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第四十八話 埋葬

 傍観者であるはずのおれまで怒りが湧《わ》いてきて抑えられなかった。


 そんなものを魔術の道具に使ったのかよ。


「どのような魔術にも、下準備というものが必要です。いきなり手を開いて詠唱《えいしょう》すれば可能だというものではありません。魔術も、物理化学の現象のひとつなんです」

 AIはそう断言する。


(全パラレルワールドのどの部分か知らねえけど、こんなこと許せるはずがないのだ)

(赤ちゃんまで殺すなんて)

(ラブリーやセイ、コウタ、イジメられるために生まれてきたような子たち、虐待《ぎゃくたい》されることだけしか知らなかった子たちばかりだった。幸福なんてどこにもなかった。そんな子たちが、一所懸命、幸《しあわ》せになろうとして、リハビリしていたのに———)


 もうそれ以上考えられなかった。


            *


 せめてあの子たちだけでもと、アンジュたちは病院の裏庭に穴を掘った。

 ひどい二日酔いだというかすみさんも、もうボロ泣きだった。

 冬の土は固い。

 すでに亡くなって二日近く経っている。

 蘇生《そせい》する見込みはなかった。


 大半《たいはん》の、亡くなっている大人たちには申しわけなかったけど、アンジュは子供を優先した。産婦人科の赤ちゃん、小児科で入院していた子供たち、そして閉鎖ユニットや開放の子たち。


 リネンは大量にあったからそれで彼らを丁寧《ていねい》に包んだ。

 ひとりひとりシーツと清潔な白いタオルでくるんだ。


 受験生の明日香や学生たちも手伝ってくれて、裏庭に運んで埋葬《まいそう》した。


 それまでまったく無気力だったサヤカも、アンジュが土で汚れた手で涙を拭《ふ》きながらそれをやっているのを眺《なが》めて、何かを感じたのかもしれない。

 幼《おさな》いなりに土をすくい手伝ってくれた。

 マスコもそうだった。


 そうして時間をかけて子供たちをひとりひとり、きちんと名前を読み上げて、一緒に土の中に戻した。


「……忘れません」

 アンジュが代表して、それぞれの形で祈りを捧げた。

「決して、あなたたちのことは忘れません。必ず、必ず……、この報《むく》いは……、受けさせます……」


 全員で誓った。

 必ず果たすと。


            *


 あとは涙で言葉にならなかった。


 サヤカも初めて涙を浮かべた。

 涙だったと思う。

 下を向いて微かに震えていた。

 おれもだらしなく泣いていたし(背後霊に涙なんかねえけども)、自分の感情に溺《おぼ》れてはっきりしない。とにかく悔《くや》しくて、どうしようもなくて、みんな泣いた。


 泣くしかなかった。


 ラブリーはマイペースな子で、男性医師とか介護師《かいごし》にすぐにすり寄って厄介《やっかい》をかけたのだが、なぜかサヤカの世話だけはしてくれた。あのウサギの着ぐるみのまま、なにくれとなくサヤカに話しかけ、面倒《めんどう》を見ていた。そしてサヤカもラブリーを介して次第にマスコやコウタや、あのセイとまで時折一緒にプレイルームで遊ぶようになっていた。

 その矢先の出来事だったのだ。


 ラブリーに土をかけた。

 コウタ、セイ、ラブリー。

 子供たち。赤ん坊たち。

 一緒にみんなを埋めた。


「……さよなら」と言った。


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