもりなら、あらかじめ魔国関係者だけでもひそかに避難勧告とかするはずだ。
それは成されていない。
だからまだ先だと、奇襲を予感しながらもその準備をしていた。
ところが、そうではなく、大使はもちろん商用で来ている者、観光客まで犠牲になっているという。
犯人は魔国ではないのか?
*
——そのとき。
刀を背負ったままにしているアンジュの全身がふらっと揺れた。
「……来た!」
おれにもその感触が伝わってくる。
獣の匂いだ。
妖気みたいな、イヤな感じ。
「みんなを退避させて! できるだけ下の階に」
かすみさんに告げる。
「どうしたんですか?」
抱き上げたサヤカを渡す。
「階下に逃げて、早く」
アンジュはおもむろに暗い空を見上げた。
何か大きなものが、次々に暗い空から舞い降りて来た。




