第四十九話 BAN
AIにもわからないこと。
しかし霊濃度が増してきたのか、
おれにはなんとなく予感みたいなものが働くようになってきたのだった。
実体化が近づいてきたのかもしれない。
「これはおそらく化学の問題だ」とおれは微かながらも目星をつけはじめていた。
*
アンジュは明らかにイラついている。
あれだけ苦労して採取したサンプルと破壊された脳の様子を、プライバシーとかなんとか甘いことを言っていた学生たちの反対を押し切ってネットにアップしたところ、即BANされてしまったのだ。アップした情報もろともすべてのSNSから削除された。
「それが、変なんですよねえ」
BANとは「アカウント停止」を意味するネットスラング。
拡散希望でアップした映像もすべて消去されているという。
「だって、壊滅状態にある日本はともかく、SNSとかの本社はすべて西界州アメリコのテック企業が営んでいるはずだから無傷なわけでしょ?」
「たぶん」
「どういうこと?」
アンジュにもBANされた見当がつかない。
むしろそれを広めて拡散し原因究明につとめなければならない立場のはずだ。同盟国として、その企業として。
(残酷すぎるから?)
実習中の動画アップはもちろん向こうの世界でもご法度だろうけれど、これはそうではないのだ。原因を突き止めるためにアップしたし、コメントにもそう念を押してツイートに付記しているという。
こういう状態に心当たりがある人は教えてほしい。
被害者を解剖したらこんな感じになっていたのだ。
こんなのありえない。
どうやったらこうなるのか、
それは何が原因なのか、
教えを乞うものだったはずだ。
なのに———。
拒否された?
拒否されただけではなく削除されてしまった。
すべてのSNSの媒体から。
まるで、大虐殺などなかったかのように。
そういうものには詳しいはずの佐山と内田の二人組も首をひねっている。
「モザイクしたら意味ねえしなあ」と佐山。
「王国終わろうってのに、何やってんだか」と内田。
たぶん、内容があまりにもグロいから、変態扱いされたのかもしれないとロン毛の内田が言い添えてくる。おまけにそれをアップした佐山のアカウントは即座に強制停止。
「もう無茶苦茶ですよ」
ツーブロック揺らして佐山がアプリを開き、通知タブを見せてくれたことで事実だとわかった。
赤バッジ付きベルアイコン。
確かにBAN通知されていた。
いったいどういうことなのか?




