第二話 全滅?
(……何、これ?)
おれはビビっていた。
ビビるどころの騒ぎじゃなかった。
泣き伏してしまったかすみさんの様子を見て、あのときおれは不意に、これはこの内科病棟だけではないかもと気づいたのだ。
眠ったまま死んでる、、、
マジクソヤバすぎる。
(担当部署!)
体が勝手に動いていた。
跳ね上がるように体だけが動いて身をひるがえす。
意識がついていけない。
担当の五階に再び走って戻った。
階段を駆け上がる。
あれほど強く頭を打ったのに血ひとつ落ちていない。
全然痛みがない。
いったいどういうことなのか。
「……マジで? つまり、いっせいに心臓が止まっちゃった、っていうこと?」
穴からおそるおそる顔を出した小動物のような両眼を見開いて担当の倉田ままが訊いてくる。なんとなく、いつもの倉田ママっぽくない。上から目線ではないのだ。
混乱しているからだろうか。
それもどうやら、、、
伝わってくる混乱ぶりから四階や五階だけでなく救急も含めて全館そうらしいのだ。
「シゾク棟も駄目です!」
どこからかそういう叫びに近い声がイヤフォンで伝わってくる。
シゾク、棟?
死族。
死属。
とにかくこの病院全体が異次元に突入したみたいに全滅してしまっているという報告がイヤフォンを通じて相次いでいる。
すべての病棟が?
全滅?
(……そんな)
「眠っていたはずの人たちが誰も起きてこないのよお!」
心停止してしまっている。
内蔵ドバドバでもなく、手足がもぎ取られているわけでもなく、もちろん首もちょん切られていないのに……、それなのに……、患者さんだけでなく、宿直スタッフでそのとき仮眠していた者たちまで。
「ひとり残らず」
眠っていた人間が全員が、
「起きて来ない」
眼を覚ましてくれない。
呼吸も止まっている。
心臓も動かない。
息もしていない。
寝ないで起きていたサヤカとマスコだけがキョトンとしてそこにいた。
でも他の子供たちは起きて来ない。
いくら揺さぶっても、声がけしても、眼を開けてくれない。
開放ユニット夜勤担当の者たちの叫ぶ声が聞こえ、担当のベテラン波多野さんまでが、頭を抱えたままうずくまって、どうしていいかわからないとムンクになって声を上げていた。
みんな死んじゃってると。
「誰も起きてこないのよお!!」
その叫びがすべてを表していた。




