第三十五話 旅路
旅路って曲、大好きだった。
牧場が借金とかいうものであんなになっちまって両親が死に、中学を卒業する前に千葉の叔父さんのとこに居候することになった。あっちの姉とはそのときに別れた。
まさかそれが最後になるとは思わなかった。
とにかくおれはあの頃、なんとか自立することだけを考えていて、帯広だったら自衛隊もありだったけど、千葉の叔父さんと叔母さんは、これからは年寄りがどんどん多くなるから、介護か看護だとおれに勧めた。
年寄りの世話なんて嫌だったから、看護を選んだ。
それだけのことだった。
高校に通う代わりの三年制看護学校。
そこを卒業してから指定の病院で準看護師として働くと、正式に看護資格をもらえる。
だから通学しながらひそかにバイトもした。
ブラックバイトもあった。
毎日が苦しかったけど、なんとかそういうバイトをしつづけながら、ようやく買ったアンドロイドの安いやつで無料の曲聴いてて、、。
(偶然な、耳にしちまったわけ)
そしたらなんか泣けて泣けて、
もうぼろぼろになっちまって……、
それが旅路だった。
『お元気ですかぁ? この町は相変わらず青春です♪』
向こうの姉がバイト先のスキー場でコロナに罹って死んじまったのもその頃だった。
別れ別れになる直前に、帯広のマックで二人して冷めたコーヒー飲んだのが最後だった。
「じゃあね、ズシくん」
さよならもせず、振り返りもせず、でも背筋を固くして、姉は去って行った。
「じゃあね」
おれは向こうの姉の安寿に、ほんとの別れを告げた。
(これから、こっちでやってくことにしたよ、姉さん)
さよなら
旅路って曲、大好きだったよ。




